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DXとコアの再定義 – エンタープライズジン記事掲載

2022/01/06 メディア掲載実績 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

「コアの再定義と従来プロセスの見直しから」 石角友愛氏が提唱する“真のDX”の踏み出し方-エンタープライズジン記事掲載

 

「DX推進」という言葉が至るところから聞こえるようになった昨今だが、未だ多くの企業が苦戦しているのではないだろうか。そこで今回、「DXの核心」をテーマに開催された「data tech 2021」において、パロアルトインサイトCEO/AIビジネスデザイナーの石角友愛(いしずみ ともえ)氏が登壇した。同氏は現在シリコンバレーに身を置きながら、100社以上の日本企業へDX戦略の策定やAI活用の支援、開発・導入を行っている。著書『いまこそ知りたいDX戦略』でご存じのEnterpriseZine読者も多いのではないだろうか。本記事では、同氏が講演で語ったDXの進め方や心得ておくべき考え方などを、網羅的に紹介していく。

https://enterprisezine.jp/article/detail/15343

DXに「始まり」と「終わり」はない

「DX推進」について語る前に、DXとAIについての現状把握をしておこう。日本の事業会社におけるAI導入状況を見ると、ほとんどの企業が“基礎フェーズ”に留まっている。実導入に至っている企業の割合は、全体平均でわずか4.2%、最も進んでいる金融業でさえ8.3%だ。ほとんどが「これから」の状態であるといえるだろう。なお、実際に導入されているAIでは、チャットボットが全体の約半数を占めているそうだ。

日本におけるAI導入の進展について、石角友愛氏(以下、石角氏)は「数年前までは『導入効果が得られるか不安』『導入費用が高い』などの課題が多かったのですが、昨年には『経営者や社内関係者の理解が得られない』など、より具体的な課題に変化していることがうかがえます」と話す。

一方、米国ではどうか。2020年にマッキンゼーが行った、米国内のあらゆる業種・規模を対象とした調査によると、既に約50%の組織が何かしらのAIを導入していることがわかっている。

また、DXについて、米国では第4次産業革命ともいわれており、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、IoT、AIなどが根幹技術とされている。DXはこれらが混ざり合い、結果的に生み出されるネットワーク効果や指数関数的な成長、変化として捉えられているという。

ここで大事なポイントとして、DXとはツールの導入で達成できる何らかの業務改革ではなく、根本的なビジネスモデルの改革であるということがいえる。石角氏は「DXとは、始まりと終わりがあるイベントのようなものではなく、常に実施し続けるステイト(状態)、終わりなき戦いです」と述べる。

自社のコアを再定義し、徹底的に強化せよ

DXを前にして「どこから始めたら」と途方に暮れる人に、石角氏はまず「会社のコアをデジタル化する」ことを勧めている。同氏は、バスケットボール選手のマイケル・ジョーダン(Michael Jeffrey Jordan)氏を例に説明した。

ジョーダン氏は、スニーカーブランドの「エアジョーダン」をはじめ、数々のビジネスで成功を収めている。しかし、この成功は「バスケットボール」というジョーダン氏のコアがあってこそ実現したものである。「ジョーダン氏にとっての“バスケットボール”は、皆さんの企業では何に当たるでしょうか」と、石角氏はコアを定めることの重要性を呼びかける。

ただ、自動車メーカーが自社のコアを「自動車の製造」と従来通りに定義していては、今後の変化やチャンスを逃してしまうかもしれない。そのため、DX推進の前準備として、コアの再定義とデジタル化が必要なのだという。

自社のコアを再定義し、一気にDXを推進した企業の例としてモデルナがある。新型コロナ予防のmRNAワクチンで記憶している人も多いだろう。まだ創立から10年ほどしか経っていない、若い企業だ。

モデルナは創立当初から、自社を“製薬会社”とは位置づけず「生物学に携わるITカンパニー」と定義した。同社のコアは薬の開発。当初は、コアに必要なゲノムシーケンスのデータがExcelに打ち込まれているなど、非効率だった部分をクラウド化し、統合・自動化した。自社の競争力に関わるコアを徹底的に強化し、多くを内製で開発したのがポイントだという。一方、コアではない業務(人事など)は汎用的な市販のツールで省人化・デジタル化している。

デジタル活用に至るまでの“5つのステージ”

DX推進における優先順位づけの考え方として、石角氏は「D-3モデル」を紹介した。実業家であるナイジェル・ヴァス(Nigel Vaz)氏の著書『Digital Business Transformation』で紹介されていた概念で、企業のDXは「Defend(防衛)、Differentiate(差別化)、Disrupt(破壊)」の順で行うという考え方だ。たとえば、ECやデジタルマーケティングを強化するのは、既存の範囲での活動なので“防衛”にあたる。そこから新しい市場や顧客に進出する“差別化”へと進み、さらに新しい市場や顧客を創造する“破壊”へと発展させていくのだという。

こういった一連の流れをDXと呼ぶのであって、ツールの導入で完結してしまうことはDXとはいえない。さらにわかりやすく伝えるため、石角氏は「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」の違いを説明した。

・デジタイゼーション:ハンコのデジタル化やペーパーレス化など、アナログからデジタルへ移行すること
・デジタライゼーション:Excelデータからの売上予測、デジタル化したデータの活用によるビジネスモデル変革

