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11月7日発売 文芸誌「群像」12月号「AIと自然愚鈍性」随筆 掲載

2019/11/08 お知らせ, メディア掲載実績 
by 関口 

11月7日発売の文芸誌「群像」12月号に「AIと自然愚鈍性」という随筆が掲載されました。
編集部の方にお声がけいただきまして、行動経済学の基礎を作った二人のユダヤ人心理学者の話とAIを絡めて執筆致しました。
人とAIが協業する社会を目指して。

 

 

 

 

 

 

アメリカ西海岸に拠点を持ち、AI(Artificial Intelligence)を日本企業に向けて開発し、導入を提案する会社であるパロアルトインサイトを始めて2年が過ぎようとしている。AIの会社を経営しているというと、「コンピューターに詳しいんですね」と言われることがしばしあるが、実は、それ以上に人に詳しくなることが大事なのではないかと思っている。

ロサンゼルスの大学で心理学を学んでいた時に、ある2人のイスラエル人心理学者の研究に衝撃を受けた。AIを開発する会社を経営している今、あの時学んだことが、一つになって、点と点が線になっていると感じるのである。

認知心理学で世界的に著名なスタンフォード大の故エイモス・トベルスキー教授は、同じイスラエル出身の心理学者であり、ノーベル経済学賞を2002年に受賞したプリンストン大のダニエル・カーネマン教授と、人間の意思決定がいかに非合理性に満ちているかに関して長年研究を行ってきたことで知られる。1970~80年代の経済理論は人間の行動が合理性に基づいているという前提で成り立つものが多かった中で、科学的、体系的に人間の意思決定は非合理性に満ちていることを証明し、その後の行動経済学の基礎を作ったと言われている。

AIについてどう思うか聞かれたとき、エイモス・トベルスキー教授が人間の持つ非合理性に関してユーモアを交えて「私は自然愚鈍性(Natural Stupidity)を研究しているんだ」と返答したらしい。人工の対義語が自然、知能や知性の対義語が愚鈍だ。この二つはコインの裏と表だな、と感じる。

昨年、「いまこそ知りたいAIビジネス」(ディスカヴァートウェンティワン刊)という本を上梓し多くの日本の中小企業経営者やAI時代に自分がどう向き合うべきかを迷う方に読んでいただいた。その反応を基にシリコンバレーと日本でのAIのあり方を比較しながら、最近よく、AIと自然愚鈍性の対比や人間らしさ、それゆえの面白さについて考える。

例えば、必ず10万円必ずもらえるのか、50%の確率で25万円もらえるのか2択を迫られたら、殆どの人が前者を選ぶだろう。数学的には、後者の期待値は12万5千円だと分かっていても今確実にもらえる10万円を選ぶのがリスク回避をしたがる人間の非合理性であり、自然な愚鈍性なのだ。この2択における正解はどちらだろうか。何回チャンスが与えられるのかなど細かい条件設定があるものの、最終的に意思決定をするのは自分自身だ。

そんなとき、大局的かつ統計的視点で示唆を与えてくれるもの、人間の弱みでもある認知バイアスを補填してくれるツールが本来の統計学的手法に基づくAIだ。今確実な10万円よりも、50%の確率で25万円の方がいいですよ、そういう意見を聞いた上であればより多角的な視点で判断できるし、人間が持つバイアスを回避できるだろう。

今私たちがやっているプロジェクトの一つに、PRなどの露出効果の可視化というものがある。手当たり次第に色々なPR戦略を打ってきた会社が、それぞれのキャンペーンの効果を知りたいときに、様々な口コミデータなどを網羅することで定性的、定量的に効果を可視化、自動化できるものだ。これにより、現場の人はより戦略的で創造的な作業に時間を使うことができるようになる。

数学的アプローチをフルに活用して人間の意思決定の補佐役をするAIのニーズが高まっている反面、面白いことに、最近では数学的アプローチによるAIの「理論上の最適解」より、人間的感覚を学ばせたAIによる「現場の最適解」を求める会社も増えている。「この人とこの人が隣同士に並ぶと気が合うようで生産性が上がり、離職率も減る。そういう意味での人員配置の最適化をしたい」という類の依頼が増えているのだ。これはトベルスキー教授の言葉を借りるならば、自然愚鈍性に基づく「戦略的愚鈍型AI」とでも呼べるかもしれない。

パロアルトインサイトで開発したAIを導入した企業から、先日こんな依頼を受けた。
「石角さん、以前作ってもらったAIですが、現場でそれを毎日使っている人がこう言うんです。どうしたら僕が教えたことをAIがすぐ学ぶようになるんですか。例えば今日、ここはA→C→Dではなくて、正しいのはA→D→Cの順だと教えたら、すぐに学ぶのがAIじゃないんですか?」

膨大な量のデータを使い統計的処理を見えない部分でしているため、今日教えたことをすぐに学んで明日綺麗に吐き出せるようになるわけではないのがAIなのだが、やはり人間の心理としては、教えたことはすぐ反映されてほしい、そうでないと信用できないと思ってしまうのもよく理解できる。だから、現場の人の感覚値をどうやってAIの設計に生かすか考えて、改善を加えている最中だ。まさしく、人に寄り添ったAIであり、人とAIが協業し共存している風景がここにある。

私は、頭ごなしに「これがいい」とAIレコメンドを押しつけても、受け取った人間がそのレコメンド通りに必ずしも動かないことをAIの現場実装を通して学んできた。「人とは確率論的な宇宙に投げ込まれた決定論的な装置だ」とエイモス・トベルスキー教授は言ったが、その確率論的な宇宙であるこの社会と決定論的な装置である私たちの間を埋めて、キャタリスト的存在として役立つAIこそが、理想的なAIなのだと思う。

 

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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