先日、米国人の友人と久しぶりに話していたときのことだ。コロナ禍を受け、シリコンバレーから800キロほど離れた地方に引っ越したという。同時に牧場も購入し、牛や鶏を飼いながら2人の子供を育てるライフスタイルを実現したのだと話していた。
移住に合わせて前の職場を離れ、シリコンバレーの大手IT企業に就職したとも言っていた。そこでリモートワークをしながら、数カ月おきにシリコンバレーに通うという生活を送っているそうだ。
このように、コロナ禍をきっかけにリモートワークが定着したことで、物価が高い場所から引っ越しをする人はアメリカでも増えている。私の友人のように、一家で地方へ移住するようなケースもあれば、都心から少し離れた場所に引っ越しをするケースも多い。
米調査会社モーニング・コンサルトが実施した調査の結果によると、 87%の米国人がリモートワークを含めた柔軟な働き方を求めており、5割近くの人が何かしらのリモートワークが提供されない場合、職場を離れると回答した。
このように、従業員側の需要が大きいリモートワークだが、雇用主がその期待に応える準備が整っていない場合も多い。例えば、セキュリティーの環境を整えたり、リモートワークになることで評価制度を見直したりといったことだ。採用した人たちの業務指導や研修などをどうやってオンラインで行うかなど、特に人事部にとって見直さなければいけない事項が多いのが現状だ。
このような時勢を反映してか、ハーバード・ビジネス・スクールの機関誌である「ハーバード・ビジネス・レビュー」に先日投稿された論文には、従業員が雇用主や就職先の立場を理解した上でリモートワークを承認してもらうための交渉術が紹介されていた。
その中で、「リモートワークを行うことが自分にとって必要だということに終始せず、いかにそれが雇用主にとって利点になるかということを、裏付けとなるデータや調査も引用しながら説明してウィンウィンにせよ」というアドバイスがあった。この場合の「利点」とは例えば、リモートにすることで生産性や能率が上がり、会社への貢献度が増す点などであろう。
また、「リモートワークが承認され、物価が安い場所に引っ越した場合、減給になる可能性を受け入れた方がよい」という指摘もあった。この背景には、フェイスブックやグーグルなどの大手IT企業を含めた4%の会社が、地方移住をする従業員の減給を行う可能性があると発表していることがある。
そして、この論文は「一度の交渉で成功するとは思わずに時間をかけて説得せよ」というアドバイスで締めくくられている。従業員がリモートワークを手に入れて自分の望むライフスタイルを実現するためには、戦略的なアプローチを立てた上で、時間をかけて粘り強く雇用主や就職先と交渉をしていくような能動的な姿勢が今後は必要になってくると言えるだろう。
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
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