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Stanford HAIとは?スタンフォード人間中心AI研究所の役割
2026/08/31 ブログ 
by Ren Hayama 

Stanford HAIとは?
スタンフォード人間中心AI研究所の役割

Stanford HAIとは?スタンフォード人間中心AI研究所の役割

Stanford HAI(https://hai.stanford.edu/は、スタンフォード大学の学際研究所です。正式名称は Stanford Institute for Human-Centered Artificial Intelligence で、日本語では「人間中心AI研究所」と訳されます。「Human AI Institute」と呼ばれることがありますが、公式の語は Human-Centered(人間中心)です。

2019年に設立され、ミッションは、AIの研究・教育・政策・実践を進め、人間の状況(the human condition)を改善することです。公式の立場は、AIは人間への影響に導かれ、人間の知能に着想を得て、人を置き換えるのではなく拡張するように設計される、というものです。モデルそのものを売る組織ではなく、技術の作り方と、社会への入れ方を同時に考える場所です。

Stanford HAIとは何か

HAIは、工学部だけの研究室ではありません。スタンフォードの7つのスクールをまたぐ、大学横断の研究所です。コンピュータサイエンスだけでなく、医学、経営、法学、人文社会科学までを同じ場所に置き、学界、産業、政府、市民社会の議論を集めて、AIの開発と責任ある実装を形にすると公式に書いています。

発足は2019年3月です。当時の共同ディレクターは、スタンフォード大学コンピュータサイエンス学科教授の Fei-Fei Li(フェイフェイ・リー)と、同大学哲学教授で元プロボスト(大学の教学・研究を統括する役)の John Etchemendy(ジョン・エチェメンディ)でした。発足時点で、7つのスクールから約200人の教員が参加していました。技術者だけで将来を決めるのではなく、人文・社会科学の視点を同じテーブルに置く、というのが設立の理由です。(出典:https://news.stanford.edu/stories/2019/03/stanford_university_launches_human-centered_ai

HAI共同創設者であるFei-Fei Li教授とは

Fei-Fei Li 教授は、スタンフォード大学コンピュータサイエンス学科の Sequoia Professor であり、HAIの創設ディレクターです。専門はコンピュータビジョンと機械学習で、大規模画像データセット ImageNet と、その精度を競う ImageNet Challenge の考案者として知られています。深層学習が実用に乗る過程で、学習と評価の土台になった取り組みです。

2013年から2018年まで、スタンフォードAIラボ(Stanford AI Lab)のディレクターを務めました。2017年から2018年のサバティカルでは、Google の Vice President として、Google Cloud の AI/ML チーフサイエンティストを兼任しています。研究の関心は、認知に着想を得たAI、機械学習、深層学習、コンピュータビジョン、医療現場向けの環境知能(ambient intelligence)に広がっています。技術面だけでなく、STEMとAIの多様性を広げる全国非営利団体 AI4ALL の共同創設者でもあります。

2026年5月、HAIが Stanford Data Science と統合したあとも、創設ディレクターという肩書きは残しています。いまの主たる役は、スタンフォード大学学長 Jonathan Levin 教授の Special Advisor on AI(AI担当特別顧問)です。大学全体の研究、教育、連携、学生のキャリアまでを横断して見る役割で、HAIの諮問会議では、同大学元学長の John Hennessy 教授とともに共同議長を務めています。(出典:https://hai.stanford.edu/people/fei-fei-li)

いまのディレクターであるJames Landay教授

いま HAI を率いるのは、スタンフォード大学コンピュータサイエンス学科教授の James Landay(ジェームズ・ランデイ)です。肩書きは Denning Director。工学部長枠の Anand Rajaraman and Venky Harinarayan Professor でもあります。専門はヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)、つまり「人が使う側から技術を設計する」研究です。

カーネギーメロン大学の博士論文は、ユーザーインターフェースの設計ツールにスケッチを使うことを示した最初の研究でした。その後、UCバークレー、ワシントン大学、Cornell Tech を経てスタンフォードに移り、2003年から2006年には Intel Labs Seattle のディレクターも務めています。ACMフェローであり、HCI分野の SIGCHI Lifetime Research Award を受けています。HAIの公式インタビューでは、「技術を、実際に人のために働かせるにはどうするか」を30年考えてきた、と述べています。

