DXを通した産業改革の重要性を伝える音声番組「Level 5 by Palo Alto Insight」
各回の内容を文字でもお伝えすべく、文章でまとめた記事を投稿しております。ポッドキャスト内容の概要を読みたい方はこちらの記事をお読みください。詳しい内容は音声ページよりお楽しみください。
今回も視聴者の方からいただいたコメントに、出演者3名が回答するところからスタートしました。
私は2歳児の父です。会社員として仕事をしつつ、英語の勉強やRの学習を進めています。しかし、仕事から帰宅すると子供の部屋の片付け・お風呂の準備・寝かしつけ・保育園の準備などをする必要があるため、1日に無理なくとれる勉強時間は1時間以下と、なかなか時間が確保できません。また、それらを抜きにしても、コンディション維持のための運動の時間も取れず、不健康な日々を送ってしまうこともしばしばあります。出演者の皆様は、どのようにタイムマネジメントをしていますか?
誰にも邪魔されない朝の時間
長谷川は、勉強する時間と勉強の仕方についてアドバイスをしています。日々のお仕事に加えて育児も行っている場合、なかなか自分の時間をゆっくり確保することは難しいでしょう。そこで、朝の誰にも邪魔されない時間に、自己投資することをおすすめしています。
実際にキャリアチェンジを考えて勉強をしていた時期は、朝6時頃からまとめて勉強していたようです。それに加えて、勉強するものを1つに絞ることによって、短い時間でも確実に成長できるよう工夫をしました。このように、勉強する時間とそのやり方を変えることで、効率よく学習を進められるのでは無いでしょうか。
20年先に後悔しないか
逆に山崎は、今しかできない子育てに注力することを提案しています。長い人生の中で、自己投資に力を入れられるタイミングや子育てに注力せざるおえない期間は必ず存在します。そのため、長い人生だというふうに割り切って、今しかできない「子供との時間」を大切にすることも、1つの選択肢でしょう。
そして石角は、20年先に後悔しないかを考えた上で、適切な労働環境や取り組むべき課題について考えるのがいいと話します。例えば、子供の誕生日パーティを休んでまで勉強した場合、先の将来でその行動を後悔することがあるかもしれません。そのため、長い目で見て後悔しない選択をすることが、タイムマネジメント以上に大切なことです。
今後も引き続き、「Level 5 by Palo Alto Insight」ではコメントを募集しております。
ぜひお気軽にご質問ください。
第35回で取り上げる「今週のホットニュース」は「Nvidia stock falls after U.S. government restricts chip sales to China」です。
ニュースの概要
このニュースは、アメリカ政府がNVIDIAに対し、中国やロシアに対する半導体(GPU)の販売を制限するといった内容です。GPUとは演算用途などに使われる半導体で、アメリカ政府は軍事用途へ使用されたり、転用されるリスクへの対応策として今回の制限を発表しました。NVIDIAだけではなく、大半の主要半導体企業の製品が生産されている台湾を巡り緊張が高まる中、今回の発表は中国の技術力抑制を目指すアメリカの取り組み強化であると見なされています。
日本ではあまり馴染みのないNVIDIAという会社ですが、なぜこの会社の作るGPUがそこまで大切なのでしょうか。その理由は、機械学習でディープラーニングやニューラルネットワークのトレーニングをする際、GPUが高速演算を可能にするということが分かったからです。
もちろん、NVIDIA以外にもGPUを作っている会社は沢山あります。みなさんの聞き馴染みのあるAppleやインテルなどの企業でも、CPUに内蔵されているGPUを製造しています。しかし、「機械学習のためのGPU」という意味では、NVIDIAが製造しているものしか使えないのです。
というのも、NVIDIAが使っているプログラミング言語「CUDA」というものがあり、この言語でプログラムを組めるのが現状NVIDIAだけなのです。つまり、機械学習をしようと思ったら、まずはNVIDIAのGPUを購入しなければならないことになります。
今回のニュースが発表される前にも、NVIDIAのGPUの価格は大幅に高騰していました。このことから、NVIDIAのGPUがどれほど重要なのかが伺えます。
中国市場を見てみると、今回の制限がどれほど大きな痛手かが分かります。なぜなら、中国にはテンセントやアリババなど、大量のデータを持っている巨大IT企業が数多くあるからです。まさに、アメリカと並ぶAI大国に発展しているといっても過言ではないでしょう。
そして、今回の制限はNVIDIA側から見ても大きなダメージとなっています。NVIDIAの売り上げを見てみると、中国の売り上げが全体の26%、台湾が32%、アメリカ国内の売り上げが16%と、中国市場のシェアが非常に大きいことが分かります。
NVIDIAの株価が下がるということは、アメリカの投資家にとっても嬉しいことではありません。そのため、今回の制限は誰も得していないのではないか、という見方も広がっています。
それでは、日本の半導体市場は世界的に見てどうなっているのでしょうか。山崎は、日本の半導体製造技術は、世界のトップに比べると3~4世代は遅れてしまっているといいます。
半導体には細かい回路を作る技術が必要になりますが、現状世界トップレベルの半導体チップは2~3ナノレベルという非常に細かい製造が可能になっています。それに対し、日本の半導体チップ製造技術は40ナノ程度となっており、世界に比べると大幅に遅れているとこがわかるでしょう。
しかし、これはあくまでも「最先端技術」にフォーカスした話になります。40~100ナノレベルといったミドルエンドの半導体でも、需要は大幅に伸びているのです。世界で1年間に出荷される半導体チップ数は、2030年には2~3兆個になると言われており、さまざまな産業で半導体の重要性が高まっていくことが期待されます。このことから、日本の半導体市場にとってもチャンスがあるといえるでしょう。
みなさんはTSMCという会社をご存じでしょうか。台湾に本社を構える企業であり、時価総額は約15兆6,000億台湾ドルを超えています。これは日本円に換算するとトヨタの約2倍となっており、世界で10番目に価値のある企業として評価されているのです。
石角いわく、どれだけ難しい設計を依頼したとしてもTSMCは実現できると話しており、圧倒的に優秀な人材と膨大なお金が集まっているといいます。さらにアメリカは、戦闘機などに使われるAIチップをTSMCに製造してもらっているという背景もあるため、その重要度は増し続けているのです。
しかし、台湾にTSMCがあるというのは、アメリカにとってリスクでしかありません。それは、アメリカと台湾の距離が非常に離れているにもかかわらず、中国が隣接しているからです。このように、半導体が取り巻く地政学からみると、アメリカと中国の緊張が一気に高まっていることがわかるでしょう。
「今週のおすすめコンテンツ」は、石角の紹介する「2030 半導体の地政学 戦略物資を支配するのは誰か」です。
この本は、米中対立の激化に伴い戦略物資として価値が高まる半導体について、日経新聞の半導体担当の記者が、技術覇権をめぐる国家間の争いを地政学的な視点で読み解き、日本の半導体の将来を展望した1冊となっています。今回の放送内容に大きく関わるコンテンツとなっているため、より知識を深めていきたいと思う方は、ぜひ読んでみてください。
それでは、次回の放送もお楽しみに!
#35の実際の音源はこちらからお楽しみください。
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)
パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事及び東京都AI戦略会議 専門家委員メンバーに就任。
AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。
毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。
著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。
実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
※石角友愛の著書一覧
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