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ダイヤモンドオンライン 記事掲載/世界のGEが40億ドル投資したDX化が失敗、CEO直下のプロジェクトがぶつかった壁

2021/06/17 メディア掲載実績 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

世界のGEが40億ドル投資したDX化が失敗、CEO直下のプロジェクトがぶつかった壁

Photo:Smith Collection/Gado/gettyimages

GEのCEO直下DXプロジェクトはなぜ失敗したか

世界的なメーカーであるGE(米ゼネラルエレクトリック)が40億ドルも投資をした組織「GEデジタル」をご存じだろうか。本社のあるボストンから5000キロも離れたシリコンバレー郊外にオフィスを持ち、主にIT業界から約5500人の社員を採用してつくったDX実行部隊だ。

残念ながら、このGEデジタルは2019年にGE本体と切り離され、主事業に注力することを理由にスピンオフをすることを発表した。スピンオフの発表は、GEがGEデジタルの優先順位を下げたことを意味しており「急速に組織を変化させようと試みた結果の失敗例」として知られている。

GEデジタルは、プレディクス(Predix)というIoTプラットフォームを開発して商品化することを目的としていた。

GEの主要ビジネスには産業用機器などの製造販売が含まれている。そのハードウェア にセンサーなどをつけてデータを収集し、解析やAIによる予測モデルなどを顧客へ提供するIoTデータのOSをつくろうというビジョンだった。

マイクロソフトがウィンドウズでパソコンのOSという(ほぼ)独占的立場を築いたように、IoTプラットフォームにおけるOSのポジションを狙えたら、2025年までに11.1兆ドルの売上増加の機会があるとの見込みもあった。

OSを作るためにはさまざまIoTデバイスから吸い上げるデータの平準化を行い、解析レイヤーでの圧倒的シェアをとる必要があった。

しかし、GEは伝統的にハードウェアが強い会社だ。GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)やSAP、IBMなどの大手IT企業と真っ向から勝負するため、当時のCEOだったジェフ・イメルトは、会社を根本的にデジタライゼーションする必要があった。

改革を進めるも社内で軋轢が生まれた理由

ここからは、このプロジェクトを時系列で追っていく。

プレディクスのゴールは「イノベーションプラットフォームのOSとして、インダストリー系インターネットのアプリ開発をするプログラマー等に必要なサービスを提供すること」だった。プレディクスの開発と外販化の成功のためには、まず組織内でのデジタルケーパビリティを強化する必要があった。

そこでGEは、2011年には社内の情報システム部と差別化を図るため元シスコの経営幹部であったビル・ルーを迎え入れ、2015年には正式な事業部としてGEデジタルが誕生した。

プレディクスの開発、クライアントごとに必要とされるカスタマイズした解析機能の追加、営業、マーケティング、法務など、プレディクスを事業化するためのすべての機能がGEデジタルに設けられた。

そのため、先に述べたように、2012年から2016年にかけての4年間に5500人ほどの人材をシリコンバレーなどのIT業界から採用したのだ。

このプロジェクトに重要なステップは、プレディクスをGEのさまざまな事業部に使ってもらいデータを収集し、AI機能を拡充し改善することだった。

しかし、蓋を開けてみれば、社内からの抵抗、営業部隊の再研修、ハードウェアのみを使うことに慣れていた顧客のIoTプラットフォームに対する期待値の低さ、といった悪条件がそろっていた。特に、社内からの抵抗は大きな問題だった。

GEではそれぞれの事業部が情報システム部門を持っており、それぞれのビジネスを維持するためのレガシーシステムと、それに関与するベンダーとの長い関係性があった。しかも、レガシーシステムには十分な機能があったため、プレディクスに移行する理由が見当たらなかったのだ。だからプレディクスに不十分な機能しかないと判明したときは、中間管理職がこぞって抵抗を示した。

それに対してGEデジタルの社員は外からきたIT畑の人が多く、GE社内における人脈や社内政治力が欠如していた。それゆえに事業部にいる古株の社員を説得する力がなかった。

GEデジタルが失敗したのは社内の軋轢があったことだけが理由ではないだろう。

しかし、外から連れてきたITチームが事業部を深く理解し、共通言語を使い、すり合わせをしながらDXを行うことが、いかに大変なことかをご理解いただけたのではないだろうか。

フランスのエネルギカンパニー、エンジー社の事例

ここで、社内に強い社長直下のチーム(COEチームと呼ばれる。センターオブエクセレンスの略)をつくることの有効性を知ることができる事例をご紹介したい。フランスの大手エネルギー会社、エンジーの事例だ。

エンジーは、従業員15万人、70カ国で事業展開する企業だ。2018年の収益は600億ユーロ。

この会社は、2016年から2019年の間、COEチームに毎年15億ユーロをDXの予算に与えたという。会社にとって重要なDX推進プロジェクトを4〜5個にしぼりこんで、それぞれの課題解決に対するアプリケーションを28個つくり、100人以上の社員をAIトレーナーとして再教育したといわれている。

具体的には、資産のメンテナンス期間を予測して、ガス発電を最適化したり、カスタマーサービスをオンライン化したりするようなプロジェクトである。また、スマートシティの実現を見越した、地域ごとの効率的な冷暖房の計測、交通管制や廃棄物管理、セキュリティなどのプロジェクトも進んでいる。

先ほどのGEのケースと違うのは、

(1) COEチームを社内から構築していったこと
(2) 社員のAIリテラシーを挙げるための教育を行うことで心理的抵抗を減らしたこと
(3) 事業部が抱える具体的な課題解決のためのアプリケーションという形で動いたこと

などがあげられる。そしてこれらが、エンジーのDX化成功の秘訣だったろう。

また、ユースケースに合わせてDXを推進していること、しかもCOEでチーム編成し予算を配分したことが、成功のポイントだろう。

日本のDXプロジェクトが頓挫したり、期待した成果をあげられない背景には、人材配置と予算の問題がからんでいることが多い。例えば経営企画部で予算が200万円しかないとなると、200万円で何ができるかという話になって、短期的な考え方になってしまう。予算内で考えると、間に合わせのツール導入で終了となるケースもよくある。また、情報を集めて見積もりをとることだけが仕事になってしまっていることも多い。

外部協力会社の情報収集は、DXの全体像の1割にもみたないくらいと考え、実際にユースケースを絞ってプロジェクトを動かすところまで進めないと、DXの意味がない。そのためには、社内の事業部のオペレーションと既存システムを深く理解すること、歩み寄ること、共感することなどが大事なのではないか。エンジーのように、社長直下の組織をつくり、全社プロジェクトとして予算を立てて、DX推進する企業の先例は、日本の、とくに大企業には参考になるだろう。

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