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パロアルトインサイト/PALO ALTO INSIGHT, LLC. > ブログ > NeurIPS 2020
NeurIPS 2020
2020/12/07 ブログ 
by 辻 智範 

こんにちは。パロアルトインサイト、データサイエンティストの辻です。今年のNeurIPSはオンライン上での開催となりプレゼンテーションが事前に用意され公開期間中いつでも見れるようになりました。研究者同士の対面の場が限られてしまうという負の側面もありますが、私のような今まで直接足を運ぶことができなかった者にも情報が公開され、いつでもどこでも参加できるようになったことはコロナ禍がもたらした非常に大きな効果の一つだと実感しています。今回はExpo Workshop/Invited Talk からいくつか今後のビジネスのトレンドに関わる内容についてピックアップしてみました。

(NeurIPS のスケジュール画面。世界各国から参加者がいるため、自国のタイムゾーンに合わせてスケジュールを閲覧してウェブで参加できることが便利です)

「Causal AI」 とはデータの相関関係ではなく因果関係に重きを置いた近年注目されている機械学習の分野で、ワークショップが開かれるほど大きな課題になっています。これまでの機械学習は相関関数を基に目的関数を最適化し、タスクを処理するため時には間違った判断をしてしまいます。例えばテレビを見る猫がテレビのバイクに触った瞬間に偶然バイクが倒れるのようなビデオを学習すると、猫がバイクを倒したと判断してしまいます。実際には偶然に起こった現象なのですが、これを適切に判断するのは現状のモデルでは非常に困難なタスクになります。このような問題を解決するための研究では、単純に相関関係による目的関数の最適化ではなく、シミュレーションテストをして各データを精査し因果関係のあるデータのみを選択する手法が用いられます。これまでの手法に比べ、本番環境下では精度が良くより少ないデータで学ぶことができるのが特徴ですが、一方で学習プロセスが複雑化し多くのパラメータを扱えないことがまだ課題となっています。これまでニューラルネットワークは様々なビジネスの課題を解決してきましたが、それに加えより因果関係を学習する手法が日々研究されています。

スピーカーのCharles Isbell教授とMichale Littman教授は私が大学院で受講した機械学習と強化学習クラスの教授でもあり、冗談を混ぜたユニークな講座を行うことで有名です。難しい内容の話も楽しく頭に入りやすいことで非常に人気のあるクラスでした。今回は機械学習の学習結果から起こり得る様々なバイアスの影響力に関する内容で、今後学習データそのもの取扱い方を含め学習プロセスを設計することの重要性と機械学習専門家が担うべき役割について講義していました。この課題は非常にビジネスの場でも重要で、いかに性能が良いモデルを使用して学習したとしてもデータそのもののバイアスにより本来と目的と違う結果を学習してしまいます。特に人事系や個人認証系のデータを扱う場合はこのバイアスにより不公平が生じてしまう可能性があり、バイアスを理解し正しい取扱をしてさらにそれを説明をできるようにすることがビジネスにおいても非常に大切です。

ニューラルネットワークはその汎用性と適応性の高さが長所で現在様々なエリアで使用されていますが、一方でデータをより多く必要とすることと例外問題への対応の難しさなどが短所として挙げられています。このワークショップの目的はニューラルネットワークと組み合わせ問題や最適化のアルゴリズムを足し合わせることでより少ないデータで効率よくかつ透明性の高いモデルを確立しようとする試みです。またアルゴリズムの組み込みにより最適化のプロセスをより効率化させより解釈のしやすいモデルへの発展を目指します。ビジネスでもデータをより多く必要とするケースによく直面します。特に難しいのは学習データを自前で作成しなければいけない時で作業量の多さに加え、ラベルや色付け作業の難易度が高いものは作業の慣れが必要です。また例外問題に関してデータを集めることが難しいことも少なくなくニューラルネットワークとアルゴリズムのハイブリッドモデルができることで課題が改善されることに期待します。

これらのすべてのセッションで言えることは、これまでのニューラルネットワークでは表現できなかった「説明可能なAI」に関しての言及があることです。アプローチや目的は異なっていてもモデルがどのように学習をし判断基準を定めているのかを理解し、専門家が説明できるようになるということはビジネスでも共通の議題です。まだまだ機械学習分野には課題が多くあり、今後の進展が楽しみです。

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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