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飲食店のデジタル化が失敗するわけ、成功事例との決定的な差とは

2022/09/26 メディア掲載実績 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

デジタル化で「うまくいった」「失敗に終わった」 飲食店の決定的な差– ITmedia寄稿記事掲載

ブルースターバーガー中目黒店(画像はダイニングイノベーションのプレスリリースより)

外食産業のDXの重要性が問われる中、デジタル化をしてうまくいく企業とうまくいかない企業があります。その違いはどこにあるのでしょうか。

今回は、失敗事例と成功事例をもとに外食産業のDXにおける大事なポイントを考えたいと思います。

ITを駆使した「ブルースターバーガー」が閉店

ITを駆使していることで一躍有名になったものの、数年で閉店に追い込まれてしまった例として、ハンバーガー専門店の「ブルースターバーガー」があります。「焼肉ライク」を日本全国で展開するダイニングイノベーションによるチェーン店で、2020年のオープン当時には連日お店の前まで人があふれかえるほどの人気でした。

そんなブルースターバーガーは今年7月31日に完全閉店に至りましたが、この大きな理由として考えられるのが「IT活用そのものが目的化してしまったこと」です(関連記事)。

ブルースターバーガーでは、ITを駆使した「超スマートモデル」を売りにして、オーダー・決済・受け取りまでの全てを完全非接触で実現しました。

「完全キャッシュレス・テークアウト専門」とすることで、家賃や内装費・人件費といった経費を極限まで軽減。その分を商品原価に投資することで、驚異の原価率68%を実現しました。なお、飲食店の通常の原価率は30%程度とされています。

商品の注文からお会計まで行えるアプリ(画像はダイニングイノベーションのプレスリリースより)

コロナ禍ということもあり、ニューノーマル時代に即したこの新しいビジネスモデルが「世界ブランドを目指す、日本外食DXの成功例」として注目を集めました。

しかし、現金決済が主流の日本で完全キャッシュレスを実現することのハードルが高かったことに加え、「テークアウト専門」という店舗形態もなかなか定着せず、座席や接客人員が必要となる店舗も増えるなど、経費削減のための大前提が崩れてしまいました。

さらに、ロシアのウクライナ侵攻に端を発した原材料高騰など、想定外の外的環境変化の影響もあり、最終的にはハンバーガーの品質担保が難しくなってしまいました。

こうした要因が重なり、オープンから2年も経たずに撤退を余儀なくされてしまったのです。

ブルースターバーガーのメニュー(画像はダイニングイノベーションのプレスリリースより)

私の著書『いまこそ知りたいDX戦略』の中でも述べていますが、DXとは「ツールの導入を行うといった局所的なIT導入ではなく、デジタル技術を採用した根本的なビジネスモデルの変換を指す」のです。

その点でいうと、ブルースターバーガーでは業務効率化・経費削減のツールとして「ITを駆使すること」自体が目的となってしまっていたのかもしれません。

そのため、そもそも外食産業を行う上で最も重視すべき「顧客と従業員の満足度」への配慮がおろそかになってしまい、競合優位性の確立やビジネスモデルの変換というDXの本質にまで至ることができなかったと言えます。

「トラック内でロボがピザを作り届ける」スタートアップの挫折

同様に、IT活用を全面的に押し出し一時的に注目を浴びたものの、数年で閉鎖してしまった米国の飲食スタートアップに、Zume Pizza(ズームピザ)が挙げられます。

Zume Pizzaは、オーブン搭載のトラック内でロボットがピザを作り熱々のピザを顧客へ届ける、という新規性と技術力を売りにしたスタートアップでした。

Zume Pizza(画像提供:ゲッティイメージズ)

ソフトバンクビジョンファンドから3億7500万ドル(約535億円)以上の投資を受け、その資金を使って一気にトラックを購入し、内装工事を施しました。車内でロボットがピザ生地を成形し、トマトソース、トッピング、チーズなどを置いてオーブンでピザを焼いて取り出す、という工程が行える“オーブントラック”に改装したのです。これにより、トラックで配達先に向かう最中にピザを焼くことができるため、消費者により早く出来立てのピザを届けられると考えたのです。

