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凸版が印刷技術をメタバースで徹底活用 – 日経クロストレンド連載

2022/06/14 メディア掲載実績, 日経クロストレンド 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

凸版が印刷技術をメタバースで徹底活用 エンジンとなる新部署も – 日経クロストレンド連載 ダイバージェンス時代のDX戦略 第19回

ポストコロナを迎える今、各業界をリードするイノベーターたちはDX(デジタルトランスフォーメーション)をどう考えているのか。人工知能(AI)開発と実装を現場で見ているAIビジネスデザイナーの石角友愛氏がトップ経営者や専門家と、具体的かつグローバルな議論を展開する。前編に引き続き、凸版印刷執行役員でDXデザイン事業部長の柴谷浩毅氏にDX事業拡大が実現できた秘訣や今後の事業展開について聞いた。(対談が実施されたのは2022年4月12日)

▼前編はこちら
凸版印刷がデジタルに転換できた秘訣 印刷からDXビジネスへ

石角友愛氏(以下、石角) 凸版印刷がDX事業を中心とした事業ポートフォリオへとドラスチックに転換していくに当たり、社員の意識改革が大きかったというお話をお聞きしました。ただゼロからDXビジネスを考えるのは簡単ではないと思います。どのように事業を創出していったのでしょうか。

柴谷浩毅氏によれば、凸版印刷は印刷会社から「情報を加工する産業」への転換を目指しているという

柴谷浩毅氏(以下、柴谷) 今、当社では印刷会社から「情報を加工する産業」への転換を目指しています。一般的に印刷事業というと、顧客から受け取った原稿を印刷するなどして製品化し、納品することだけが仕事だと思われがちです。ですが実際には、その周辺には膨大な情報加工業務があるのです。例えば原稿作成のサポート、レイアウトなどのUI/UXの設計、色彩再現の管理、ICカードやDM作成における個人情報の処理、イベントの運営代行、コンテンツデータのアーカイブ化などです。

媒体が紙からデジタルに置き換わっても、こういった情報加工業務がなくなるわけではありません。また、もともとこれらの業務はデジタルとの親和性が高く、弊社では1990年代にはデジタル化を進めた技術の下地もありました。そこで情報加工業務に最新のデジタル技術やデータを活用し変革するようにしました。飛び地に行くのではなく、今いる場所、抱えている事業を生かす。軸足を入れ替えるということのため、社員にとっても抵抗は少なかったと思います。

石角 ゼロから生み出すのではなく、既存の業務を変革していったのですね。情報の加工という自社のコア、競争優位性を理解していたからこそできたことだと感じます。

柴谷 我々は「デジタルトランスフォーメーション」ではなく、「ビジネストランスフォーメーション」という考え方をしています。デジタル技術を活用することが目的ではなく、デジタルの時代に合うように、自社のビジネスを変えていく。この認識も影響していると思います。

石角 DXの本質は「デジタル化」ではなく、ビジネスや組織、人を「トランスフォームすること」にあります。最近アメリカでは「デジタルトランスフォーメーション」ではなく、「デジタルビジネストランスフォーメーション」という言葉を使おうという動きが出てきているくらいです。使う言葉一つで、受け取る側の意識も大きく変わってきますからね。

柴谷 興味深いですね。凸版印刷でもDX事業を推進する部署を最初は「デジタルビジネス開発本部」という名称にしたのですが、多くの社員から「DXは単純にデジタルビジネスを開発することではないのでは」と指摘を受けました。確かにその通りですよね。それもあって現在は「DXデザイン事業部」に名称を改めています。

石角 社員のみなさんは、こちらが思っているよりもきちんとDXの本質を理解されていたのですね。面白い。ちなみに部署名に「デザイン」が入っているのはなぜですか。

柴谷 このデザインは「アート」ではなく「構想」や「設計」の意味で使っています。デジタルの時代に合わせてビジネスを変えていくためには、新しくエンジンとなる商品を開発していかなければいけません。DXデザイン事業部は、そのエンジンの企画開発を担う部署と位置づけています。

石角 我々の会社でも、AIエンジニアやデータサイエンティストなどと一緒にプロジェクトを推進する人材を「AIビジネスデザイナー」と呼んでいます。DXを推進するうえでは、こういったつなぎ役の存在が大事だと感じています。

柴谷 その意味では、DXデザイン事業部はお客さまと直接やりとりをする部門とは違い、最前線から一歩引いた位置にいるので、それに近い存在だと思います。

使いやすいサービスで利用拡大

石角 DXデザイン事業部は部署や業務をまたいで横串のプロジェクトに転換していく役割も担っているそうですが、部署の壁もあるので業務やデータの一元化は大変なのではありませんか。

柴谷 そこは試行錯誤しているところです。例えばエレクトロニクス事業にはセンサーをつくる技術が、生活産業には包装材や機能性フィルムをつくる技術があります。これらのいろいろな要素を統合すれば、新しいソリューションが生み出せるでしょう。

既存の部門はこれまでの印刷事業の中で生まれた区分なので、デジタルの時代に合わせて見直す必要はあると思っています。そのままでは、どうしても印刷事業の延長で考えてしまいますからね。そこでDXについてはDXデザイン事業部に事業を一度集約し、どの要素を組み合わせたら時代のニーズにマッチしたサービスが生み出せるか、より大きな事業構想を打ち出せるか検討するようにしています。一歩引いた立ち位置ならではのメリットだと捉えています。

石角 DXデザイン事業部が“エンジン”という話ですが、各部門とはスムーズに連携できているのですか?

