アメリカ最新AI情報満載!セミナーや講演情報など交えて毎週水曜配信 無料ニュースレター 下記へメールアドレスを入力し無料で登録
CLOSE
パロアルトインサイト/ PALO ALTO INSIGHT, LLC.
メディア掲載実績MEDIA ACHIEVEMENTS
パロアルトインサイト/PALO ALTO INSIGHT, LLC. > メディア掲載実績 > 日経クロストレンド > 凸版印刷がデジタルに転換できた秘訣 印刷からDXビジネスへ – 日経クロストレンド連載

凸版印刷がデジタルに転換できた秘訣 印刷からDXビジネスへ – 日経クロストレンド連載

2022/06/13 メディア掲載実績, 日経クロストレンド 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

凸版印刷がデジタルに転換できた秘訣 印刷からDXビジネスへ – 日経クロストレンド連載 ダイバージェンス時代のDX戦略 第18回

 

ポストコロナを迎える今、各業界をリードするイノベーターたちはDX(デジタルトランスフォーメーション)をどう考えているのか。人工知能(AI)開発と実装を現場で見ているAIビジネスデザイナーの石角友愛氏がトップ経営者や専門家と、具体的かつグローバルな議論を展開する。今回は凸版印刷執行役員でDXデザイン事業部長の柴谷浩毅氏を迎え、同社がDX事業に取り組み始めたきっかけや社内の変化について議論した。(対談が行われたのは2022年4月12日)

右肩下がりの印刷市場から、凸版印刷がどうやってDXへと舵(かじ)を切ったかを語る柴谷浩毅氏(写真左)

石角友愛氏(以下、石角) 凸版印刷というと紙やパッケージなどの「印刷の会社」というイメージがあったのですが、今はテレビCMなどで「DXに強い会社」として打ち出しをされていますね。経済産業省の「DX認定事業者」、東京証券取引所の「DX銘柄」にも選ばれています。これには、やはり紙からデジタルへという時代の変化が影響しているのでしょうか。

柴谷浩毅氏(以下、柴谷) おっしゃる通りですね。弊社は1900年の創業以来、印刷を中心に事業を展開してきました。ですが印刷市場は1990年代にピークを迎え、2000年代に入ってからは右肩下がりです。2019年の市場規模はピーク時の6割を切っています。この衰退を見ていて、従来の印刷事業だけで生き残っていくのは難しいと考えるようになりました。そこで現在、事業ポートフォリオの大転換を図っています。

石角 21年に発表された中期経営計画のことですね。

柴谷 はい。2021年度は既存事業が全社営業利益の4分の3程度を占めていましたが、今後は海外生活系やフロンティアビジネス、そして「Erhoeht-X(エルヘートクロス)」というDX事業を重点事業として伸ばしていきます。特にDX事業は25年度には全体の3割程度まで拡大することを目指しています。

石角 先ほど印刷市場は1990年代がピークだったというお話がありましたが、いつごろからデジタル関連事業に取り組み始めたのですか。

柴谷 2000年ごろから社内には「従来の印刷事業は、いつかなくなるのではないか」という危機感がありましたね。そこで2001年に電子チラシサービスの「Shufoo!(シュフー)」を始めるなど、デジタルのサービスも展開するようになりました。一方で「そうはいっても、印刷はなくならないだろう」という見方は根強く、印刷とデジタルを併走させる状態が続きました。その状況が大きく変わったのが17年です。

石角 17年に何があったのですか?

柴谷 印刷事業の数字がガクンと落ちました。大きな事件や社内外の問題があったわけではなく、しばらく何が原因なのか分かりませんでした。ですがお客さまへの聞き取りを進めてみると、次第にその背景らしきものが見えてきたのです。

17年はちょうどスマートフォンやタブレット端末などのデジタルデバイスが一通り普及したタイミングでした。そして弊社のお客さまの多くがデジタルの活用を始めていたのです。当時はあくまで“お試し”であって、全面移行するつもりはなかったようですが、我々に与えたインパクトは大きかった。社内からは「本格的にデジタルに軸足を移していかなければまずいのではないか」という声があがり始めました。

新しいビジネスモデルを社長に直訴

石角 “お試し”とはいえ、一度デジタルの魅力を知ってしまえば、顧客企業がそちらに移行してしまう可能性はありますよね。御社ではどういった対応を取られたのですか。

柴谷 本気でデジタル関連の事業を開発・展開していこうと、17年秋に当時社内でデジタルに携わっていたメンバーが有志で集まって「T-DX(Toppan Digital Transformation)プロジェクト」を発足させました。毎週、夜遅くまでDXについて議論を重ね、当時の金子眞吾社長(現会長)と経営企画本部長だった麿秀晴専務(現社長)にDXビジネスに関する提案をしました。このT-DXが現在のDX事業「エルヘートクロス」の原型です。

石角 17年からDXを本気で考えられていたというのは、日本の大企業としてはかなり早いですね。当時の社長にはどういった内容を提案されたのですか?

