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パロアルトインサイト/PALO ALTO INSIGHT, LLC. > ブログ > 予測精度を高めるAIシミュレーション: 活用事例や導入における課題
投稿日:2024/11/13 更新日: 2024/11/13 by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF

予測精度を高めるAIシミュレーション: 活用事例や導入における課題 企業成長を持続させるうえで、市場や経営・製造、自然災害などへのリスク予測が欠かせません。AIシミュレーションは従来の手法を超える予測精度を実現し、リスク管理に新たな可能性をもたらします。 前編では、AIシミュレーションの概要と背景、AIシミュレーションの仕組みについてお伝えしました。 本記事ではAIシミュレーションの活用事例や導入における課題について解説します。 目次 AIシミュレーションの活用事例 金融業界 自然災害の被害予測と防災計画 医療・ヘルスケア 都市計画・交通管理 環境・エネルギー分野 製造業 セキュリティ・防衛分野 AIシミュレーション導入における課題 データの質と量の確保 専門知識を持つ人材の育成 倫理的配慮とバイアス対策 まとめ     AIシミュレーションの活用事例 リスク管理は防衛や防災、セキュリティといった分野だけでなく、医療や製造業といった身近な産業でも重要なテーマです。そして、AIシミュレーションはリスク管理で大きな役割を果たします。ここでは、リスク管理にAIシミュレーションを活用した事例を紹介します。 金融業界 米国の保険仲介業会社「SecureLife Insurers」は、アンダーライティング(引受査定)プロセスの遅延とリスク評価が不正確であるという課題に直面していました。そこで、AIシミュレーションを導入し、医療記録やウェアラブルデバイスのデータ、過去のクレーム情報から、顧客のリスク要因を特定していきました。 その結果、リスク評価の精度が40%向上し、アンダーライティングの時間を50%短縮することに成功しています。 (参照:https://digitaldefynd.com/IQ/ai-in-finance-case-studies/) 自然災害の被害予測と防災計画 洪水は特に発展途上国で頻繁に発生し、人的・経済的被害を引き起こしています。開発途上国では、災害リスクに関する十分なデータ蓄積がなく、洪水予測モデルの構築が困難です。 Googleはこの課題を解決するために、AIを用いた洪水予測モデルを開発しました。LSTM※1ネットワークを使用し、AIに世界中の5,680の河川流域の過去気象データと地理データを学習させることで、各地域の河川流量を7日先まで予測することを可能にしました。 ※1 LSTM(Long Short-Term Memory:長・短期記憶)は、深層学習で使用されるネットワークです。 (参照:https://www.nature.com/articles/s41586-024-07145-1) 医療・ヘルスケア オランダの大学病院「Amsterdam UMC」は、大量の患者データや研究データの管理に課題を抱えていました。データ管理・分析が効率的でない場合、患者への治療が不確実・不安定になるリスクが発生します。 そこで米国のSAS※2が提供するAI分析プラットフォームを導入し、データ管理や分析環境を整備し、治療結果のシミュレーションを行うことで治療計画の最適化を実現させました。 (参照:https://www.vktr.com/ai-disruption/5-ai-case-studies-in-health-care/) ※2 SASはアメリカの大手ソフトウェア企業です。AIやデータ分析ソリューションを提供しています。 都市計画・交通管理 米国連邦高速道路局(FHWA※3)は、AIとVR(仮想現実)を活用した交通シミュレーションの開発に取り組んでいます。従来のセンサーやデータ収集方法では、正確な交通パターンのモデル化が難しいという課題がありました。 AIをシミュレーションに導入することにより、複数のデータソース(車両データ、衛星データ、携帯電話データなど)を統合し、交通流や車両の動きをリアルタイムで解析することが可能になりました。 (参照:https://www.traffictechnologytoday.com/news/artificial-intelligence-ai/feature-why-ai-traffic-modeling-is-only-as-smart-as-the-data-we-feed-it.html) ※3 Federal Highway Administration 環境・エネルギー分野 日本気象協会は、蓄積してきた気象予報の専門知識をAIに学習させることで、高精度な電力需要予測サービスを開発しました。 電力供給の効率化と安定化には、正確な需要予測が欠かせません。気象協会のAI予測サービスは、電力事業者の需給管理や電力取引の最適化に貢献します。 (参照:https://www.jwa.or.jp/service/weather-and-data/weather-and-data-02/) 製造業 The Model Groupは、スイスを拠点とする包装紙メーカーです。当社の生産スケジュールは、たった4人の従業員が経験則に基づいて作成していました。しかし、この手法は独善的なもので、スケジュールの最適性を検証する手段がありませんでした。バイアスのリスクもあります。 そこで、AIシミュレーションを用いて、スケジュールを自動生成するシステムを構築しました。結果として、生産効率を向上させつつ、生産スケジュールを18%圧縮することに成功しています。 (参照:https://www.anylogic.com/resources/case-studies/comparing-and-implementing-job-shop-scheduling-techniques-with-ai-powered-simulation/) セキュリティ・防衛分野 NYPD※4は2000年代から市内犯罪の増加やテロ事件を受け、対応を進めていました。そして、AIを活用したセキュリティシステム「DAS※5」を導入します。DASは、NYPDとMicrosoft社が共同開発した大規模監視・分析システムです。AIによるデータ分析・パターン認識、機械学習アルゴリズムによって、犯罪やテロを予測します。 ※4 Domain Awareness System ※5 New York Police Department:ニューヨーク市警察 AIシミュレーション導入における課題 AIシミュレーションは企業や組織に大きなメリットをもたらす一方で、使用するデータセットやAIのハルシネーションなど課題があります。また、AIシミュレーションを安全に運用するためには、専門人材も必要です。ここでは、AIシミュレーション導入における課題を3つ挙げて解説します。 データの質と量の確保 AIシミュレーションの精度は、使用するデータの質と量に大きく依存します。データ不足は誤った予測や確度の低下につながり、企業や組織に深刻な損失をもたらす可能性があります。 対策としては、データクレンジング※6やデータガバナンス※7の強化が重要になります。また、データの収集・管理・分析のプロセスをクリアにし、継続的にデータ品質の監視と改善を進める取り組みも必要です。近年では、データの品質を自動的に評価・改善するAIツールの開発も進んでいます※8。 ※6 データクレンジングは不正確な記録を検出して修正する取り組みです。 ※7 データガバナンスは取得したデータを統制・管理する取り組みです。 ※8 IBMのData Quality for AI、DataRobotなどが挙げられます。 専門知識を持つ人材の育成 AIシミュレーションの導入・運用には、AIやデータサイエンスの専門知識を持つ人材が不可欠です。人材不足はプロジェクトの遅延や失敗、さらには競争力の低下につながる可能性があります。 対策としては、社内外の人材育成プログラムの導入が挙げられます。オンライン学習プラットフォームの活用や、実践的なプロジェクトベースの学習機会を設けることが重要です。 最近では、ローコード/ノーコードのAIプラットフォームの登場により、専門知識が少ない従業員でもAIを活用できるようになってきました。そのようなソリューションサービスの最新情報を得るためには、外部専門家やAIベンダーとのパートナーシップを構築していくことも効果的です。 倫理的配慮とバイアス対策 AIシミュレーションでは、意図せずに差別的な結果を生み出したり、プライバシーを侵害したりするリスクがあります。これらの問題は、企業の評判を損なうだけでなく、法的責任を問われる可能性もあります。 このようなリスクを避けるためには、AIの意思決定プロセスに透明性を確保し、必要に応じて人間による監督をすることが大切です。多様性を考慮したデータセットの使用や、定期的なバイアスチェックといった対策も効果的です。 まとめ AIシミュレーションは、リスク管理の新たな常識となりつつあります。AIをシミュレーションに活用することで、自然災害の予測や生産スケジュールの最適化、電力需要の予測など、多くの分野で効率的かつ効果的な対策が可能になります。現代社会が直面する複雑で予測困難なリスクが増えるにつれ、AIシミュレーションに求められる役割は大きくなっていくでしょう。 以上、AIシミュレーションについての概要や仕組み、活用事例について解説させていただきました。AIシミュレーションの導入・運用には、専門知識を持つ人材が不可欠です。 パロアルトインサイトでは、AIシミュレーションの活用に関するご相談を受け付けています。ぜひお気軽にお問い合わせください。 お問い合わせはこちらから。https://www.paloaltoinsight.com/contact/…

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事及び東京都AI戦略会議 専門家委員メンバーに就任。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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