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外食産業におけるDX推進のポイントとは– 日経クロストレンド連載

2022/04/07 メディア掲載実績, 日経クロストレンド 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

「おいしければ売れる時代」は終わり サラダの強みを最大限活用 – 日経クロストレンド連載 ダイバージェンス時代のDX戦略 第15回

ポストコロナを迎える今、各業界をリードするイノベーターたちはDX(デジタルトランスフォーメーション)をどう考えているのか。人工知能(AI)開発と実装を現場で見ているAIビジネスデザイナーの石角友愛氏がトップ経営者や専門家と、具体的かつグローバルな議論を展開する。今回はカスタムサラダ専門店「クリスプ・サラダワークス」を展開するクリスプの宮野浩史氏と石角友愛氏の対談の後編。宮野氏が考える外食産業におけるDXの重要性、クリスプの今後の展開などにについて話を聞いた。(対談は2021年12月10日)

▼前編はこちら
サラダ文化の導入で成功したクリスプ モバイルオーダーでCX向上

石角友愛氏(以下、石角) 外食産業におけるDX推進について、御社ではどういったプランを考えているのでしょうか。

宮野浩史氏(以下、宮野) 当社は新しい外食産業「コネクティッド・レストラン」を目指しています。具体的な目標は2つ、「非連続な成長」と「高い収益率」です。

日本の外食産業は店舗を10店舗、100店舗と増やしていったうえで、原価を数円下げて全体として数億円のコストを削減するといった連続的な改善を積み重ねることで成長してきました。それに対し、我々は、テクノロジーを活用することで、非連続でも成長できるビジネスモデルをつくっていきたいと考えています。外食産業は利益率があまりよくないのですが、例えばFacebookは利益率が40%程度と言われておりかなり高い。業界に関係なく、本来ビジネスはこれくらいの収益性があってしかるべきです。外食でも収益性を高めていきたいと思っています。

石角 既存の外食産業のあり方とは違う、まさに新しい外食産業ですね。ただ非連続な成長と高い収益率を達成していくためにDXを推進するといっても、システムを導入するだけではうまくいかないと思います。具体的にはどういった点を押さえておくべきだと考えていますか?

外食分野でも収益性を高めたいと語る宮野氏

宮野 まず大前提として、僕たち外食企業が追求しているのは「お客さんに喜んでもらうこと」「次回の利用につながること」です。そのために大事なポイントが「お客さんを知ること」です。

僕がもしパーティープランナーで、石角さんのサプライズバースデーパーティーを企画するとしたら、まず石角さんの好きなものや経歴などを徹底的に調べます。それを生かして喜んでもらえそうな仕掛けを考えるでしょうね。それと同じで、お客さんに喜んでもらうためにはまずお客さんの情報が必要です。

石角 外食だけでなく、さまざまなメーカーもリテール(小売店)を介しているため顧客の情報をきちんと把握できておらず、それが日本の企業のイノベーションを阻んでしまっていると感じます。御社ではその情報を集めるために、どういった取り組みをされているのですか?

宮野 弊社の場合はアプリです。お客さんはアプリを使ってモバイルオーダーをすることで、購買体験のフリクション(摩擦)を軽減できます。一方で店側は、アプリからお客さんの購入データが得られ、それを活用できます。

石角 現在、クリスプ・サラダワークスの利用客のうち、何割程度が特定されているのですか?

宮野 アプリのほか店頭購入の際も電話番号による会員登録が必要となったこともあり、年間80万人ほどの利用客のうち8割ほどは見える化されています。

石角 8割ですか!? そのデータは御社にとって大きな資産ですね。

宮野 はい。データを活用することで、これまでオンラインのビジネスでは当たり前だったようなことが、外食産業でもできるようになると思います。ネットショッピングの場合、ツールを活用することで、どこに出したどの広告をクリックしてサイトを訪問したのかといった流入経路やコンバージョン率は比較的簡単に把握できますよね。そういったことが外食でも実現できるはずです。

石角 来店経路などお客さん一人ひとりの情報がわかれば、パーソナライズしたアプローチもしやすくなりますね。

宮野 ええ。ほぼすべてのタッチポイントでお客さんが把握できたことで、例えば2年ぶりに利用するお客さんに対し、購入してもらうためにアプリ上で最適な表示やセールスができます。アプリの活用により、ようやくその土台ができました。今後、見える化された顧客情報を生かし、ABテストでパーソナライズしたアプローチを繰り返して改善を進め、コンバージョンにつながる仕組みをづくりをしていきたいと思っています。

外食は「体験」を売買するビジネス

宮野 そもそも日本では企業もお客さんも、外食は「食べ物を売買するビジネス」だと認識していると思いますが、僕は「体験を売買するビジネス」だと考えています。

例えばビールは居酒屋なら1杯250円程度で飲めますが、高級ホテルのバーでは同じものでも1000円以上はするでしょう。それでもお客さんはバーでビールを注文します。この価格差は、おもてなしやお店のブランドに対する付加価値と考える方もいると思いますが、僕は「体験」の費用だと思っています。日本の外食産業はこの「体験」の部分をないがしろにして、値段や味、効率化といったことにばかり投資してしまいがちです。

石角 ビジネスの規模が大きくなれば提供するバリューも大きくなるはずなのに、外食産業では価格が下がるジレンマがあるというお話がありましたが、外食産業でその状況を変えていくためには、「体験」の向上がキーになるのですね。そのために顧客データが欠かせないと。