16年の創業当初は、まずまずの出来でピザを提供していました。レビューサイトでは、新鮮な食材と迅速な配達を評価するレビュアーがおり、「低価格のピザショップより明らかに良い」と書いた人もいました。

しかし最終的には、車で配達先に向かいながらピザを焼くという戦略を転換せざるを得なくなりました。

その理由は、トラックが急ハンドルをきったり、道路の段差にぶつかったりすると、チーズがあちこちに飛び散ることが多かったからです。その代わりに、オーブントラックを中心部に駐車し、ランナーカーや原付バイクで焼いたピザを運ぶシステムを構築していきました。

しかし、ピザを自動化したプロセスで速達するサービスを拡大するために必要なオペレーションの改善、フルフィルメント(注文から配達までのプロセス)の知識、自動化におけるモニタリング機能実装、そして何より大事な顧客満足度というところまで徹底する前に、資金が枯渇。これが、失敗の大きな要因だと言われています。

ピザ(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

ある報道によれば、Zumeのエンジニアチームがピザトラック用の独自のバッテリーや充電ステーション、熱い食べ物が冷めすぎて配達できなくなったことを検知するセンサーの開発などに何カ月もかけたものの、これらのプロジェクトはどれもうまくいかなかったということです。Zumeが19年に計上した売り上げは100万ドルを大きく下回っており、20年にはついにピザ事業を閉鎖しました。

このように、IT活用を全面的に押し出すことで経営のフォーカスがブレてしまい、飲食業を行う上で最も大事な「安全でおいしい商品を提供し、顧客満足度をあげてリピーターを増やす」というところがおろそかになってしまうケースもあります。

「Blank Street Coffee」がDXでつかんだ成功

Blank Street Coffee、パステルグリーンの小さな電動コーヒーカート(画像は公式サイトより)

Blank Street Coffee(画像は公式サイトより)

反対に、ITをフルに活用して外食産業のDXに成功している事例もあります。例えば、今ニューヨーカーの間で流行っているコーヒーチェーン、Blank Street Coffee(ブランク ストリート コーヒー)です。

Blank Street Coffeeは、20年8月、ニューヨーク市ブルックリンのウィリアムズバーグにオープンしました。特徴的なパステルグリーンの小さな電動コーヒーカートで、地元のペストリーやベーグル、コーヒー豆を販売するところから始まりました。

その後、ニューヨークで最もコーヒーショップが多く集まる地域の1つであるワイス・アベニューにも店舗をオープンさせ、わずか2年で地元資本のどの競合店よりも多い40店を市内にオープンさせました。

Blank Street Coffeeの特徴として、スターバックスほど高くなく、ダンキンコーヒーほどチープでもなく、味も値段も「ちょうどいい」ということが挙げられます。16オンス(約470ミリリットル)のアイスラテを例に取ると、ダンキンコーヒーでは3.75ドル、スターバックスでは5.50ドルであるのに対し、Blank Street Coffeeでは4.25ドルという価格帯で、「手頃な値段で、いつもよりちょっと良いものをたしなみたい」という層をうまくつかんでいます。

また、店舗形態も特徴的です。近年のコーヒーショップといえば、スターバックスが広めた「第三の場所」という、友人とおしゃべりをしたり、パソコンを持ち込んで仕事をしたりする場所が思い浮かぶかもしれません。しかし、Blank Street Coffeeはそうではありません。350平方フィート未満の敷地サイズ(喫煙所や簡易的なデリカテッセンのようなサイズ)で、顧客の注文を素早くさばき、店員は顧客サービスに集中できるようにオペレーションが工夫されていることで回転率が高くなるように設計されています。

ブルースターバーガー同様、アプリを活用していることも特徴的で、顧客はアプリを通して事前にオーダーをしておき、カフェに取りに行というスタイルのため、待ち時間も少なくて済みます。

