米大統領選も勝敗の見通しがつき、少しずつ前に向かって進み出している。大統領選の投票日は、大統領や副大統領を選ぶだけではなく、州内の有権者が提案した条例案に関しても住民投票が行われる。
例えば、カリフォルニア州では「プロポジション22(提案22号)」、略してProp.22についての住民投票が行われた。配車アプリのウーバーやリフト、宅配アプリのウーバーイーツやドアダッシュに代表される「ギグエコノミー」で働く労働者「ギグワーカー」の権利に関する重要な条例案であり、過半数を取るかどうか注目されていた。
ウーバーなどのドライバーは、従業員とはみなされず、独立業務請負人の扱いである。従業員か独立業務請負人かの区分に関する条件は明示されており、例えば、作業内容に関して発注側が細かい指定をする場合などは従業員とみなされる。
一般的に、従業員に対しては企業が健康保険料や雇用保険料などを負担する義務があり、従業員は最低賃金や有給休暇などの基本的な労働保護が受けられる。こうした会社負担や労働保護は独立業務請負人には当てはまらないため、当然、独立業務請負人としてギグワーカーを抱える企業側のコストは圧倒的に安くなる。
このギグワーカーの区分に関して長年論争が起きており、ウーバーなどのドライバーを従業員として扱うべきだという意見が多く出ていた。カリフォルニア州は今年1月、ウーバーなどがドライバーを従業員として扱うよう定めた州法を施行した。
この州法の修正を求めて提案された条例案がProp.22である。ウーバーやリフトなどのギグエコノミー企業により強く支持されたものであり、ギグワーカーを従業員とみなさない代わりに、最低限の労働保護や健康保険を約束した。
最低限といっても、賃金は実際にサービスを提供している時間内の支払いに限られ、将来、修正案を通す際のハードルも高く設定するなど、全体的に企業側に有利な内容になっている。
Prop.22を通すためにギグエコノミー企業は2億ドル(約210億円)以上のマーケティング活動を行い、CMやビルボード(屋外広告板)、アプリ内で「Prop.22に賛成してください」というメッセージを徹底して流した。
この結果、今回の住民投票で58%の賛成票を勝ち取り、ギグワーカーが従業員とみなされることは現実的ではなくなった。
労働法を数社のギグエコノミー企業が変えることができる前例を作ったこと、労働者を従業員ではなく独立業務請負人と区分できる前例を作ったことなどに関して、一部の専門家から懸念の声が出ている。しかし今後は、カリフォルニア州以外の州や連邦政府に対してもアプローチが強まるだろう。
この選挙結果が意味することは複合的だが、まず、一つの会社に縛られない新しい働き方を求めている人が潜在的に多いのではないかということ。実際にマッキンゼーの調査結果によると、ギグワーカーの7割が好んでギグワークを選んでいるとのことだ。
そして、ギグエコノミーが当たり前になりつつある世の中で、労働者の立場を守りながらも、社会の変化に合わせた法律を作る必要があることを考えさせられた。
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
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