一方でDXを進めることで、サービスが無機質になっていってしまうのではないかという懸念もあるのではないでしょうか。

宮野 その点では、アプリの表示や通知でフレンドリーなコミュニケーションを取ることで、お店に親近感を持ってもらえるように心がけています。オンラインでも心を通わせられる体験ができるようにしていきたいですね。

サラダを作ったり注文を受けたりする工程は、人がやっても機械がやっても基本的には同じです。そこはテクノロジーを活用しながら、それ以外の部分で人しかできない「体験」ができる機会をきちんと設けることで、ファンづくりはできると考えています。

石角 DXを進める一方で対面での体験の機会もきちんと設けて、お客さんの心をつかんでいるのですね。

宮野 日本の外食はレベルが高く、何を食べてもだいたいおいしい。だからこそ、そこで差別化をするのは簡単ではありません。「おいしいものさえ出せば、お客さんは喜んでくれる」と考える店も多いと思いますが、その時代はもう終わりました。

店舗での完全キャッシュレス化を実現

石角 クリスプ・サラダワークスはほとんどの店舗で完全キャッシュレス化していますが、これが実現できたのは、開業から早い段階でアプリを導入し、DXを進めたことも要因なのでしょうか。

宮野 タイミングが良かったことは確かに1つの要因ではあると思います。現金比率が高い大手外食企業が、いきなり完全キャッシュレス化をするのはかなり大きな決断です。弊社内でも不安の声はありました。ですが実際にやってみると、お客さんはすんなりと受け入れてくれました。結局、DXが進まないのは消費者ではなく事業者側の問題なのだと思います。

石角氏は「キャッシュレス化が広まるのは当然の流れ」と話す

石角 PayPayなどのサービスが出てきて、コロナ禍でキャッシュレス化が急速に広まったタイミングで、その波に乗ったことも功を奏したのかもしれませんね。

宮野 少なからずあるとは思いますが、国はずいぶん前からキャッシュレス比率を高めるという目標を掲げていますよね。コロナ禍でそのスピードは速まったかもしれませんが、日本でキャッシュレス化が進むことは自明の理だったはずです。

石角 確かにそうですね。キャッシュレス化を進めるとプレーブックに書いてあるのだから、そちらに進むのは当然の流れです。ただ、今まで野球をしてきた人に対して「これからはサッカーにします」と告げても、野球のやり方しか知らない人たちは戸惑い、居場所を失う恐怖心も抱えるのではないでしょうか。特に大企業に勤めている人はルール変更への抵抗が強い気がします。

宮野 そうでしょうね。日本の企業の多くはメンバーシップ型の働き方を導入しているので、野球からサッカーに転換しようとしたときに、野球をしていた人たちの処遇をどうすべきかと考えるでしょう。ですが今のような大きな変化が起きているタイミングでは、それが足かせになってしまう部分もあると感じます。ただそれはあくまで1つの切り取られた瞬間にすぎず、どちらが良い、悪いとはまた別問題です。キャッシュレスに関しては、今はまだ猶予期間ですがルールが変わることは明確です。

売るのはサラダではなく「健康と時間」

石角 御社の今後についても聞かせてください。お客さんを増やしていくために、どのようなことに取り組んでいかれる予定でしょうか?

宮野 21年夏に「CRISP REPLENISH」というサラダのサブスクリプションサービスを始めました。アプリでサラダを選び、週に何回、何時に届けるかを設定すれば、配送料無料でサラダを受け取ることができます。利用者数はかなり伸びています。

デジタルを活用することでお客さんとのタッチポイントを圧倒的に増やすことができます。弊社では、今後デジタル経由でお店を知ってくださるお客さんの割合を6割程度にまで引き上げていきたいと思っています。

石角 米国でもサンドイッチやサラダのレストランチェーンであるパネラ・ブレッドがコーヒーのサブスクリプションを始めて人気となりました。サラダは毎日のように食べる人が多いので、CRISP REPLENISHの利用者が増えているのも納得です。でもコーヒーとは違い、サラダは生鮮食品ならではの難しさがあるのではないでしょうか。

宮野 実はサラダはそこに強みがあるんです。1つは「すぐに食べなくてもおいしい」という点です。ピザやラーメンは調理から時間がたつと味が落ちますが、サラダはほとんど味が変わりません。ランチとして注文する人が多いので、午前9時から12時の間に配送しています。そうすることで配送の負担が減りますし、お客さんも冷蔵庫に入れておけば食べたいときにすぐ食べられます。

もう1つの強みは「食欲がなくても食べられる」という点です。食欲のないときに無理してピザは食べませんよね。でもサラダなら、健康のことも考えて食べておきたいという人は多いんです。

石角 なるほど。体調が良くなくてもサラダなら食べられる気がしますね。その点で、サブスクリプションはニーズにマッチしていると言えそうです。

宮野 僕たちは単純にサラダを売っているのではなく「健康と時間」を売っていると考えています。私たちはどれだけお金があっても、健康と時間だけはコントロールできません。だから本当にたまたまですが、私たちのサラダは収入が高い方々に支持される傾向があります。

石角 健康と時間にお金をかけていく流れは、今後収入の高い人たちだけでなく、社会全体に広がっていくと思います。サラダ専門店としても、DXを活用して外食産業を変えていく存在としても、今後も御社に注目していきたいと思います。本日は非常に興味深いお話をありがとうございました。

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00509/00014/

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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