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ビジネスインサイダー寄稿記事「リクルート“内定辞退予測問題”をシリコンバレー目線で考える」掲載

2019/08/29 メディア掲載実績, ビジネスインサイダー 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

リクルート「内定辞退率問題」が問う、企業のAI倫理とは

リクルートの内定辞退率データ公開は就活生にどのような影響を与えるのか
撮影:今村拓馬

こんにちは。パロアルトインサイトCEO・AIビジネスデザイナーの石角友愛です。

今回はリクルートキャリア(以下リクルート)が企業に売っていた内定辞退率データに関して何が問題なのか、シリコンバレーを拠点にAI開発をしている立場の視点から書きたいと思います。

今回のリクナビ内定辞退率データ販売問題は、以下のステップで行われていたと報じられています。

1. 過去の内定辞退者のデータを企業が委託契約という形でリクルートに共有する
2. その辞退者のリクナビ上での過去の行動履歴データをリクルートがAI解析。どのような行動パターン(例:内定をもらった後も別の企業ページを見ていたかどうか、応募したかどうか等)や属性が内定辞退をした者に見受けられるかを解析。
3. 今年の選考者リストを企業側から受け取り、2. のステップで抽出した属性やウェブ上での行動パターンに似ている行動を取っている人物を選定
4. 企業側に5段階予測値という形で、選考者の「内定辞退率」を販売

という流れになると考えられます。リクルートに発注をしていた企業は現時点で38社ということで、企業とリクルートの間には委託契約がなされていたということです。

法的には、個人情報保護法第23条にあるように、本人の同意を得ないで情報を第三者に提供することを禁止しており、今回リクルートは8000人以上の学生から同意を得ないでデータを委託元の企業に提供していたとされます。

しかし、今回のケースは法律違反そのものより、もっと大きな次元での問題を露呈したと私は考えています。

何が「問題」なのか?

問題はリクルートに内定辞退率を伝えた企業に
出典:リクナビ公式サイトより

リクルートに委託発注をした企業側が、そもそも過去の内定辞退者の個人情報をリクルートに共有していたことが問題の発端です。

就職活動で応募をした人の個人的な属性情報と、内定を辞退したという事実をリクルートに渡していなければ、リクルート側が過去の内定辞退者に基づき辞退者とそうでない人の「特徴量の抽出」をすることは難しいためです。

一方、企業側は社内で抱えるデータサイエンティストがいたと仮定して、そのデータサイエンティストに過去の内定辞退者の情報を渡して解析し、今後の採用に使ったとしたら、問題になるでしょうか? または、企業側が(リクナビを運営しているリクルートではなく)独立したAI会社に委託していた場合、問題になるでしょうか?

「倫理的なAI」を求める潮流が広がる

今AI運用に求められるのは倫理観
撮影:今村拓馬

シリコンバレーには、ある示唆的な実例があります。

Project Mavenという米国防総省とのAI開発プロジェクトに関連して、「自分たちが開発したAIが、ドローン等の武器に使われる可能性がある」ことに反対した3000名以上のグーグル社員が署名活動を行い、結果的にプロジェクトが中止になったのです。

・技術的に可能だとしても、倫理的に考えて開発をすべきなのか?
・自分たちが開発したAIがそのあと、誰にどのような意思決定のツールとして使われるのか?
・社会における影響はあるのか?

—— その議論を、AI開発をする者が主体的に行わなければいけない時代に突入しています。

相手が委託先でも雇用主でも本質的には問題は変わりなく、「依頼内容通りにAIを開発した」では(少なくともシリコンバレーでは)済まされないムードがあります。

重要なのは、このような声をあげることができるのは、開発者としての強い立場にいる人間だからです。

グーグル社員は、自分たちがグーグルにとって何より大事なアセット(人的資産)であることを自覚しています。だからこそ、署名活動をし、会社を動かしていけるのです。

IT企業の経営者は、今やこのようなビジネスのジレンマに挟まれながら、複雑な経営判断をしていかなければならなくなりました。これはグーグルだけではなく、ストが起こっているアマゾン、マイクロソフト、セールスフォースなどにも言えることです。

独占的に収集できる行動データを持つ企業リスク

ケンブリッジ・アナリティカ問題で議会に登壇するFacebookCEOマーク・ザッカーバーグ氏
REUTERS/Leah Millis

また、リクナビが就活市場で非常に強い立場にいたことも、大きなポイントだと感じます。

リクナビは日本の就活生の大半が登録しているという、いわば就活市場のモノポリー(独占)です。

市場を独占するものには、ネットワーク効果が働き(登録する就活生が増えれば増えるほど採用広告を出す企業も増え、その逆もある)大量のデータが集まります。

他の会社が持たない大量のデータを「行動予測」に変えて企業に販売、商品化していた行為は、Facebookやグーグルのターゲティング広告やネットフリックスやアマゾンの商品レコメンドと技術的には変わりません。

Facebookでは独占的立場で収集できるデータを第三者に開示していたことが、アメリカでは大問題になりました(注:いわゆるケンブリッジ・アナリティカ問題で、ネットフリックスでは告発ドキュメントまで作られた)。今もFacebookへの批判は止まっていません。

ケンブリッジ・アナリティカをめぐる内部告発を扱ったドキュメント「グレートハック:SNS史上最悪のスキャンダル」。
出典:ネットフリックス

捜査が始まり、FacebookはFTC(連邦取引委員会)へ50億ドルの和解金を払うことで合意しました。2019年8月にはOff-Facebook Activityという「ユーザーから収集したデータとユーザーのアカウントを切り離す広告技術」を発表。ターゲティングの精度が下がることによる売上減少を覚悟してでも、ユーザーのプライバシーを守ることを優先事項におきました。

また、ユーザーデータを収集するために、Facebook Researchというものを立ち上げ、ユーザーに毎月20ドルほどの報酬を払う代わりにスマホ上のその他のアプリのデータを下さい、というプロジェクトもありました(13才以上を対象にしていたため問題視され現在中止、現在は18才以上を対象にしている)。

賛否両論あるものの、料金を払うことで初めて、ユーザーに自分たちの行動ログデータの商品価値が伝わったと言われています。そこまでして手に入れたいユーザーの行動ログデータ。今、アメリカの消費者は、自分のログデータがどんな金銭的価値に転換され、自分や社会にどんな影響があるのかを理解しつつあります。市場を独占するプラットフォーマーには公平性と透明性がより強く求められるべきという動きがあります。

果たして、予測精度は「問題がある」水準だったのか?

問題の争点はAIの精度にもある。
shutterstock
https://www.paloaltoinsight.com/membership-checkout/?level=4
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パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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