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ビジネスインサイダー寄稿記事 掲載 設立1年でユニコーン化した別荘共同所有スタートアップ「Pacaso」とは?…物価高時代に注目集める「オルタナティブ資産」

2021/11/24 メディア掲載実績 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

設立1年でユニコーン化した別荘共同所有スタートアップ「Pacaso」とは?…
物価高時代に注目集める「オルタナティブ資産」

マサチューセッツ州のマーサズ・ヴィニヤード島に立ち並ぶコテージ。
John Greim/LightRocket/Getty Images

こんにちは。パロアルトインサイトCEO・AIビジネスデザイナーの石角友愛です。

先日、アメリカの消費者物価指数が前年の同月と比べて6.2%の上昇を記録し、約31年ぶりの高い水準となったと報道されました。

アメリカではワクチン接種後、今まで我慢していた旅行などに出かけるリベンジ消費の需要が増えているにも関わらず、供給側の人手不足や物流停滞、エネルギー価格の高騰などを受け、軒並み値上げが起きています。

チポートレのメニュー。アメリカではメジャーなファストフードチェーンだ。
REUTERS/ Shannon Stapleton

例えば、約2900の店舗を所有・運営する、タコスやブリトーの有名チェーン店のチポートレでは、働き手の確保・維持のため5月に従業員の時給を平均15ドルに引き上げると同時に、各職務における経験豊富な従業員には昇給を割増し(時給制のマネージャーには平均して1時間あたり2ドル程度、また給与制のマネージャーにはそれに見合った昇給を実施)した結果、7月にはメニュー価格が3.5〜4%引き上げられました(私が以前寄稿した記事はこちら)。

このようなインフレの影響で、投資家は現金や債券よりも持ちこたえる可能性のある「オルタナティブ投資」を探す傾向が出てきます。オルタナティブ投資とは、一般的な株式や債券に対する投資以外のすべての投資を指し、例えば不動産投資なども含まれます。

米大手銀行のJPモルガンが発表したレポートによると、オルタナティブ資産は2022年も引き続きパフォーマンスが伸びると予想されています。そして、このようなオルタナティブ投資市場の盛り上がりを反映するかのように、最近では新しいビジネスモデルを提供する「オルタナティブ投資スタートアップ」が生まれています。

例えば、オルタナティブ資産の代表である不動産。コロナの影響でリモートワークが増え、生活習慣の変化が進み、セカンドハウスを購入する人が増えました。不動産プラットフォーム大手Redfinが行った調査結果によると、アメリカにおける10月のセカンドホーム需要はコロナ前に比べて70%アップしました。

不動産プラットフォーム大手Redfinは、10月のセカンドフォーム需要は70%アップしたというレポートを公表した。
出典:Redfin

カリフォルニアに拠点を持つスタートアップ「パカーソ(Pacaso)」 は、これまで超富裕層しか買えなかったようなセカンドハウスを、共同所有(Co-Ownership)という形にすることでより幅広い層に届けることを目的としている会社です。

2021年、企業価値が10億ドル(約1142億円)に到達し、7500万ドル(約85億円)の資金調達を経て、創業から1年も経たずにユニコーン入りしました。投資家にはソフトバンク・ビジョン・ファンド2(SVF2)の名前もあります。

パカーソは、市場で売りに出ている不動産を購入し、LLC(合同会社)を作ることで共同所有を可能にします。

具体的には、家を購入する際に独自のLLCを作り、LLCの共同メンバーとしてセカンドハウスを所有したい8名が参加するという仕組みです。8名それぞれの与信審査などはパカーソが行うため、購入する側は8分の1の価格(正確には8分の1の価格の30%相当にあたる頭金)を支払えばよいということになります。

パカーソの共同設立者であるAustin Allison(オースティン・アリソン)氏は、不動産プラットフォーム大手Zillowの元幹部でした。同氏はCNBCの番組“The Exchange”の番組内で「ほとんどのセカンドハウスは、1年のうち11カ月間は空き家になっているのが現状です」と述べたうえで次のような興味深い発言をしています。

「我々は、昔からの慣習を“共同所有権”という形で現代風にアレンジして、不動産をより有効に活用しています。料金の支払いやメンテナンス、インテリアデザインなど、面倒な部分をすべてパカーソが担当することで、誰でも手軽にセカンドハウスを楽しむことができる。これがパカーソの特徴です」

パカーソのビジネスモデルは、購入時に所有者に12%のサービス料と月額100ドルの管理費を請求することで収益を上げるというものです。これは商業用不動産では一般的ですが、別荘業界ではそれほど一般的ではありませんでした。 また、パカーソの所有者は、所有権獲得後12カ月経過すれば、いつでも自分の持分を売却できるとのことです。

パカーソで売り出されている共同所有権の例。西海岸で人気でワイナリーが多い地域で知られるナパバレーでは、50万ドル(約5700万円)〜100万ドル(1億1400万円)前後の共同所有物件が並んでいる。
出典:Pacaso

パカーソ上で売りに出されている家。高級住宅街であるカリフォルニア州マリブにある豪邸で、家全体の値段は700万ドル以上だが、8分の1(97万4000ドル)から所有できる。8分の1の所有権の場合の支払いは、上記の通り。年間最大滞在日数も決まっている。家の購入はビットコインなどの暗号資産でも決済できる。
筆者キャプチャー

