ポストコロナを迎える今、各業界をリードするイノベーターたちはDX(デジタルトランスフォーメーション)をどう考えているのか。人工知能(AI)開発と実装を現場で見ているAIビジネスデザイナーの石角友愛氏がトップ経営者や専門家と、具体的かつグローバルな議論を展開する。今回はカスタムサラダ専門店「クリスプ・サラダワークス」を展開するクリスプの宮野浩史氏を迎え、日本の外食産業が抱える課題について議論した。(対談は2021年12月10日)
石角友愛氏(以下、石角) 宮野さんは米国のハイスクールを卒業されたそうですね。私も16歳で米国に渡ったのでとても親近感を覚えています。
宮野浩史氏(以下、宮野) 僕は15歳で留学をしました。もともと日本の高校に進学したのですが、学校にあまりなじめなくて1年生の1学期で中退し、居酒屋でアルバイトをしていました。たまたま知り合いが米国でホームステイを受け入れていたため、行ってみることにしたんです。決して裕福な家庭ではなかったのですが、親も高校は卒業してほしかったんでしょうね。サンフランシスコから1時間ほど北に行った、とてものどかな地域にある、1学年5人程しかいない小さな学校に入りました。
石角 最初に起業したのがハイスクールを卒業してすぐだと聞いています。どういった経緯があるのでしょうか。
宮野 ホームステイ先のホストファーザーは中国にルーツがある人なのですが、日本生まれで日本語を話すことができました。僕は「第二の父」と慕っていました。そのホストファーザーはいろいろな事業を手がけていて、僕が高校を卒業するときに「新しく天津甘栗の販売事業を始めるから、一緒にやらないか」と誘ってくれたんです。
石角 ホストファーザーの補佐ということでしょうか。
宮野 いいえ、ビジネスパートナーという立場でした。「取り分は君の方が多くていい。仕事は教えるから自分でやってみろ」と言われ、ビジネスの基本をレクチャーしてもらいながら日系スーパーの入り口付近で天津甘栗を焼いて売りました。
石角 私もカリフォルニアの日系スーパーで、一時期よく天津甘栗を買っていました。きっと宮野さんのお店だったんでしょうね。もしかしたら当時すでに会っていたのかもしれません(笑)。
宮野 本当ですか? すごい偶然ですね(笑)。甘栗は日本の中華街などでもよく売られていますが、買っている人はほとんど見かけたことがありませんでした。でも僕のお店は多いときで1日に30~40万円も売れたんです。「同じものでも、場所を変えるだけでこんなにも売れ方が違うのか」と驚きました。
石角 そのときの体験がクリスプ・サラダワークスの開業につながったのでしょうか。
宮野 そうですね。日本に戻ってきたときに「米国では当たり前だけれども、日本にはない食べ物かつ自分が食べたいと思うものを売ろう」と考えました。そこで思いついたのがブリトーとサラダです。最初に「フリホーレス」というブリトーとタコスの専門店を開きました。そしてそちらの事業は売却し、2014年にクリスプ・サラダワークスを開業しました。
石角 米国ではサラダは日常的に食べるものですよね。21年には人気サラダチェーン「Sweetgreen」の運営会社が米国で上場して話題になりました。
宮野 Sweetgreenは僕もベンチマークにしていました。ただ日本にはサラダがメインという食文化がなかったからか、クリスプ・サラダワークスのオープン前は「サラダだけで大丈夫ですか?」「パンは置かないんですか?」と周囲にはかなり心配されましたね。ところがいざお店をオープンしてみると、顧客として想定していた米国人や米国に住んでいたことのある日本人以外にも、日本のビジネスパーソンなどたくさんの人が買いに来てくれたんです。
石角 日本だとサラダは定食に添えられている程度で、食事のメインと位置づけられることはほとんどないですね。それを考えると、クリスプ・サラダワークスに買いに来た人たちは、今まで何を食べていたんでしょうか?
宮野 私も疑問に思って毎日来るお客さんに聞いてみたところ、「コンビニのおにぎりとカップサラダを買っていた」と。うちのサラダは1000円以上しますが「値段の問題ではなく、軽く食べたいと思ったときにコンビニサラダくらいしか食べられるものがなかった」と言われました。
僕も食べることは好きなのですが、お酒はほとんど飲みません。だからお酒も飲まないのに1人で居酒屋に入るのは気が引けて、ついファストフードを食べてしまっていました。でも健康のことを考えると少し値段が高くてもいいので、おいしくて身体に良くてパッと食べられるものがほしかったんです。クリスプ・サラダワークスはそういった人たちのニーズにフィットしたのだと思います。
石角 コロナ禍でテークアウトのお店が増えましたが、御社はかなり早い段階でアプリからのモバイルオーダーを取り入れていた印象があります。これはどういう経緯があるのでしょうか。
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
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