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セルフレジの課題とウォルマートの万引き防止対策事例をご紹介

2021/08/06 メディア掲載実績 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

セルフレジ万引きが深刻化、米国では5人に1人が「盗んだことある」──対策法はあるのか?

近年、日本でも見かけることが多くなったセルフレジ。米国では特に浸透しており、9割の米国人がセルフレジを利用したことがあると答えています

セルフレジにはさまざまな利点があります。小売店舗側からすると、人件費の削減や生産性の向上などにつながります。

消費者側からすると、会計の待ち時間を短縮できたり、コロナ禍では人との物理的接触が最小限に抑えられたりします。特に、米国ではレジ袋に商品をつめる作業は通常店員が行いますが、コロナ禍でその作業を自分で行いたいと考える人も多いようです。

私自身、スーパーで商品を購入するときは、よほどのことがない限りセルフレジを選んでいます。

セルフレジにより、万引きなどが増加している(提供:ゲッティイメージズ)

このように多くの利点があるセルフレジですが、その一方で万引きが増えたり、故意でなくとも顧客が未決済の商品をレジ袋に入れて持って帰ってしまったりすることで商品の「ロス」が生まれていることをご存じでしょうか。

デジタルクーポンを提供するVoucherCodesProの調査によると、米国の買い物客の約5人に1人がセルフレジの小売店で何らかの商品を盗んだことがあると答えています。専門家によると、そのような盗難は過去4年間で倍増しているとのことです。

また、英国で行われた100万件ものセルフレジ取引の調査の結果、セルフレジの売店で発生した損失は在庫の約4%にものぼりました。これは有人レジの場合の1.47%と比べてとても大きな数字です。

バナナトリックとスキャンスキッピング

セルフレジによる万引きにはさまざまな手法があります。その一つが「バナナトリック」と呼ばれるものです。

米国のセルフレジでは、生鮮食品を購入する場合、バーコードがついていないためスキャンできません。その代わりはかりが搭載されているセルフレジに商品を置き、タブレット画面から商品を選びます。

例えばオーガニックのケールを1束買う際は、タブレット画面から、「オーガニックケール」を選択します。すると、登録済みの1ポンドあたりの値段と実際の重さを計測した値段が表示され、買い物客がOKを押すとその商品がセルフレジに登録されます。

一般的なスーパーのセルフレジ。消費者は商品のバーコードを自分でスキャンし、画面上で商品登録が完了したら左のレジ袋セクションに商品を移動させる。スキャンしていない商品を左側に置くと、センサーが検知し「スキャンしてください」と画面に表示され、それが何回も続くと店員が来るケースが多い(提供:ゲッティイメージズ)

ここで、1ポンドあたりの単価が高い「オーガニックケール」をあえて選ばずに「オーガニックではない普通のケール」を選ぶ人もいれば、もっと悪質なものになると単価が一番安い生鮮食品アイテム(ノンオーガニックのバナナやニンジン)を画面から選択する人が多いのです。

もう一つの万引き手法が「スキャンスキッピング」です。

通常は、セルフレジではスキャンしていない商品が買い物袋エリアに置かれると、重さの差分から問題を検知しています。しかし、そもそも商品をスキャンせず、買い物袋エリアにも置かずにそのままお店から持って出てしまうケースもあるのです。

アパレル商品など万引き防止のタグが付いている商品とは異なり、スーパーの商品はお店から持ち出してもその場での検知が難しいことが背景にあります。

このように増加するセルフレジでの万引きに対応するために、小売店舗はどのような対策を打っているのでしょうか。ウォルマートを例に紹介したいと思います。

ウォルマートの万引き防止対策(1) AI搭載型セルフレジ

ウォルマートでは、スキャンされずにショッピングバッグに入った商品を検知するために、「Missed Scan Detection」と呼ばれるシステムを活用しています。セルフレジと有人レジの両方に、AIを搭載したビジュアルスキャナーとカメラを設置し、AIの機械学習技術を用いてスキャンされていない商品を検知することで、ロスを削減してきたのです。

同社によると、「われわれは、過去3年間で5億ドル以上の投資を行い、店舗や駐車場における犯罪の防止、低減、抑止に努めてきました。店舗やコミュニティーの安全を守るために、人材、プログラム、技術に継続的に投資しています」ということですから、ここ数年でロス抑制などへの取り組みを特に強化していることが伺えます

