パロアルトインサイト/ PALO ALTO INSIGHT, LLC.

【石角友愛】
クチコミと性格テストを活用するAI適職マッチングへ2020/12/15

オープンワーク株式会社
代表取締役社長
大澤陽樹
パロアルトインサイト
CEO・AIビジネスデザイナー
石角友愛
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クチコミと性格テストを活用するAI適職マッチングへ

就職・転職マッチングにまつわる4つの課題

大澤 私たちOpenWorkは、「入社するまでどういう会社かわからない」という情報の非対称性をクチコミによって解決することを目指してスタートしました。

広告費はあまりかけず、いわゆるネットワーク効果と言われる「クチコミの読み手と書き手が一緒で、ユーザーが増えれば増えるほどプラットフォーム自体の価値が高まる」というモデルです。

石角 海外ではわりと普及しているモデルですね。私もアメリカでの転職活動では似たようなサイトを使っていました。

大澤 現在、ユーザー数が390万人、クチコミが1030万件超集まっています。クチコミの審査にも一部人工知能を活用しており、国内では最大級のデータ量・質を誇る社員クチコミサイトです。

石角 私が代表を務めるAIビジネスデザインカンパニー・パロアルトインサイトでも、人事系のAI開発人事系のAI支援プロジェクトを多く手がけていますが、業界問わず、人事部共通の悩みは「離職」です。もっと言えば、単に優秀であるとか、離職しないというのではなく、自社に合う、自社の強みを理解している人に長く勤めてもらいたい。

それだけクチコミが集まっていると、クチコミを参考に企業の人事部が方針を見直すこともありそうですね。

大澤 ミスマッチを減らすため、すでに多くの企業にご利用いただいています。

求職者への求人レコメンデーションなどは機械学習も活用しています。さらに、既存サービスをパワーアップするべく、ブラッシュアップをかけているのがOpenWork独自の適職マッチングです。

1,000万件を超える社員クチコミと性格テストを活用して、人工知能によってユーザーの働きがいを極大化する適職探しができるよう開発を進めています。

従来の就職・転職マッチングには4つの課題がありました。まずは企業情報が不足していること。よく「社名を隠すとみんな同じような事を言っている」「ロゴだけ入れ替えたら同じだ」とも揶揄されます。

本人の性格や特性に合った企業がレコメンドされる仕組みだ。

石角 たしかに、「みんながイキイキ働ける会社です」といったフレーズはよく聞きます。人事としてはどうしても綺麗事を言いたくなるからでしょうね。

大澤 2つ目は企業側でなく、就職や転職する本人についての情報不足です。多くの人が職歴やスキルや年収しか公開していない。

それから、求人サイトではよく自己診断テストのようなものがありますが、モノによっては占いレベルでしかありません。

たとえば「チャレンジすることは好きですか?」といった質問がよくあります。でも、誰しもある程度はチャレンジするし、人間ってそんなに簡単に要素分解できるものじゃないですよね。

石角 応募者に関する個人のデータの不足はまったくそのとおりで、本人の性格や、どこで仕事をしてるのか、ハッピーなのかそうじゃないのか。私も、いろいろなデータがもっとオープンになったほうがいいと思います。

大澤 3つ目は、人材紹介サービスの質のバラツキ。これまでの経験や感覚が生きる仕事のため、エージェントのレベルはピンきりです。凄腕エージェントに担当してもらえるとラッキーですし、そうでないと酷い目に遭うこともあります。

結論として、それらを解決するためには、「Aという人がB社に入って本当に働きがいが極大化したか」という「結果のデータ」が欠かせないということになりました。

「あなたの職歴・年収・希望職種と似た人がB社で働いています」と言われて入社しても、その人が本当に満足度高く働いているかどうかまではどこのマッチングサイトも追えていなかった。これまでは言いっぱなしで終わっていたわけです。

ミスマッチをなくすカギは「満足度」

石角 でも、実際に満足度を図るといっても難しいですよね。どんなことに満足を感じるかは人によってバラバラです。

大澤 そこでOpenWorkでは、eNPS(Employee Net Promoter Score)を利用することにしました。「あなたはこの企業に就職・転職することを親しい友人や家族にどの程度すすめたいと思いますか?」という質問に0~10点で答えていただき、集計した指標です。

これならば、刺激的な仕事を働きがいにしている人、ワークライフバランス重視の人、どんなタイプの人であってもデータが取れるし、タイプ別でどのぐらい満足してるかも算出することができます。

eNPSによって、このようなランキングも算出できる。

石角 個人に紐づく満足度を指標にするのはとても画期的ですね。

従来のマッチングで使われていた指標、たとえば内定辞退率などは表面的な指標に過ぎません。内定を付与されたからといって、本当に就職するかどうかわからないし、就職しても1年後には辞めているかもしれない。

大澤 これまでも可視化できていた、職歴やスキルや本人の希望・価値観といったデータでも、10候補くらいまでは絞れていました。

ただ、ラストワンマイルとも呼ぶべき、自分が求めている働き方や価値観とその会社が本当に合っているかどうか、その職種の人が本当にその会社で幸せになっているかどうかがわからなかった。

私たちが提供する「Open Finder」というテストを受けると、まだプロトタイプではありますが、本人がどういったタイプなのか、そのタイプの人にとってeNPSが高く出やすい企業がどこなのか、が示されるようになっています。

石角 従来の適性診断というと、アメリカでは心理学に基づいたものが多かったのですが、最近になって、AIを使った非常にユニークな適性診断も出てきています。たとえば「Scoutible」。一言でいえばRPGで、ゲーム中の選択によって自己分析ができるというものです。