柴谷 「データの収集」「データの分析」「サービスの提供」の3つの機能を統合した「データ駆動型ビジネスモデル」の展開です。

「データ収集」については、すでにICカードやRFID(近距離無線通信を用いた自動認識技術)などのものづくりを行っており、実行できる基盤はありました。「サービス提供」も、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)ビジネスを展開しており、実績があります。一方で「データ分析」については社内に機能がありませんでした。そこで新たに「データ分析」の機能をつくることで、3つの機能を一体化したビジネスモデルが構築できると考えたのです。

石角 DXの核心をついたモデルですね。3つがそろえばトータルで顧客企業をサポートできます。新たに構築する必要のあるデータ分析についても、御社の数万社の顧客基盤を最大限活用できます。

ただ、私がこれまでさまざまな企業のDXのアドバイスや実装サポートを行ってきた中で、印刷などの受注型ビジネスを続けてきた企業が提案型のビジネスに乗り出す際、社内に基盤がなく苦労されるケースが多い印象があります。

柴谷 このビジネスモデルは、ITソリューションと既存のBPOを融合させたものです。つまりゼロから提案型ビジネスを始めるのではなく、BPOの延長でデータ分析を行う位置づけなのです。

BPOを行っていると、お客さまの現場の情報やデータに触れる機会は少なくありません。そこで許可を得たうえでそれらの情報を分析して、活用方法を提案する。そして提案を見たお客さまから正式にご依頼いただいた場合には、コンサルタントまで踏み込んで展開していきます。

石角 なるほど。BPOに軸足を置きつつデータ活用やコンサルなどの上流工程のサービスにつなげていくのですね。御社の強みを生かした、とてもいい流れですね。

「トップの旗振り」がDX推進の原動力に

石角 データ分析や提案を行うためには、DX人材やAI人材が不可欠です。最近はこの分野の人材ニーズが高く、確保には苦労されているのではないでしょうか。

柴谷 そこは目下の課題になっているところです。長年BPO事業を展開してきたおかげで、この分野に関しては優秀な人材を多数抱えています。ただBPOで得られたデータを分析し、経営のコンサルまで行う部分に関しては、専門的な知見を持つ人材が必要です。社内でも人材育成を進めていますが、外部サービスの活用も含めて検討しているところです。

石角 データ分析ができる人材がいないという相談は、私もよく受けます。ただ外部にデータコンサルティングサービスを提供する場合でも、まず社内の処理能力を知っていることが非常に大事だと考えています。そのためには社内でのDXに関する理解と、部署間の連携が欠かせません。

全社的に売り上げが下がるなど危機的な状況にあるならまだしも、きちんと利益を出している部門もある場合、「うまくいっているのに、なぜ今DXを進めなければいけないんだ?」という声も出てくる思います。御社が社員の意識改革をし、ここまでDXに舵を切れた秘訣は何でしょうか。

柴谷氏によると、凸版印刷のDXの秘訣はトップが旗振りをしたことだという

柴谷 一番の理由は、トップが旗を振ったことだと考えています。先ほど、T-DXプロジェクトは当時の社長である金子に直接提案をしたと説明しましたが、それが17年12月初旬のこと。そして同じ月の仕事納め式の挨拶で、金子が社員に向かって「これからはデジタル事業に舵を切らなければいけない」と突然発言したのです。

石角 提案した月にですか? すごいスピードで決断されたのですね。

柴谷 私も驚きました。DX推進の流れは19年に麿が社長になってからさらに加速し、21年5月に発表した中期経営計画では「DX」と「SX(サステナブルトランスフォーメーション)」がキーコンセプトと位置づけられました。

石角 トップが明確にDXに力を入れると打ち出しているとなると、否定的だった社員も向き合わざるを得なくなりますね。やはり心理的なプレッシャーは大きかったのではないでしょうか。

柴谷 毎月、事業部は社長に事業報告を行っています。その際、DXに関して何も報告することがなければ気まずい思いをするでしょう。ただ、最初は社長報告のためという動機だったかもしれませんが、実際にお客さまへの聞き取りなどしてみるとDXへの関心が強いことが分かります。すると関心が薄かった社員も徐々に手応えを感じ、18年ごろからは自主的にDXを意識して動くようになっていきました。

石角 上から強制されるのではなくDXの面白さに気づき、自らDXに関わるようになったことで、社内の理解が進んだのですね。

柴谷 もう一つ、DXを加速させたポイントが予算です。麿社長の就任後、これまで年間200億円だった研究開発投資予算が300億円に増額されました。増額分の100億円がDXビジネス創出の原資となったのです。

社長が旗を振り、予算もしっかり確保されている。そうなると背中を押された現場の社員たちも楽しくなり、どんどんチャレンジをするようになりました。初年度こそ予算が余りましたが、今では実行するものを選ばなければいけないほど多数の提案があがってきます。

(後編へ続く)

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00509/00019/

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

NEWSLETTERパロアルトインサイトの
無料ニュースレター

毎週水曜日、アメリカの最新AI情報が満載の
ニュースレターを無料でお届け!
その他講演情報やAI導入事例紹介、
ニュースレター登録者対象の
無料オンラインセミナーのご案内などを送ります。

BACK TO MEDIA
« »
PAGE TOP