このような対策をとる小売店舗は増えています。

例えば盗難防止システムの開発を手掛けるStopLift社では、スキャンしていない商品がカートに入っている疑いがあるとき、リアルタイムで店員に知らせる仕組みを提供しています。

セルフレジエリアにカメラを設置し、その情報とPOSデータなどをかけあわせ、AIやコンピュータビジョン技術を駆使して物体検出するのです。スキャナーを通過させずに商品をカゴに入れたり、スキャンされていない商品をショッピングカートに入れたままにしたり、スキャン中にバーコードを隠したりした場合、警告を発して店員に通達するよう作られています。

なお、このStopLift社の技術は、POS大手のNCRに2018年に買収されたため、今後は多くの小売店舗で導入されるようになるかもしれません。

ウォルマートの万引き防止対策(2) レジエリアの抜本的レイアウト変革

ウォルマートは20年、本社があるアーカンソー州にある店舗に新しいレジエリアのレイアウトを実験的に導入したと発表しました

アメリカのスーパーでは、コンベア式のレーンにレジ係が配置されているというレイアウトが何十年もの間定番となっていましたが、この新しいレジエリアではレーンが全て廃止され、とてもシンプルなデザインになりました。

広々としたエリアの端に34台のレジが並べられ、それぞれのレジに付けられたグリーンのランプが従業員や顧客に空きを知らせます。一見すると広いスペースにセルフレジがたくさん並んでいるだけのように見えるこのレイアウトですが、特筆するべきは、全てのレジがオープンになっていることです。実はこれらのレジはセルフサービスではなく、フルサービスのレジなのです。

セルフレジの新しいレイアウト(出展:ウォルマートのWebサイトより)

この新しいレジで、顧客は良い意味で今までとは違う新しい体験をすることになります。

店長が「ここでは、『ホスト』と呼ばれる店員が新しいレジスペースの入り口でお客さまをお迎えし、全てのプロセスをお手伝いします」と述べている通り、顧客がレジエリアに入ると、待機スペースから「ホスト」が出てきて顧客をレジへ誘導するため、顧客は自分で空いているレーンを探す必要もないのです。

ホストは、セルフレジを利用したい顧客にはオープンレジを案内します。反対に、レジ係による会計を希望する顧客に対しては、従来通りのレジ打ちから袋詰めまでの対応を行います。

このような「ホスト」による会計補助作業の狙いについて、ウォルマートU.S.のイノベーション開発担当幹部であるジョン・クレセリアス氏は以下のように述べています。

「本来、個々のレーンにおける会計は単なる作業になりがちですが、このようにホストと顧客の対面型にすることで、そのやりとり自体が顧客と店員との間に関係性を生み出します。われわれは、会計を顧客にとってパーソナルな体験にしたいのです」

このように、顧客体験に大きく影響するレジエリアでのレイアウトと動線を根本からデザインしなおすことで、「ホスト」という新しい役職のレジ担当者が消費者により寄り添った形のサービスを提供できるようになります。

しかし、目的はそれだけではないと考察できます。例えば、レジエリアの入り口を一つに絞ることで、顧客が入り口を必ず通らなければいけなくなるため、店舗内に設置してあるカメラで、消費者のレジエリア内での行動に関する映像を集約しやすくなります。

「ちょっとズルしよう」から生まれてしまうセルフレジの万引き(提供:ゲッティイメージズ)

また、今まで分散していたセルフレジの動線がきれいにまとまることで、店員の目がより行き届きやすくなります。さらに、店員によるヒューマンタッチを打ち出すことで、「ちょっとズルしよう」という意識により発生する万引きも減るかもしれません。

実際に、セルフレジでの万引きの多くが、最初から万引き目的で入店する人によるものではなく、セルフレジでの機械の不具合などをトリガーに、それを言い訳にして「誰も見ていないから少しくらいいいだろう」という出来心によって起こってしまうものだということも調査で分かっています。

その人間心理を理解した上で、店舗内で的確な技術導入を行うと同時に、店員の効果的な配置や役割を検証することが重要だといえるでしょう。

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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