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パロアルトインサイト/ PALO ALTO INSIGHT, LLC.

AIで変える高齢者の未来〜フジクラの挑戦〜2019/10/09

新規事業推進センター
シリコンバレーオフィス所長
今井隆之
新規事業推進センター
つなぐみらいイノベーション推進室 主席部員
森祐起
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主に光ファイバーや、電線事業を中心に製造を行う非鉄金属メーカーである「株式会社フジクラ」(以下、フジクラ)。AIを活用した画像認識検査などをすでに導入している同社が「2030年ビジョン」を掲げて全く異なる分野へと挑戦している。そんな同社に話を伺いました。(聞き手:石角友愛)

電線大手のフジクラが高齢者支援に挑戦するワケ

石角:まず初めにフジクラさんはどのような事業を行っているのでしょうか。

今井:まず弊社ですが、現在はハードウェア中心のとても堅いビジネスが主流です。
一番売上高が多いのが「エネルギー、情報通信」という分野で、これは主に光ファイバーを含む電線ケーブルです。電線ケーブル業界では住友電工、古河電工、フジクラが御三家といわれています。それ以外にもスマートフォンの中に入っている基板でしたり、コネクタでしたり、そういった部品も扱っています。
しかし、実は電線というのがかなり成熟産業となってしまっているというのが課題です。

石角:主事業である電線ケーブルが売上高で占める割合で言うとどのくらいですか

今井:主に売り上げの4分の1程度を電線ケーブル事業が占めております。
自動車分野でもワイヤー、ハーネスなどの電線をはじめとした部品の製造も扱っております。このような、典型的なBtoBのビジネスモデルとなっております。

そこで、今までよりも広いビジョン、枠で活動しようというのが我々が掲げている「2030年ビジョン」というもので、フジクラのつなぐソリューションの提供により、快適で持続可能な未来社会の課題を解決し、継続的に企業価値を高めていくという活動を進めていくことを宣言しています。

石角:未来社会の課題というとSDGs(持続可能な開発目標)がありますがそういうことでしょうか。

今井:その通りで、SDGsの解決を目指しております。今回の事業のテーマはライフアシスタンスの分野で、人の助け、生活の助け、健康寿命を延ばすとか、QOLを向上させていくということが目標です。
「人々の健康寿命の延伸と、生涯を通したクオリティオブライフの向上に貢献している」というビジョンを掲げて、電線のフジクラとは全く違うイメージの「ライフアシスタンスの分野」にチャレンジしています。

超高齢社会で求められる自立支援

石角:ではなぜ、フジクラさんが今回本業とは関係のないライフアシスタンスの分野にチャレンジすることに至ったのでしょうか。

森:弊社では2012年くらいから健康経営に取り組んでおり、過去数年の蓄積・実績があります。その中で社員が活き活きと働ける会社、社会にしようという思いがありました。
その一環として今は、会社等を卒業された方がその後の人生を活き活きとして暮らせないかということを課題に掲げ取り組んでいます。

石角:実際今後日本の人口もこの層が一番増えますし、話題の老後2000万円問題もありますしね。

森:高齢者のQOL向上と言ったときに、医療が「治療から予防へ」といわれて久しいですが、介護分野で言うと、「お世話から自立支援へ」ということが合言葉になっています。
しかし元々は介護保険ではこうだったのだが、実態や制度が重なるにつれ自立支援になっていないというのが実情でして、これは将来的にも課題です。
日本では現在要介護認定が約660万人程度いるのですが、2025年には790万人、2030年には870万人と人口がどんどん減っていくのに、要介護認定者、要支援者は増えていくことが想定されています。パーセンテージでいうと2019年は全人口の5%、2025年で6%、2030年で7%と5年間で概ね1ポイントずつ増える試算がたっております。

石角:今でも介護現場は大変と聞きますが、いよいよ支えきれなくなってきますね。

森:そこでより重度の方へは適切なサービスの提供が、より程度が軽い方は自立が求められます。
自立した生活を自分で作る健康リテラシーを身に付けることを、世の中に呼び掛けていくのが我々の役目だと思っております。

石角:今回御社とはライフスタイル支援のための音声認識AI提供ということでご一緒させて頂いておりますが、そもそもなぜ弊社にお声がけいただいたのでしょうか。

今井:そもそも日本ではオーダーメイド的にAIを開発してくれる会社は少ないのですが、AI開発以前に、我々の構想しているビジネスアイデアから具体的にどのようなAIを実装して、検証していけばいいか一緒に走りながらサポートしてくれる企業はパロアルトインサイトさんしかいなかったという点が一番ですね。