柴谷 コミュニケーションは密に取るようにしています。やはりマーケットや顧客のニーズをきちんと理解しているのは、フロントの事業部ですからね。

印刷は受注産業で、これまでは事業部が顧客からの要望を聞き取り、注文通りに商品を作ってきました。ですがそれでは汎用化が進みません。そこでパターン化を進め、汎用的に展開できるビジネスモデルに転換できるように取り組んでいます。

よりリアルなメタバース空間の創出をサポート

石角 OCR(光学式文字読み取り)などのDX関連技術は、あらゆる業界・業務に適用できるのが特徴です。顧客からの要望を踏まえながら、一つの業界・企業だけでなく、より広い視野を持ち、他に活用できる場所はないかと考える。つまりサービスモデル化していくことが今後大事になってくると思います。DXデザイン事業部は、まさにそれに取り組まれているということですね。

ただ、汎用化することでこれまで受注型で進めてきた顧客との見解の相違もあったのではないですか。

柴谷 そういう問題も発生しましたね。汎用的なサービスとして製造DX支援ビジネスの「NAVINECT(ナビネクト)」の提供を開始した当初は「いいサービスではあるけれど、自社には合わない」というお客さまが多数でした。一方で、お客さまに合わせてサービスをカスタマイズすると、高額な費用が発生してしまいます。

石角 汎用化で起こり得る問題ですね。どのように対処されたのですか?

柴谷 2年ほどかけて、マイクロサービス化しました。小さいサービスをたくさんつくり、組み合わせてご利用いただくことで、お客さまそれぞれのニーズに柔軟に応えられるようにしました。その結果、使いやすさが増し、ナビネクトの採用は増えてきています。

石角 メタバースに関する取り組みについても聞かせてください。

柴谷 凸版印刷はメタバースをビジネスの場にすることを目指し、現在2つの軸で展開を進めています。1つ目はアバター関連です。アバターは不正利用が大きな不安要素です。本人確認ができる仕組みがなければ、なりすましなど不正利用が起きてメタバース自体の信頼を揺るがしかねません。そこで本人認証のためのツールとして、電子透かしとNFT(非代替性トークン)を活用したサービス「AVATECT(アバテクト)」をつくりました。今後どのメタバースでも使えるようにしていくつもりです。

もう1つは、メタバースサービス基盤の「MiraVerse(ミラバース)」です。メタバースを始める際に必要なさまざまな機能を整備しました。特に色や質感、縮尺などの再現にはこだわり、臨場感のあるメタバース空間をつくり出します。

表現力がさらに増せばメタバースの没入感は高まる、と話す石角友愛氏

石角 私も最近メタバース上で仕事をしたのですが、PCのキーボードを打つ自分の手まで表示されて、とてもリアルでした。色や質感の表現がさらに高まれば、より没入感が増しそうです。凸版印刷が印刷事業で培ってきた技術が生かされる部分ですね。

柴谷 その通りです。メタバースで見た商品の色と手元に届いた商品の色が違っていたらクレームにつながります。印刷会社としてリアルな色や質感を再現する部分は、特にこだわってシビアに作り込んでいくつもりです。香りまで再現できるように研究を重ねていますよ。

石角 感性の部分は、デジタルで表現するのが難しいといわれている分野ですからね。そこが表現できれば、今後新たなサービス展開もできそうです。では最後に、DXを通して凸版印刷が目指す未来像、DXを進めたい企業へのアドバイスをお願いします。

柴谷 DX推進のためには、まずこれからどういう事業展開をしていきたいかというビジョンを持つことが大事だと思います。デジタルはビジョンを実現するための一つの手段にすぎません。当社は情報を加工する産業として「社会的価値創造企業」になることを目標としています。昔は社会貢献とビジネスは相いれないものでしたが、現代では同じベクトル上で考えられます。ビジネスと社会貢献を両立した事業モデルの構築を目指して、これからもさまざまな挑戦を続けていくつもりです。

石角 単純に自社のビジネスを成功させるだけではなく、社会貢献も実現するというのはSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・企業統治)といった世界的なトレンドの中では大事な部分ですね。今後の展開も期待しています。本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00509/00020/

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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