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Pragmatic Programmers 20th Anniversary Edition-書評
2019/11/26 ブログ 
by 長谷川貴久 

Pragmatic Programmers 20th Anniversary Edition-書評

最初にPragmatic Programmersを読んだのは、15年ほど前だったと思います。当時の私はJavaを主に扱っていましたが、「なるほど、こんな考え方があるのか」と思う程度のものでした。次に読んだのは約5年前でしたが、様々なエンジニアリングの現場を経験してから読むと、知恵の宝庫のように感じました。最初に読んだ時は技術開発の経験が少なかったために、100%理解していなかった点や、共感できない点が多かったのですが、ある程度経験を積んでから読むと、眼から鱗な内容が次から次へと出てきます。

そんなPragmatic Programmersですが、20周年記念の本が出ると聞いた時は、内容を変えずに再リリースするだけかと思いましたが、本を開いてみると、20年前に発行されたものよりも良い本になっていました。

まず、登場するプログラムや具体例はより現代使われているものが登場します。例えばDSLを紹介するセクションでは20年前の原本はWindowsやメインフレームを対象としたプログラム例が出てきますが、今回の20周年記念ではRSpecなどのテスト用のフレームワークを紹介しています。RSpecといえば、20年前はTDDなんていう言葉は存在しませんでしたが、今はTDDなしにはテストのことを語れません。今回の20周年版はTDDについても言及しています。具体的には、TDDの奴隷になるな、というテーマで、TDDを提唱しすぎると、実際に自分が解こうとしている問題がなんなのかを見失う危険性があるとしています。その例として、TDDでSudokuを解こうとしたRon Jeffriesのブログと、純粋な問題解決としての観点からSudokuを解こうとしたPeter Norvigのブログを紹介していました。この二つのブログは読んでみて面白いと感じました。Jeffriesはプロセスを重視するあまり、一体どんな問題を解こうとしているのかという大局観を見失ってしまっている中、Norvigは淡々と問題を解き、さらに「難しいパズルを生成するにはどうすれば良いか」という応用問題まで説いていきます。

最近はCTOという立場上、プランニングに費やす時間と見積もり力が求められる場面に多く直面します。今回の20周年版では、PERTという米国海軍が使っている見積もりの手法が紹介されていて、参考になりました。見積もりが正確でない時の原因は、「分からないから数字を膨らませる」ということから起きることが多いため、不確実な現象や作業の工数を見積もる場合に「消極的」、「積極的」、「確率が高い」という3ケースを想定して、それをベースにプロジェクト全体の工数と時間を見積もるという方法です。著者たちは「アジャイル」なプロセスを提唱するので、このPERTも一つのやり方だが、やはり正確な見積もりにはならないとしています。「どれくらい時間がかかるか」という質問に対しての正解はただ一つ、「I’ll get back to you」(検討してお返事します)らしいです。(笑)これは20年前から変わっていません。

最後に、ソフトウェア開発という職業について、こういう言葉で結んでいます。「We start with a blank page, and we can create pretty much anything we can imagine. And the things we create can change the world」(我々は真っ白な画面から始めて、想像できる限りのものを創り出すことができる。そしてその創作物は世界を変えることができる。)

FacebookやUberなどのテクノロジー企業への風当たりが強くなっていて、ソフトウェア開発者としては複雑な心境の時代になりつつあります。でも、Dave ThomasやAndrew Huntのようなプログラミングにおける歴戦の古豪がそういうのであれば、「世界を良い方向に変えうるプログラム」を目指してキーを叩き続けようと思える良書でした。

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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