このビジネスモデルにより、もしパカーソが今後より低価格の不動産を扱う様になれば、今までは別荘の所有が現実的ではなかった層でも、セカンドハウスの購入と投資が可能になります。

現在売りに出されている物件はプール付きの豪邸が多く、価格帯は8分の1のオーナーシップで80万ドル(およそ9130万円)ほどです。

パカーソでは5人から8人のCo-Ownershipで所有でき、かつ家のメンテナンスや「いつ誰が滞在するか」といったスケジュールの管理までパカーソアプリを使ってシームレスに行えることが特徴になっています。

パカーソでは5人から8人のCo-Ownershipで所有でき、かつ家のメンテナンスや「いつ誰が滞在するか」といったスケジュールの管理までパカーソアプリを使ってシームレスに行えることが特徴になっています。
Airbnbのようにいつでも気軽に違う家に滞在できるのもよいですが、「何かを所有したい」「高級物件に投資をするだけではなく住みたい」という層に、パカーソのCo-Ownershipモデルが響いているのではないでしょうか。

実際に、パカーソの顧客層の65%が初めて別荘所有をする人だとのことです。

オルタナティブ資産としての「アート」

アートのオークションの様子(写真はイメージです)。
steve estvanik / Shutterstock

オルタナティブ資産としてもう一つ注目されているのがアートです。絵画を投資案件として扱い、パカーソと同様のCo-Ownershipモデルを打ち出しているのが、 最近10億ドルの企業価値で1億1000万ドルの資金調達を行い、ユニコーン企業入りしたマスターワークスです。

マスターワークスでは、主にモダン、コンテンポラリーアートに代表されるアーティストの絵画を扱っています。

世界中のあらゆるタイプの投資家に、有名な現物のアート作品の所有権を分割して販売することで、「1兆7000億ドルのアート市場の民主化を目指す」ことを会社のミッションとしています。

仕組みとしては、パカーソと同じく、まずマスターワークスがバスキアやキースヘリング、アンディーウォーホルなどの超有名アーティストのオリジナル絵画をオークションハウスなどから購入します。

そして、購入した絵画一つ一つをSEC(Securities and Exchange Commission:米国証券取引委員会)に投資商品として登録します。登録が終了すると、絵画が証券化され、その証券を購入することにより誰もが(※)、ブルーチップ(ここではリターンが期待される優良銘柄の絵画の意味)のオリジナル絵画の共同所有者になれるというモデルです。当社が発表したレポートによると2020年時点で9万5000人以上の投資家がマスターワークスに登録しているとのことです。※マスターワークスは現在招待制をとっています。

また、マスターワークスの調査によると、コンテンポラリーアートは過去25年間でS&P500の9.5%を大幅に上回る年率14%のリターンを記録しています。

さらに興味深いのは、過去25年間で、2年間の投資期間中にコンテンポラリーアートが損失を被った割合はわずか8%だと推定されていることです。これは、同期間におけるS&Pの16%、金の36%に対し非常に優秀な数値だと記載されています。

前述のパカーソと比較すると、マスターワークスはこのようなファイナンス関連のデータを積極的に打ち出しアートの投資的価値を全面的に訴求しています。

データ活用が強みに

マスターワークスでは、投資商品として絵画を購入した後、3年から10年の間で一番利益が出ると想定されるときに売却します。

そのため、ビジネスモデルも保険や保管費などをカバーする年間管理費として1.5%(エクイティの形で徴収)、売却時のリターンの20%という形態をとっています。リターンを最大化することがマスターワークスの目的になってくるため、結果的に価格の変動などのモニタリングが重要になってきます。

マスターワークスのレポートによると、データ収集に力を入れている同社では、1960年代から現在までの30万件以上のオークション取引データ、及びそれに伴う300万件以上のデータを所有しています。これによって、「どの絵画をいくらくらいで購入すれば投資リターンが出るか」という予測値を出しながら運用していると主張します。

また、マスターワークスはアメリカ国籍を持ち、アメリカの銀行口座を所有する人にのみ公開されているセカンダリーマーケット(流通市場)を運営しており、そこで保有している絵画の証券の売り買いができるという仕組みづくりも手がけています。

マスターワークスが運営するセカンダリーマーケットのスクリーンショット。
出典:マスターワークス

Co-ownershipは新しい考えではないものの、このように個人のセカンドハウスや絵画など、今までそのようなアプローチが積極的に取り入れられてこなかった領域で、新しいスタートアップが生まれているのが特徴です。

その背景には、インフレなどのマクロな要因もある一方で、今回ご紹介したように、データ活用によって会社の優位性を創出できる環境ができ上がってきたことも大きいと言えるでしょう。

付加価値としては、購入者の代わりに良い案件を専門家がキュレーションしてくれることや、管理してくれること、書類手続きも簡素化されていることなどが共通しています。

投資には常にリスクが伴いますが、このような会社が生まれることで、限られた超富裕層以外の人たちにも、高額な商品に手が届きやすくなり、「民主化」が進むことは興味深いトレンドだと言えます。

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