Blank Street Coffeeの強みはコーヒーを作る自動エスプレッソマシンの活用にあります。

このマシンは1時間に700杯、一度に8杯のエスプレッソを作ることができるスイス製のEversys(エバシス)というもので、価格は5万ドル(約710万円)で、平均的なバリスタの年収と同じコストと言われています。

エバシスのエスプレッソマシンを使うことのメリットを紹介します。

バリスタレベルのクオリティー
タンピングや蒸らし時間、豆の粒度、湯量といった要素をバリスタ自身が設定してマシンに覚え込ませることで、マシンにバリスタと同様のクオリティーを再現できる。コスト削減
全自動でクオリティーの高いコーヒーを抽出できるため、新人のトレーニングや人的ミス、業務効率の低下によって生じうる人件費の削減を実現できる。

生産性
1平方センチあたりのコーヒー生産量は市場最高レベルを誇る。

一貫性
バリスタが設定した要素が常に全自動で再現されるため、出来上がったコーヒーの品質は常に一定に保たれる。コーヒー豆のロスも削減できる。

Eフォーム
スチームとエアーの両方を導入したe’foam(Eフォーム)という技術によって、バリスタにとって最も難しい作業の一つとされるミルクの泡立てを自動化。バリスタはラテアートなどのクリエイティブな作業に注力できる。

省スペース
限られたスペースで基準を満たしたコーヒーを大量に抽出できる。

パフォーマンスの遠隔測定
マシンのパフォーマンスパラメーターがクラウド上で一括管理されるため、関係者が店舗ごとのマシン設定や稼働状況などを一元的かつリアルタイムにモニタリング・管理・調節することができる。また、時間ごと、日ごと、月ごとの生産性、技術性能、飲料のプロファイルなどの詳細なデータも取得できるため、メンテナンスや故障予防に役立てられる。

Eクリーン
営業終了後のクリーニングが、ボタン一つで約10分という短時間で完了。マシン本体のクリーニングは専用のクリーニングボールを使用して行うが、1カ月分を入れておけるため、交換の手間も少ない。

エバシスのイメージ図(画像は公式サイトより)

通常、カフェの接客で一番のボトルネックになるのがエスプレッソドリンク(ラテやマキアート、モカなど)を作る工程です。

豆をひき、エスプレッソ液を抽出し、ミルクを泡立て、混ぜる……。こうした多岐にわたる工程が必要なため、バリスタの腕やその日のコンディション次第で味に大きな差が出てしまったり、接客に時間を割くのが難しくなったりしてしまうケースがあります。そこでBlank Street Coffeeでは、マシンを導入し、ミルクを注ぐ以外の工程を完全に自動化し、バリスタや従業員が顧客対応や窓口の役割などに時間を割けるようにしています。

もちろん、コーヒーにこだわりがある層には、自動マシンで作られたラテを飲むことに違和感を覚える声もあがっています。しかし、一杯のラテが6ドル、7ドルすることも珍しくない今日、「ちょうどいい価格と味」でおいしいラテが気軽に飲めるカフェとして、多くの顧客に支持されています。

DXを実現する際に大切なこと

こうした失敗例・成功例を見て分かるように、ITを駆使して外食のDXを実現する時に大事なのは、「どの工程にITツールを導入し、どのような付加価値を顧客に提供できるか」を見極めることです。

Blank Street Coffeeのように、IT搭載エスプレッソマシンを導入して作業効率化を実現することで、人件費を抑えながらも顧客と従業員の総合的な満足度を向上させ、小さい店舗で運営ができる体制を作ることで拡大できるケースもあります。

顧客が大事だと思っている「人との接点」は残しつつ、ボトルネックになる箇所を省人化することで他の領域で付加価値が提供できるようにした点に、Blank Street Coffeeの成功要因があると言えます。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2209/22/news035.html

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。また、毎日新聞「石角友愛のシリコンバレー通信」、ITメディア「石角友愛とめぐる、米国リテール最前線」など大手メディアでの寄稿連載を多く持ち、最新のIT業界に関する情報を発信している。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
※石角友愛の著書一覧

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