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東京電力のダイバーシティ – 日経クロストレンド連載第8回

2022/01/05 メディア掲載実績, 日経クロストレンド 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

東京電力が挑むダイバーシティの今 昔は産休でキャリアがゼロに– 日経クロストレンド ダイバージェンス時代のDX戦略 第8回

 

ポストコロナを迎える今、各業界をリードするイノベーターたちはDX(デジタルトランスフォーメーション)をどう考えているのか。人工知能(AI)開発と実装を現場で見ているAIビジネスデザイナーの石角友愛氏がトップ経営者や専門家と、具体的かつグローバルな議論を展開する。今回は、東京電力ホールディングス常務執行役の長崎桃子氏を迎え、同社のダイバーシティの現状について議論した。(対談は2021年7月31日に実施)

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00509/00008/

東京電力ホールディングス 常務執行役の長崎桃子氏。2017年に子会社のテプコカスタマーサービスの社長に就任し、1年で新電力3位へと成長させた

石角友愛氏(以下、石角) 長崎さんは東京電力ホールディングス(以下、東電)初の生え抜きの女性役員として注目されていますね。東電の女性管理職比率は2006年の0.9%から20年度末に5.5%まで上昇、女性役員は6人になっています。さらに25年度末までにグループ全体で女性管理職比率10%達成を目標に掲げていて、かなり女性活躍には力を入れられている印象です。

長崎桃子氏(以下、長崎) 今、東電では20代後半から30代の若手でも将来が嘱望される女性についてはキャリアを付与し、昇給させて育てていく仕組みができています。オンとオフの両面での研修も受けられるようになっていて、女性が活躍しやすくなってきています。

石角 米国ではマネジャーポジションに就いている人の40%が女性です。白人女性が圧倒的に多く、ラテン系が4.3%、黒人が4%、アジア系が2.5%と低いことから、人種比率が問題となっています。ただ日本ではそもそも女性管理職比率は10%にも届いていません。上司が女性かどうかによって女性の働きやすさは変わってくるので、ここを上げていくことは大事です。長崎さんも産休・育休を取得されていますが、その頃はまだ女性上司もいなかったでしょうし、周囲の理解もなかなか得にくい時代だったのではないでしょうか。

長崎 私が出産した頃の東電は、産休・育休を取得すると昇給が止まり、それまで積み上げてきた社内評価がいったんゼロに戻るという、今では考えられないような古い制度が敷かれていました。これが解消されたのはここ10年ほどのことだと思います。

石角 それはかなり古い体質ですね……。それだと、女性は子どもを産みたいとはなかなか思えないでしょうね。長崎さんもかなり苦労されたのではないでしょうか?

長崎 もう言葉では言い表せないくらい大変でしたね(笑)。当時、東電本社で勤務していた女性の中で出産した人は1人しかいなかったんです。

石角 それはかなり少ないですね。何年くらい前のことですか?

長崎 20年ほど前ですね。もともと女性の数が少なくて、本社勤務の2500人くらいのうちキャリアの女性は20人程度だったと思います。営業部門全体では女性が4割ほどを占めていたのですが、本社勤務となるとわずか数人。200人の会議で周囲を見渡すと、女性は私だけということもよくありました。

石角 そんな中で図らずも長崎さんが2人目になったのですね。

長崎 そうなんです。私が休暇を取得するときには「来月戻ってくるんだよね?」と複数の人から言われました。別にみんな嫌みで言っているんじゃないんですよ。そういうものだと思っていたんだと思います。

石角 そうしたカルチャーの中での出産となると、かなりのプレッシャーですね。どのくらいの期間の育休を取得されたんですか?

長崎 私は2回出産していますが、それぞれ1年ほど育休を取りました。やはり「そんなに休むの」といった空気はありましたね。

ブレイクスルーとなった“抜てき”

石角 先ほど出産するとキャリアがゼロになるという話がありましたが、長崎さんもそうだったんですか?

長崎 はい。自分が出産をする前までは、育休を取ればやりがいのある仕事ができなくなることやトップラインから外れることは仕方がないと思っていました。でも自分が出産を経験して、「産後さまざまな制約がある中でも最大のパフォーマンスを出そうと奮闘しているのに、なぜこんなことになるのだろう」と切ない気持ちになりました。

石角 実際、周囲からは遅れていたのですか?

