石角:まず初めに人総研の概要とTAL(タル)について教えてください。
松﨑:人総研では主に適性検査を販売しており、その中の1つがTALです。TALの大きな特徴は、その検査が能力や学力を測るためのものではなく、その人が元から持っている特性を抽出するための検査である点です。ストレスやメンタルに関する指標を把握することで、採用、人材配置やチーム作りに活かすことができます。
石角:パロアルトインサイトのクライアントでもTALを使っているところがあり、「1度使うとその良さがわかる」とすごく評判が良いですよ。リピート率は高いのですか?
松﨑:ありがとうございます。何とかお客様に満足いただけるよう努めているところで、これまで約3,000社、リピート率は9割近くになります。
石角:9割!
松﨑:はい。ありがたいことに利用されているお客さまからのご紹介も増えており、全然違う業種のお客さまやグループ会社のお客さまなど、どんどん裾野が広がっています。
石角:世の中に適性検査は色々なものがあると思うのですが、その中でTALが高く評価されている理由を教えてください。
松﨑:そうですね、1番大きいのが受検者負担も少ない特性抽出法ではないでしょうか。TALにおいては、受検者の負担を減らすため、選択式の問題数を36問まで減らしています。またそれを補完するために、図形を使った『アイコン検査』と呼ばれるものを採用しています。
アイコン検査は図形などのアイコンをWeb画面上に配置するもので、回答するのではなく”表現してもらう”ことで、人間力を把握します。選択式検査とアイコン検査、この2つを組み合わせた適性検査がTALなんです。
石角:最近私たちが組織心理学を学ぶ過程で論文などを読んでいると、『JD-Rモデル』が多く出てくるんですね。JD(ジョブ・デマンド)は仕事の要求度、R(リソース)は資源を指します。
仕事の要求度が高く、資源が少ない場合、社員はストレスを感じて燃え尽き症候群になりやすいです。逆に仕事の要求度が高くても、仕事や個人の資源が身近に整っていれば、仕事への熱意が向上してエンゲージメントが高まります。
ここですごくTALと関係していると思えるのが『個人の資源(心理的資本)』です。
例えば、自己効力感、楽観性、レジリエンス、希望などを個人が持っている場合、”個人の資源がある”ということになります。TALは、その重要な『個人の資源』を計測しているように思うのですがいかがでしょうか。
西岡:石角さんがご指摘されたように、まさしくTALは『個人の資源』の偏差を見るためのシステムに近いです。
TALは基本的に、個人の資源に対して『普通と比べてどれだけ離れているか』『隔たりがあったか』を見ます。そのためには従来型の文章形式での質問では探りきれない部分もあったので、先ほどの話にあったようにアイコンを活用した検査も考案しました。
また選択問題においても、選択肢から1つの回答を選ぶだけではなく、2つの回答を選択できるようにしています。2個目の選択肢を選ぶ過程において人間の葛藤が関わってくるため、そこで人間性を見ることができるのです。
石角:やはりアイコンがTALの強みや大きな差別化要因になっているんですね。受検者の深層心理や、根本的に持って生まれた強みをいかに抽出するかということにフォーカスしたテストだと感じます。
石角:近年、経団連が2021年以降の就活ルール廃止を発表しました。新卒の一括採用についても見直す動きがある中で、TALに求められるものが変わってきたということはありますか?
松﨑:年間を通していつでも問い合わせが来るようになってきています。採用に絡むインターンシップ生や中途採用に対してのニーズも増えていますね。
また最近だと、新型コロナウイルスの影響でWEBを通じてのビデオ面接を行う企業が増えています。ビデオ面接の場合、受検者の特徴が捉えきれず、不安を感じている企業も多いようです。対面を問わず受検者の特徴をつかむことができるTALは、その点においても貢献できる部分があると思いますね。
石角:なるほど。私がパロアルトインサイトで感じている傾向は、50代以上の方の応募が増えていることなんですね。中には人生100年時代を見据えて、それまでとまったく違う職種でチャレンジしたいという意欲を持たれている方もいます。本当に素晴らしいことだと思います。
でも自覚的に行動に移せる人がいる一方で、気づけない人はなかなか行動に移せません。TALがそういう人たちに羅針盤のようなものを提供できたら、とても価値があるのではと思いました。パロアルトインサイトと一緒に取り組んでいく中で、TALの持っているデータやAIポテンシャルを今後どのように活かしたいとお考えですか。
松﨑:まずはお客さまニーズの多様化、そこに素早く対応したいと考えています。当社では「モジュール化」と言っていますが、AIを活用することで隠れた資産を見つけ出し、お客さまへプラスアルファの価値を提供できると考えています。そのため、多様化するお客様の声は、課題発見だけでなく解決のヒントも与えてくれ、ますます貴重なものと感じています。
また、今はBtoBだけですが、例えば色々な年齢の方や、言語に関係なく日本人以外の方も受けられるようになるかもしれません。
石角:アイコンは文字と違ってポピュレーションに依存しないので、とても可能性があると思いますね。
石角:私たちパロアルトインサイトのクライアントと話していると、人事関係の経営課題で出てくる大きな問題は社員の休職・退職についてが多いです。その点について、今後TALで取り組んでいきたいと考えていることはありますか。
松﨑:人総研でも休職や退職を減らして社員を活躍させたいというご相談をいただきます。現在は、その方の特性やモチベーション、注意すべき部分をとらえることがメインになっていますが、そこから1歩踏み出したアドバイス提供を考えています。長谷川さんにデータサイエンティストの要件について教えていただいたので、そういった新しい要素もTALに反映して組織全体の活性化に繋がるお手伝いをしていきたいですね。
石角:データサイエンティストの要件とはどのようなものなのでしょうか。
長谷川:データサイエンティストの要件についても、大事なことは「個人の資源」にフォーカスすることだと思っています。資質としてどんな人間がデータサイエンティストに向いているかを考えて問題を作るべきです。
例えばデータを貪欲に取りにいけるか、アナリティカルな考え方をするのが好きかどうかなど、コミュニケーション能力、説明能力などを試験で抽出できるようにすべきですね。
石角:最後に、他の同じような経営者に対して、AI活用や新規商品開発に関してアドバイスがあればお聞かせください。AI人材や優秀なデータサイエンティストが周りにいない場合、どうすべきでしょうか。
松﨑:まずは『自社を知ること』から始めるべきだと思います。大手の企業であればすべて自分たちでできてしまうかもしれませんが、当社のような規模だとなかなか難しいです。ですので、お客様はじめ社内外の声を集め、自分たちは何が得意で、何ができないのかをしっかりと考えるべきだと思います。その結果として、AI活用などの解決策を探していく流れになるのではないでしょうか。
石角:弱みを補完するためにAI導入するのか、強みを強化するためにAI導入するのかでも、内容はかなり違ってきますよね。当社ができることで、TALのネクストステージへのお手伝いができたらと思っています。本日はどうもありがとうございました。