石角:確かに日本のAI事業を行なっている企業はプロダクトを作ってそれで提案して終わりというケースが多いので我々の強みにしているビジネスデザインをしていく部分を見て頂けたのは大変光栄です。

高齢者支援ビジネスにAIツールを取り入れる優位性

石角:では、実際のビジネスについてご説明いただけますでしょうか。

今井:現在では東京、千葉、長野の5つの地域で、実際にコミュニティを作っている自治体や、地域の方と協業して支援を行なっております。
実際に弊社がコミュニティを創るというよりは、創る側を支援しているイメージです

森:そこで、週に1度、脳トレや体力づくりなどのコミュニティ創りをサポートしております。AIを活用しているのは主にアセスメントの部分で、半年に1度、1時間〜1時間半程度かけて、身体のチェックから40分くらいのインタビューを実施しています。お作りいただいたAIは自動で音声を議事録化してくれて、その後のデータの取りまとめの際にも非常に役立っております。

石角:高齢者のインタビューでは、話が飛んだり、何度も同じ話をしたり脈絡のない話を音声認識でまとめておくということは重要ですよね。

森:主にインタビューでは生活習慣や、関心があること、日ごろ会っている人など、その人を知るために質問をすることを重視しています。
やはりそれぞれやる気のスイッチみたいなものは違っていてそれを見つけるという作業が困難です。本人で認識していない場合が多いので、作っていただいたAIとアセッサー(アセスメントをする人)で協業してより良い形に絞り込んでいます。

石角:現在、我々が作ったフジクラさんに提供しているAIはまだプロトタイプですが、自動で議事録化だけでなく、こういったキーワード抽出を自動でしてリアルタイムで、キズナワードというのを抽出するようにしていますがそれはいかがでしょうか。

森:キズナワードをリアルタイムでアセッサーが見ながら、使いながらインタビューして、そのインタビュー中にも気づきがあったりしています。
メモだとつい飛んでしまうようなことも音声認識で記録されているのは非常にありがたい。インタビュ-中に使えるという利点と、終わった後にも全部まとめて分析できることで、アセッサーの業務短縮という面でも非常に重宝すると思います。

石角:実際に導入してどのくらい業務短縮がされると思いますか。

今井:今までは、インタビュー1人当たりのレポートを作成するのに文字起こしとか含めて2〜3時間くらいかけていました。これがAIの導入によりかなり省人化できるようになると思います。

石角:それは非常に作った甲斐がありますね。
この高齢者支援の分野についてですが、今後どの程度の社会的な意義を考えておりますか

森:世の中に影響を与えられるくらいにはなればいいなと考えておりますが、具体的な数字はまだ考えておりません。世の中の誰しもが、健康状態にかかわらず、活き活きと暮らしていけるような社会、地域共生社会のプラットフォームとしてお寺があるとか、公共の施設があるとか、それを活用するのを我々がサポートしていくようになったらいいなと思っております。

人間とAIの相乗効果でWin Winの関係に

石角:実際に介護業界の人にとってもこの商品はほんとに欲しいといわれるものになっているのですよね?

森:そうなんです。実は介護業界の人にそういうデータがなかなか届いていなかったのが問題で、情報が少ない中では一律のサービスを提供するしかありません。たとえ情報があったとしてもメモ取り程度で、その共有化ができておらず、属人的にノウハウがたまっていくだけの形でした。

今井:課題としては一回家に帰ってしまえばその後しばらくの状況が何もわからない。例えば飲んでいる薬が変わったなど大事な情報がわからなくなってしまう。

石角:こういう定性的な情報、自分にとって大事なことは必ずしも聞き出せるわけではないですもんね。

森:何を大事にしてますか?と直接聞いても答えてくれないことも多いのですよね。

石角:案外一番大事なことって言いたがらないケースも大有りだから過去のパターンを蓄積して類似性を見つけていくというのは非常に効果があることだと思います。

森:引っかかっていることはしゃべらないこともあると思います。
例えば過去に旦那さんの話を全然しない人がいたんですけど、あとから聞いたら大きな問題を抱えていたと。支援の段階でもそういったところにどうやって踏み込んでいくか、本当に活き活きと生きていくためには寄り添ってあげる必要もあるのではないかと思います。

石角:このツールを使っていけば、アセッサーもより良いアセッサーになれますよね。

森:非常にトレーニングされていくと思います。

今井:AIもアセッサーによって成長していくから本当にwinwinの相乗効果が期待できますね。

石角:本日は貴重なお時間ありがとうございました。

今井、森:ありがとうございました。

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