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AIドリブン経営の落とし穴 – 米国最大の不動産テックの敗因
2022/02/14 ブログ 
by kohei 

AIドリブン経営の落とし穴 – 米国最大の不動産テック企業は、なぜ失敗したのか

DXを通した産業改革の重要性を伝える音声番組「Level 5 by Palo Alto Insight」

各回の内容を文字でもお伝えすべく、文章でまとめた記事を投稿しております。今回の「Level 5 by Palo Alto Insight」の概要を文章で読みたい方はこちらの記事をお読みください。詳しい内容は音声ページよりお楽しみください。

 

DXを通した産業改革の重要性をより多くのみなさまに伝えるため、立ち上げた企画です。

この番組は、石角と長谷川、山崎というレギュラーメンバー3人でお伝えしていきます。石角と長谷川はハーバードビジネススクールの同期で、共にパロアルトインサイトを立ち上げました。そして、同スクールの先輩である山崎さんにも、この番組に毎回参加していただきます。

石角友愛(いしずみともえ) パロアルトインサイトCEO
長谷川貴久(はせがわたかひさ) パロアルトインサイトCTO
山崎壯(やまざきつよし) 日本を代表する投資会社・インテグラル株式会社のパートナー

エピソード#2
「米国最大の不動産テック企業は、なぜ失敗したのか」

DXを通した産業革命の重要性を伝える音声番組「Level 5 by Palo Alot Insight」。

第2回放送からは、我々が注目したニュースを「今週のホットニュース」と称して独自の目線で紹介したいと思います。事業者目線や投資家目線、そして日本とアメリカでの捉え方の違いなど、様々な角度から議論していきます。

 

Zillowの失敗は、AI経営における重要な教訓である

 第2回で取り上げる「今週のホットニュース」は、パロアルトインサイトCEOである石角友愛がBusiness Insider Japanに寄稿した記事の1つである「米不動産テック大手Zillowの大失敗に見るAI経営の教訓」です。

ニュースの概要

 このニュースは、米国最大の不動産情報サイト運営を手がけるZillowが起こしたものです。この会社は2006年に創業して以降、米国最大の不動産テック企業と言われるほどに成長しました。米国の不動産情報に関するウェブ検索の約3割はZillowが持つとされており、取り扱う物件数も1億3500万件以上と非常に大規模です。2020年には、Zillowウェブサイトに訪れる毎月のユニークビジター数が3600万人を記録したことでも話題になりました。

 しかし、2018年から取り組んだ「ホームフリッピング事業」である「Zillow Offers」で衝撃的なニュースが入ります。これは、アルゴリズムを利用して住宅を迅速に査定し、Zillowが安く購入した上で表面的なところだけをリノベーションして高値で販売するという事業内容でした。この「Zillow Offers」の事業部を、突如閉鎖することを発表したのです。

 事業閉鎖にあたって、企業全体の25%にもあたる2000名以上の従業員を解雇し、保有していたおよそ7000件もの不動産もプライベートエクイティーファームなどに売却しました。売却された不動産の総価値は28億ドル(約3200億円)にも及び、Zillowの評価減額としては、実に5億ドル(約570億円)にものぼると言われています。

予測モデル自体は非常に優秀だった

 長谷川はこの件について、データサイエンティストの観点からみても非常に大きなチャレンジだったと話しています。というのも、過去に作った予測アルゴリズムというのが時間の経過とともに劣化してしまうことは避けられず、不測の事態に適応するためにはオンラインラーニング(リアルタイムでデータを集めること)が必要不可欠だったからです。

 Zillow Offersでは、独自の不動産価格予測アルゴリズム「Zestimate」をもとに物件の購入額やリノベーション費用を決め、ホームフリッピングすることで収益を得るという手法を用いていました。また、データサイエンティストが集まるバーチャルコンペ「Kaggle」で、このZestimateの精度を高めるために賞金120万ドル(1億円以上)でコンペも開催していました。そこで優勝したチームの開発した考え方を取り入れながらこの事業は進められたため、モデル自体は非常に優秀なもので、いい予測も立てられていたといいます。

それでも予測できなかった「パンデミック」

 しかし新型コロナウイルスが蔓延したことにより、ブラックスワン的な現象が起こってしまいます。具体的には、

というような変化が起こりました。

 山崎は、これらの変化に対してバッファー(余裕)を持たせることの重要性を指摘しています。つまり予測モデルの精度が変化した時、すぐに対応できる「切り替え可能なモデル」を作るだけではなく、業務オペレーションや意思決定がモデルの数字に100%依存しない形で回るようにする必要があったということです。

 また共通点の多い事例として、LTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)の例を出しています。1994年に設立されたヘッジファンドであるLTCMが、アジア通貨危機・ロシア財政危機の発生により巨額の損失を抱えて財政破綻したこのケース。ここでの共通点として、思い込みではない意思決定を経営者ができるかどうかが非常に重要であると話しています。

 LTCMの運営メンバーにはノーベル賞を受賞したロバート・マートン氏をはじめとする金融の先鋭達が揃っており、各国の金融関係者からも大きな注目を集めていました。しかし、そんなレジェンド達がチームとなったことが裏目に出て、自分達の考え方を過信しすぎてしまったのです。これはまさに、AIモデルを過信しすぎて意思決定が疎かになってしまったZillowのケースと同様でした。

AI経営におけるマナーとは

 石角はこれらの議論を通して、人間は自分の評価している情報を信じてしまう傾向にあるが、そこでどれだけ「間違っている可能性」を意識できるかが重要であると話しています。つまりAIに依存しすぎてしまうと、意思決定がスピードアップしてマクロな視点を見落としがちになってしまうため、そこでしっかりと現状を把握し適切な意思決定が行えるような意識醸成を進めることが重要であるということです。

 また、外部から意思決定をチェックしてもらえるような組織づくりを進めていくことも大切であると話します。AIだけに頼るのではなく、AIを扱う上での適切な組織体制を整えていくことが必要となるのです。

 

石角のおすすめコンテンツ「進撃の巨人」

 「今週のおすすめコンテンツ」は、石角が正月休みを使って一気に読んだという 諫山創先生の「進撃の巨人」です。2021年4月に完結した大人気コミックであり、アニメや映画でも話題となった作品になります。

 世界観やキャラクター設定なども非常に作り込まれていて、世界中にファンが多いこの作品。出演者3名とも完読しており、石角はインターネットの考察記事を読み漁るほどハマったと話していました。

 また山﨑は、仕事で経営者の方々と話をする際にも進撃の巨人の話題が出るといいます。経営者やエグゼクティブクラスの方々は常に流行に対するアンテナを張っていることから、進撃の巨人に限らず、TikTokなどの話題もよく出てくるそうです。

 ぜひこの機会に、一度読んでみてください。

 次回の放送はメタバースについて議論していきます。毎週木曜日の朝に配信していますので、ぜひ各種プラットフォームから登録お願いします。

 

#2の実際の音源はこちらからお楽しみください。

 

 

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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