長崎 同期は全員が管理職になり、私より入社が遅い社員も管理職になる中で、私だけが取り残されていました。でもそれよりも辛かったのは、やりたい仕事ができない、就きたいポストに就けない、という状況が6年も7年も続いたことで、自分の向上心が失われていったことです。自分が働くことで子どもに寂しい思いをさせているのに、仕事でも中途半端な状態が続きました。「私の人生は何のためにあるのか」と思い詰めていた時期でしたね。

石角 それは辛い状況でしたね。仕事へのモチベーションが下がってしまうのも当然だと思います。その状態から脱することができたのには、何かきっかけがあったのでしょうか?

長崎 ブレイクスルーとなったのは人事です。ある男性の上司が、東電エナジーパートナーの電気とガスの自由化に関するプロジェクトリーダーに私を抜てきしてくれました。仕事ですごくお世話になった人ではなかったのですが、私を応援してくれていたのだとその時に気づきました。今思えば、その上司にとってはすごく勇気のいる決断だったと思います。ですがそのおかげで「仕事ってこんなに面白くてシビれるものなんだ」と感じましたし、大きな責任を背負う経験をして仕事への積極性を取り戻すことができました。

石角 その方は長崎さんの能力や働きぶりを見てくれていたのでしょうね。

「思うような成果を上げられない状況でも、そこで腐らないでほしい」と長崎氏は語る

長崎 私の場合は出産でしたが、病気や家庭の事情などで思うような成果を上げられない状況に直面している人もいると思います。でも決してそこで腐らないでほしい。どんな時期でも継続的に自分のベストを尽くしていくことが大事ということは、私が経験したこととして伝えていきたいですね。

石角 「腐ってはいけない」というのはすごく大事なことだと思います。私が勤めていたGoogleは、外資系でしかもITということもあり、部署や人が合わないとすぐに異動になることが多く、チームメンバーや上司が1、2カ月に1回変わることは珍しくありませんでした。でも日本企業ではそんなに簡単には異動できません。だからこそ“腐らない”ということは心がけたいですね。

長崎 腐らないためには、小さくてもいいので目標を見つけて、その達成に向けて楽しんでいくことが大切です。そうしていると数年はあっという間に過ぎていきます。

昇進を逃した人にもチャンスを与える

石角 ここまで女性活躍についてお聞きしましたが、東電では女性活躍以外のダイバーシティについては、どのような取り組みをされていますか?

長崎 今は特に「ミドル世代やシルバー世代の人材抜てき」に力を入れています。日本では一般的に50代で昇進や昇給が止まりますが、「人生100年時代」といわれる現代では、まだ人生の半分です。その時点で仕事に対する向上心が失われていくのは非常にもったいないと思います。最近では昇進・昇給を諦めていた50代以上への新規管理職任用という例も出てきました。

石角 50代で初めて管理職というのは、かなり珍しい取り組みですね。

長崎 そうですね。もともとは若い時に昇進しなければその後チャンスは訪れない仕組みになっていたため、50歳以上の社員が管理職になることはありませんでした。ですが、それでは家族の事情でタイミングが合わなかったり、45歳を過ぎてから活躍し始めたりした人は管理職になれません。そうした人たちを50歳でも55歳でも、管理職やプロジェクトリーダーにする事例ができました。

石角 「あと数年で定年かな」と思っていたらまさかの抜てきと。

長崎 はい、人事を言い渡された本人はびっくりしているようです(笑)。

石角 私の会社には、大手企業を勤め上げた50代の方が「第二のキャリアとしてデータサイエンスの分野で働きたい」と問い合わせをしてきてくれることがあります。そうした向上心、気概は本当に素晴らしいですよね。そういった方々の話を聞いていて、働ける受け皿を作ることは非常に重要だと感じています。東電のような大企業がそうした世代の抜てき人事をされているというのはすごいですね。

長崎 まだ始まってから2、3年しかたっていないので、成果が見えてくるのはこれからでしょうね。ですが50歳を過ぎたら「あとは流していくだけ」と考える社員が一定数いると、会社としての総合力も落ちますし、活躍できる社員をそのままにするのはもったいないですからね。

石角 本当にもったいないですよ。まだまだ学び、働いてほしいところです。

長崎 まさにそこで、若い世代もシニア世代も、トップスピードで走れないときでも自分への投資はやめないことが大事だと思っています。近年は「リカレント教育」という言葉が盛んに使われていますが、実際に学び直しをしている人は少ないでしょう。自分の仕事における個性を明確にするためにも、自己投資は怠らないようにしてほしいですね。それに人生は山あり谷ありですから、完璧を求めない、諦めないのが大切ということもお伝えしたいですね。

<後編へ続く>

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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