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欧州連合のデジタル政策案から捉えられる「監視資本主義」とは何か
2020/02/27 ブログ 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

欧州連合は、AI技術における米国と中国の支配に対抗するため、デジタル政策案を2月19日に発表した。この政策案を主導している欧州連合競争委員Margrethe Vestager氏は、AIを世界で最も有望なテクノロジーの一つであるとし、研究資金の援助支援を掲げ、地元の企業およびスタートアップが「単一市場」を通じてデータを簡単に取引できるようにしたいと考えている。マッキンゼーによる最新のデジタル調査によると欧州連合は深刻なデジタルギャップを抱えている。欧州連合のGDPはアメリカに匹敵し、中国の手前である一方、情報通信技術部門内でデジタル・AIを基盤とする分野がGDPに占める割合は、中国が約2.1%、アメリカが約3.3%であるのに対し、約1.7%に止まっているのが現場だ。昨年11月に欧州委員会代表に就任したUrsula von der Leyen氏が就任後直ちに、Vestager氏に対して100日間の期限つきでデジタル政策の提案を要求したことが、今回の発表に繋がった。

欧州連合のデジタル政策が注目されるもう一つの要因としてあげられるのは、企業によるAI利用に関する規制を欧州で初めて設ける点だ。具体的には、プライバシーの保護、技術機能に関する企業側の説明責任、顔認証技術の使用の拡散に対する規制などが挙げられている。Vestager氏はこの技術規制における欧州連合の確固とした姿勢は、米国で許可されている多くの農薬や化学物質を禁止する欧州連合の農業規制に匹敵すると述べている。これを受けて、FacebookのMark ZuckerbergやGoogleのSundar Pichaiがブリュッセルを訪問し、規制に対して欧州連合の議員に働きかける事態にまでなっている。

今後、AIの運用・普及が進む中、プライバシーを保護し、不正行為を厳格に防止するためのベースラインを必要とするヨーロッパの姿勢には賛成だ。しかし、AI技術の採用・開発の「促進」と欧州連合の市民を守る「規制」の間にはトレードオフが存在すると考えられることを考慮した時、デジタル政策案が大急ぎで起草された点、そして、AI規制が農業規制と比較されている点は不安要素であるように思う。AIの利用方法は一枚岩ではない。適用される分野によって導入方法も大きく異なることを考慮すると、臨機応変に対応できる政策でない限り、デジタルギャップの増大もしくはプライバシーの損失を最小限に抑えることは難しい。このAIに関するデジタル政策案は、欧州連合の社会経済の今後に関わる分岐点であるからこそ、慎重な姿勢が必要とされているのではないだろうか。

欧州連合が対峙しているのは米国・中国との単純な国家間競争ではない。個人の経験が、無料の資源として行動データに変換され、予測商品としてパッケージ化され、販売されてしまう社会構造そのものである。ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授のショシャナ・ズボフ氏は、これをSurveillance capitalism(監視資本主義)と定義している。実際に現在、プラットフォーマーとして存在しているGoogleやFacebookは、サービスに必要以上のデータを取得し、これを利用して算出した予測商品を広告主に販売することで繁栄した。ズボフ教授は監視資本主義を人為的な現象である捉え、公務員を含んだ民主的機関の資源を総動員して、政治の領域で対峙しなくてはならないとしている。この具体例として、今回取り上げたデジタル政策案や、欧州連合2016年に制定した「一般データ保護規則(GDPR)」が挙げられるが、このアプローチが監視資本主義に対する新たなパラダイムになるかは未だ不明だ。

日本は今後どのようなアプローチを取っていくのだろうか。東京大学空間情報科学研究センターの柴崎亮介教授はTEDxTokyoで「情報銀行」という解決法を提唱しており、政府もこれを積極的に検討している。情報銀行の業務は大きく分けて二つある。一つ目は、個人とのデータ活用に関する契約に基づいて情報を管理すること、二つ目は、個人の指定した条件に基づいて個人を代行し、妥当であると判断された第三者にデータを提供することである。欧州連合のように監視資本主義に対して政治的に対峙するというよりは、GAFAへの対抗手段として自ら日本版の公式プラットフォーマーを作るといったイメージだ。私の見解では、透明性においてGAFAとの差別化をしなければ、利用者にとってブラックボックス化した現場は依然として変わらないのではないかと思う。GAFA以上の透明度で、情報銀行の情報管理体制、第三者を妥当であると判断する基準、個人データが提供される条件、情報提供がもたらす還元内容が利用者に共有されない限り、使いたいとは思わない。利用者が自らのデータの利用方法を能動的に意思決定することのできる仕組みを作ることが成功の鍵になってくる。

個人データを搾取されない形で管理する方法を各国が模索する中、確立された解決策は未だ存在しない。今後日本がどのようなアプローチを取るにしても、国民の間で利便性を得るためにプライバシーを諦めることが慣習化されてしまっていたら、情報を保持するプラットフォーマーが取り替えられるだけである。自分のデータが利用されていることを一人一人が認識し、自ら管理する意思を持つことが何よりも必要とされているのではないだろうか。

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

※石角友愛の著書一覧

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