DXとは、デジタライゼーションが全社横断的に起きていて、人や組織に根本的、抜本的改革が常に起きている状態を指すのである。

次に、石角氏はD-3モデルを拡張した5つのステージでDXの進め方を解説した。第1の基礎ステージでは、部署内のプロセスを部分的に自動化・省人化する。第2のサイロ(縦割り)ステージでは、縦割りでDXを進める。そして、第3の部分的統合ステージでは会社横断的なDX推進を実践し、第4の全社的統合ステージでついに会社全体のデジタル化が完成するのだ。ここまでが成功して、ようやく第5のステージに到達。常にデジタルを活用して意思決定ができる状態になるのだという。

なお、この5つのステージは必ずしも順番に辿らないといけないわけではない。いくつかのステージをスキップする馬跳び方式で進むこともある。

自社の課題は把握しているが、実行力不足というケース

ここまでDXの進め方を紹介したが、当然、推進していく上で障壁に直面することもある。石角氏の著書『いまこそ知りたいDX戦略』では、「DXを成功させるために越えなくてはならない3つの壁(FOMOの壁、PoCの壁、イントレプレナーの壁)」が紹介されている。本講演では3つ目の“イントレプレナーの壁”、課題把握能力は高いものの実行力が足りていないというケースを紹介する。

同氏が紹介するのは、総合エンターテインメント企業であるホリプロの事例だ。同社は当初、CTOもCDOも、そしてデータサイエンティストもいない、極めつけにはデータすらないという状態だったが、課題は明確に把握していた。タレントを売り込む際に、マネージャーの経験やテレビ局のプロデューサーの価値基準などに左右されてしまい、客観的な指標に基づいていなかったのだという。

そこでまず、パロアルトインサイトがSNSのデータを収集し、AI解析するプロトタイプを開発した。これにより情報を上手く分類できたので、ホリプロはこのシステムをさらに拡張する方向でプロジェクトを進めている。石角氏は「重要なのは課題を把握していること。ビジネス課題として会社が何に取り組むべきなのかというところがぶれなければ、情報は収集可能です」と語る。

敢えて「赤字事業にAI投資する」というDX思考法

石角氏は、DX成功の鍵の1つとして「赤字事業や危機的事業にAI投資せよ」と提言する。その成功事例は、食品メーカーの不二家に見ることができる。同社ではケーキショップの洋菓子事業と、「ミルキー」などをはじめとした菓子事業があり、売上の7割が菓子事業で、洋菓子事業では赤字が続いていた。

好調な事業をさらに伸ばすならば、ここで菓子事業へのAI投資を決断するだろう。しかし、意外にも経営部門がAI導入・デジタル強化の対象として選んだのは、洋菓子部門であった。これにより、AIで洋菓子出荷予測システムを開発。店舗ごとの発注量、販売動向、顧客属性、生菓子の材料などのほか、天気のデータも加え、データ分析を行っている。それぞれの商品がどのような条件で売れるのかを探り、最終的には工場のライン編成や人員配置の最適化、廃棄ロス抑制を目指してプロジェクトが進行中だ。既に、現在は黒字転換に成功している。

赤字事業をAI投資の対象とすることは一見誤りのように見えるが、赤字を解消しなければ黒字事業の努力も水泡に帰する。まずは効果を出しやすい赤字事業から着手することで、黒字事業ほど失敗のリスクを抱えずに済むのだという。

早速、従来のプロセスを見直すことから始めよう

DXの目的は企業の競争力を高めることにあるという理解は、最近は広く浸透してきている。ここで、石角氏は『イノベーションのジレンマ』で知られる米国の世界的な経営学者 クレイトン・クリステンセン(Clayton M. Christensen)氏が提唱した、ビジネスモデルを定義する要素について紹介した。それは「経営資源」「プロセス」「利益方程式」「顧客価値の提供(CVP)」だ。これらは複雑な相互依存の関係にあるため、1つの要素を変えると他の要素が少なからず影響を受けてしまうのだという。

現在、企業は様々な分野で、新たな時代に適応するためのイノベーションに迫られている。しかし、多くの企業が苦戦しているのが現状だ。これに対し、「イノベーションが失敗するのは、これらの要素をイノベーションに適した形に変革できていないことが要因」と語る石角氏。特に、歴史の長い企業になると経営資源や利益方程式が固まっていて、いきなり変更することが難しいのだという。そこで石角氏は、プロセスの要素においてDX推進を実践することからイノベーションを始める方法を提唱した。プロセスは、DXの効果が最も出やすい領域だからだ。

「たとえば、DXによって業務プロセスや意思決定を改善することで、次第に利益率や経営資源も改善に向かっていくという好循環を生み出すことができるのではないでしょうか」(石角氏)

最後に、石角氏はコロナ禍における大学教育の変化を例に、プロセスを見直すことの重要性を訴えた。これまで米国では、「良い大学を卒業すれば、良い就職先が見つかる」といわれてきた。しかし、コロナ禍でキャンパスが閉鎖され「何のために高い学費を払ってリモート授業を受けるのか」と、大学で学ぶこと自体が疑問視されるようになったのだという。今では大学を中退し、実戦力が養われる数ヵ月の講座を受講して、そのままIT企業に就職する若手も出てきているそうだ。

仕事やキャリアの在り方も多様化してきている。これまではオフィスが一等地にあり、福利厚生が整っていれば優秀な人材が集まっていたが、リモートワークが浸透したことで働き方や人生設計を見直す人も増えている。

「『このプロセスは本当に必要なのか?』など、これまでは一般的であった考え方や仕組みを問い直すことから、“真のDX”は実現できるのです。ぜひ真のDXに向けて、今日から一歩踏み出してみてください」(石角氏)

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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