「Scoutible」や「Open Finder」のように、より精度の高い診断で、自分の強みを知る機会が得られるようになったのは、個人にとっても非常に良いことですね。

ところで、個人の満足度の追跡はできるんでしょうか。一度、仕事に満足してしまえば、他の人のクチコミを見たいという欲もなくなって、自分が書き込むこともなくなりそうですが。

大澤 たしかに、就職・転職を終えると見なくなる方もいますが、今の会社に満足していても、「次のキャリアを探さなくていいのかな」と考える方もいます。そうした方は、定期的に自分の履歴書を更新したり、クチコミを書いたりと、継続してご利用されていますね。

ちなみに、大手やメガベンチャーで働いている方は、意外に自社のクチコミをチェックしていますよ。自分の年収が適正値なのか、他の職種はどんなことをやってるのかというのは、会社の中にいても知る機会がなかなかありませんから。

石角 他社との比較をきっかけに、自分がとても恵まれた場所にいたことに気づいて、今まで以上に仕事に打ち込む人もいそうですね。今後、eNPSのデータが蓄積されるにつれて、より精度が上がっていく期待もできます。

HR系事業では、求人広告を複数の媒体に最適化したり、面接を簡素化したりといったプロダクトが多い。お金を出すのが企業側ということもあって、最終的には企業側に寄り添ったサービスになりがちです。Open Workの場合、まず個人に寄り添っているのがすばらしいですね。

「自分のキャリアは自分で決める」を当たり前に

大澤 おかげさまで、OpenWorkのクチコミ積極的に活用していきたいという企業も増えています。

どんな企業も、「より定着率が高い会社と自社で何が違うのか」「どういうクチコミの特徴があるのか」を分析したい。ただ、国内にはデータサイエンティストがまだまだ少なく、ピープルアナリティクスチームを持てる企業は稀です。

ですから、データサイエンティストがいなくても、自社の強みや弱みがわかるようなレポートサービスを作るために動きはじめています。これがなかなか難しいのですが、数社と共同研究中です。

石角 あらゆるクチコミ情報が人工知能で処理できるとは限りません。だから、クチコミが溢れているからといって、必ずしも優れたマッチングができるわけではない。

技術的な問題をクリアしていくために、データカスタマーとしてデータを提供し、フィードバックしてくれる企業と組むのは、いいやり方だと思います。

当社のAIプロジェクトの事例でいうと、ホリプロさんと行っている「芸能人の口コミなどに関する感情分析」と近いかもしれませんね。芸能人はSNS上に、ポジティブなもの、ネガティブなもの、膨大なクチコミが出ます。

「このタレントがこういう発言をすると、こういう反応があるんだ」と分析していくことで、どういう仕事が合っているかという、タレントの強みも見えてきます。

大澤 今後、さらにデータを集めていくことで、より細分化したマッチングができるようにしていきたいと考えています。

たとえば「データサイエンティストで、Open FinderタイプBだと、こういう企業の求人が望ましい」というように、職種ごとに使えるようにしたり、企業単位ではなく、部署単位でのマッチングですね。

ひとつの企業でも、新規事業の立ち上げをしている部署と既存事業でしっかり稼いでいる部署では、求める人材や価値観が大きく違いますから。

石角 それを可能にするためには、本当に膨大なデータが必要になりますね。

同じ企業であっても、部署によってカラーは大きく異なるため、求める人材や価値観も異なる。
iStock.com/JohnnyGreig

大澤 はい。ただ、転職や就職といった分野が難しいのは、データを集める機会が少ないことです。たとえばレストランのクチコミサイトだと、毎日のように外食をして書き込む人もいますが、さすがにそんな頻度で転職する人はいません。

石角 1人の人間の追跡にどうしても時間がかかるぶん、1人ではなく100人、100人よりも1000人、と精度を高めるためには人数を増やすしかないですよね。

OpenWorkのようなサービスには本当に頑張ってもらいたいと思っています。

私自身、アメリカで転職活動をしていた20代後半から30代前半の時期、自分の強みや力を発揮できる場所、職種、働き方など、本当は把握しておくべきことを把握しないままに動き出したために、かなり苦労した記憶があります。

大澤 まずはできるだけ多くの方にOpen Finderを受けてもらい、自分の性格や価値観を知っていただくのが第一歩です。ただ、私たちとしては、知ったうえで、「自分で選ぶ」というプロセスを経験してもらうことこそ、OpenWorkの存在価値だと考えています。

「人工知能が考えてくれるから自分は何もしなくていい」というのはよくある誤解です。人工知能には意思決定のサポートまでしかできない。

企業にキャリアを預ける時代はもはや終わりました。自分が選んだ人生を自分の足で歩いていくために、常に自分の情報をアップデートしながら、人工知能の力も借りてステップアップしていく。そんな人が増えるためのお手伝いができればと思っています。

石角 そうですね。自分で選ぶためには自分を知ることがすごく大事だし、自分が選んできたという自負があれば、ちょっとした困難なら乗り越えて、今の仕事を長く続けようとも思える。結果的に人生の満足度も高くなるはずです。

データが価値を持つ時代では、個人がデータをうまく活用するか、自分のデータを受動的に使われるだけかで、大きな差がつきます。自分で能動的にデータを開示して、自分にとってよりよいキャリアを手に入れる。そういった仕事の探し方が当たり前の時代が、そこまで近づいてきているのかもしれませんね。

執筆:唐仁原俊博
編集:大高志帆
写真:小池彩子、森カズシゲ
デザイン:岩城ユリエ

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