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マネー現代 寄稿記事 掲載/パタゴニアはなぜ「サーモン」を製造販売するのか?そこからわかる「DXの本質」

2021/06/14 メディア掲載実績 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

パタゴニアはなぜ「サーモン」を製造販売するのか?そこからわかる「DXの本質」

本当の意味でのDXとは?

DXとは、ツールの導入を行うといった局所的なIT導入のことではなく、デジタル技術を採用した根本的なビジネスモデルの変換を指す。そもそもトランスフォーメーションという言葉自体が変身、変革という意味である。

このことをわかりやすく説明しているのが、キャズム理論を提唱したことで知られるジェフリー・ムーアが執筆した『Dealing with Darwin』(邦訳『ライフスタイル・イノベーション』翔泳社、2006年)という書籍だ。

この書籍の中で、ムーアは、「会社は、コアとコンテクストに分けて考えなくてはならない」と書いている。

たとえば、マイケル・ジョーダンにとっての「コア」は、バスケットボールである。

一方、「コンテクスト」は、マーケティングやプロモーション、商品化などを指す。「エア・ジョーダン」のような商品はコンテクストだし、最近ではネットフリックスで「ラストダンス」という、マイケル・ジョーダンのドキュメンタリーが制作されたが、これもやはりコンテクストだ。

マイケル・ジョーダンの周辺にはたくさんのコンテクストがあるのだが、彼のコアは、どこまでいってもバスケットボールである。バスケットボールがなければ、コンテクストのマーケティングビジネスも、商品プロモーションも成立しない。

これを、会社に置きかえてみよう。

会社にとって本当の意味でのDXとは、このコアの部分をデジタライズすることを指す(シリコンバレーのAIカンパニーで、2020年に上場したシースリーエーアイの創業者でありビリオネアでもあるトーマス・シーベルは、これを「Digitalizing core is a true transformation」と表現している)。

マイケル・ジョーダンにとってのバスケットボールにあたるものをデジタル化するのが、本当の意味でのトランスフォーメーションだというのだ。

私が、「DXとは、オペレーションをデジタル化することや、デジタルツールを導入することではない」とお伝えする理由をわかっていただけただろうか。

あなたの会社のコアは何か?

それでは、マイケル・ジョーダンにとってのバスケットボールは、あなたの会社にとっての何にあたるだろうか。

たとえば自動車メーカーにとって、今の「コア」は「自動車を製造すること」だろう。しかし、10年後、20年後にモビリティ革命が起こったとき、その会社のコアは、本当に「自動車を製造すること」だろうか。

10年後には、その会社にとってのコアは「モノや人を移動させること」になっているかもしれない。

このように「会社にとってのコア」を再定義し、それをデジタル化することが、DXの本質である。

もし、「会社にとってのコア」を「自動車を製造すること」だと定義してしまうと、その会社におけるDXは、「自動車を製造するプロセスをデジタル化すること」になる。すると、RPA(製造工程の自動化)や、かんばん方式(工程間の無駄を減らす手法)をどうデジタル化するかといった発想になっていくだろう。

しかし、自動運転が当たり前になり、世界中でスマートシティ化が進む時代に自分たちのコアは何かと考えると、何をデジタライズしなくてはならないかということも、再定義できるはずだ。

最近の例でいうと、私が注目している会社にアウトドアギアやキャンプグッズを製造販売するパタゴニアがある。

日本でもアウトドア好きな人には有名なブランドだが、この会社のコアを「アウトドアギア製造販売」としてしまうと、会社の全体像の半分しか見ていないことになる。

パタゴニアで今注目されているのが「パタゴニアプロビジョン」という食品部門だ。キャンプでよく食べられるナッツミックスやエネルギーバーだけではなく、サーモンやムール貝、豆なども製造販売しているのがこの部門である。

ここで読者の皆さんは、「アウトドアギアの会社がなぜサーモンを?」と思うかもしれない。しかし、ここにはアウトドアギアとフードをつなぐ重要な共通項がある。

実はパタゴニアのコアは「サステナブルなサプライチェーンマネジメントに基づく製造販売」なのである。

コアの再定義から始めよう

同社のアウトドアギア部門では、「サプライチェーン環境責任プログラム」を設けている。このプログラムの目的は、パタゴニアの製品および材料の製造による環境への影響を測定および削減することだ。

パタゴニアは世界中のサプライヤー施設で環境責任プログラムを実施し、環境管理システム、化学物質、水使用、水排出、エネルギー使用、温室効果ガス(GHG)、その他の大気排出および廃棄物を含む幅広い影響領域をカバーしている。この理念をフードサプライチェーンの管理にも導入して、環境に優しい食品を消費者へ届けているというわけだ。

パタゴニアのファウンダーであるイヴォン・シュイナードはウェブサイトでフードビジネスに参入する理由をこのように述べている(著者訳出)。

私たちは、食品を通じて新たな未来に向けた一歩を踏み出したいのです。新たな未来とは、利益だけを求めて環境を枯渇させるような方法ではなく、むしろ地球を蘇らせるような環境に優しい方法で栽培された風味豊かで栄養価の高い食品で満たされた未来です。

そしてそれは、食品が「健全な土壌」「動物福祉」「農業へ従事する人々」を守る方法で生産されていることを保証する「環境再生型オーガニック認証(ROC:Regenerative Organic Certification)」が広く採用される未来でもあります。

要するに、私たちが目指すフードビジネスは、環境問題を引き起こすものではなく、むしろ環境問題解決の一端を担うものなのです。

パタゴニアの例からわかるように、コア=事業とは限らない。

その事業を実現し成功させるのに必要な要素を因数分解したときに、会社の強みになっているもの。それこそがコアであり、そのコア部分にデジタライゼーションを起こすことで生まれる変革こそがDXなのである。

DXのスタートラインは、この「コアの再定義」と「コアのデジタル化」にある。

ちなみに、フォードのCEOは、このDX化を「survival of the fittest」と表現している。ダーウィンが提唱した「適者生存」である。

「コアの再定義」と「コアのデジタル化」を実行することによって、新しい時代に生き残る“適者”になることができるというわけだ。

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