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アルファ碁ゼロの快挙について
2017/10/29 ブログ 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

こんにちは、CTO長谷川です。私は2015年の頭から、2016年には囲碁のプロ棋士を凌駕する人工知能ができることを予測していたこともあり、何度か頼まれてアルファ碁について講演したことがあります。そういう背景もあって、アルファ碁についてはそれなりに読み込んでいたのですが、今回のアルファ碁ゼロの発表には驚きました。何と言ってもスピード感がすごいです。2016年にアルファ碁を発表して、今年の頭にはマスターをネットに忍び込ませ、先月末にゼロを発表するスピード感。今回のゼロは何がすごいかというと、李セドルに打ち勝った当初のアルファ碁よりも強いという点に加えて、学習をさせるための教師データが一切ないピュアな強化学習だという点です。

●強化学習について

強化学習は、今回のアルファ碁の開発リーダーであるDavid Silver氏は「意思決定の科学」というふうに表現しています。従来のマネジメントなどで考える意思決定の科学と違う点は、人間の行動心理などを排除して、本当に数学的に意思決定を捉えた考え方であることです。強化学習は、世界を以下の5つのピースに分けて考えます。

1. Agent: 世界の中で活動する主体。ゲームのプレーヤーなど
2. Environment: Agentに対して働きかける環境
3. State: 今の世界のあり方
4. Action: Agentが出来る行動
5. Reward: 行動をした結果Agentが得る報酬

この5つを正しくモデリングして、強化学習のアルゴリズムを適用することにより、どんなに複雑な意思決定でもエージェントに学ばせることが出来るというのが強化学習です。車やロケットの運転から、ゲームの操作、広告の選択などかなり幅広く応用されています。

強化学習は機械学習の中でも、直感的に親しみやすい分野です。例えば弊社の技術顧問の杉山先生が「ラーメン屋さん問題」と名付けている問題があります。これは、例えば地方から引っ越してきて、広い東京の中で、自分が長期的には一番美味しいラーメン屋さんにたどり着きながらも、そこにたどり着く過程でまずいラーメン屋さんをなるべく避けて行くためのアルゴリズムを考えようというものです。あと、前提として、自分はとにかくラーメンについては他人とは全く別の味覚を持っているので、他人の評判やネットなどは一切頼りにならないという前提があります。最初はとにかく手探りなので、行き当たりばったりのラーメン屋さんに行くしかないですよね。そこから徐々に行きつけを見つけては冒険して行く、という感じではないでしょうか。強化学習には、epsilon decayという、これと似たような概念があります。

●アルファ碁ゼロとアルファ碁リーの違い

まず、直接対決100戦全勝という圧倒的な強さの違いがあります。なんと学習を開始してから数日で李セドル氏に勝利したアルファ碁の強さを抜いたようです。

Silver et al., “Mastering the game of Go without human knowledge”より抜粋

次に、全く教師データがないという違いがあります。David Silvers氏がインタビューでも言っていますが、李セドルに勝ったアルファ碁は、プロ棋士の対局を何万局と読み込ませることによって、「プロがどう考えるか」をまず学習しました。先生がついているようなものです。対してゼロは、全く先生がいない状況で、言葉の通りゼロから囲碁の定石などを学習しました。なぜこのようなことが可能になるかというと、教師がいないため、自分と戦う過程において、ゼロは自分という、実力においてレベルが非常に似通った相手が必ずいるためです。その実力が伯仲している相手と切磋琢磨することにより、少しづつ確実に強くなっていくという仕組みです。ゼロの学習の軌跡を見るともっと面白くて、まず人間が何百年もかけて編み出してきた定石を学び、そしてその定石を壊して新しい定石を生み出すということが見て取れるらしいです。

私もDQNなどの手法を用いて強化学習のモデルを開発した経験がありますが、ボタンを押してあとは放っておくという感じでは決してありません。DQNの例でいうと、ミニバッチのサイズやネットワークのアーキテクチャ、さらには報酬のエンジニアリングなども考えることが必要であるため、まだまだ「全く人間の介在を必要としない」と言い切れるレベルではないと思いますが、今回のアルファ碁ゼロは、DeepMind社が目指す、「tabula rasa(白紙の状態から勝手に知識を身につけるAI)」に一歩近づいたことは間違い無いと思います。

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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