2026年5月、HAIは Stanford Data Science と統合し、名称は Stanford HAI のまま残しました。Landay 教授が統合後の研究所を率い、大規模データと計算基盤(Marlowe など)を、人間中心という方針の下に一本化しています。公式の説明では、少人数の研究室だけではなく、教員、大学院生、研究エンジニア、データサイエンティスト、プログラムマネジャー、デザイナーが揃う「team science at scale」を大学側で回す、としています。(出典:https://hai.stanford.edu/news/why-stanford-is-restructuring-for-ais-next-era)

HAIはどんな活動をしているか

公式Aboutが挙げる研究の柱は3つです。Intelligence(知能そのもの)は、いまのAIがまだ弱い柔軟さ、文脈の理解、人に説明できる判断を、どう作るかです。Augment Human Capabilities(人の能力の拡張)は、医療、教育、持続可能性などの現場で、人と一緒に働くAIの設計方法を開発することです。Human Impact(社会への影響)は、仕事、組織、コミュニケーションの慣習まで含めて、AIが社会に入ったときの影響を測り、設計に戻すことです。人を仕事から外すことだけがAIの使い方ではなく、教育し、訓練し、仕事の質を上げる方向もある、というのが公式の書き方です。

研究以外の活動も、設立時から具体的に置かれています。2020年には、経済学者で Stanford Digital Economy Lab ディレクターの Erik Brynjolfsson 教授とともに同ラボを発足し、生産性と雇用の変化を測る拠点にしています。2021年には、スタンフォード大学コンピュータサイエンス学科教授の Percy Liang を責任者として Center for Research on Foundation Models を発足し、基盤モデルの研究と評価を大学側で続けています。同じ年には、研究助成の審査に Ethics & Society Review を試験導入しています。

教育と政策では、スタンフォードのコンピュータサイエンス学科および McCoy Center for Ethics in Society と組んだ Embedded EthiCS、規制当局向けの policy boot camp、連邦職員向けのAI研修、産業界と人間中心AIを進める Industrial Affiliate Program があります。2023年には Stanford Medicine と RAISE-Health を立ち上げ、医療での使い方にも踏み込みました。アジア財団との教育プログラムなど、米国以外との連携も公式のマイルストーンに入っています。つまりHAIは、論文を出す研究所であるだけでなく、政策担当者、産業、教育現場が「人間中心」の実務を持ち帰るための、研究・教育・政策の交差点でもあります。(出典:https://hai.stanford.edu/about)

AI Indexとの関係

Stanford AI Index は、HAIの中にある独立したイニシアチブです。政策立案者、研究者、報道、経営層向けに、検証したデータを横断して出す年次レポートで、HAIそのものの「意見書」ではありません。ミッションは、偏りのない、吟味した、世界各地のソースに基づくデータを提供することです。技術の性能だけでなく、経済、教育、政策まで測ります。2026年版の読み方(jagged frontier、社会実装の遅れ)は、別記事 Stanford AI Index 2026とは?加速するAIと遅れる社会実装 〜前編〜 にまとめています。

日本企業が知っておく理由

自社のAI方針を「効率化」だけで書いてしまうと、HAIが公式に置く「人を置き換えるのではなく、拡張する」という考え方から外れます。採用、権限の設計、ベンダー選定でAI Indexの数字を使うなら、その数字は誰が、どういう立場で出しているのかまで見る必要があります。発行元はこの研究所であり、レポートはHAIの中の独立したイニシアチブです。

このように、HAIを知っておく意味は、最新モデルの発表元を覚えることではありません。人間中心という方針と、AI Indexという測り方を、同じ場所が持っていることです。自社のAI導入は、効率化の数字だけを追っていないでしょうか。人を置き換える話になっていないか。それらを考える必要があります。

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事及び東京都AI戦略会議 専門家委員メンバーに就任。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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