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見える化で年間1.5億円の節電 誰でもカイゼンできる仕組みづくり – 日経クロストレンド連載

2023/07/04 メディア掲載実績, 日経クロストレンド 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

見える化で年間1.5億円の節電 誰でもカイゼンできる仕組みづくり – 日経クロストレンド連載

ネットやモバイルと同等、あるいはそれ以上の革新をもたらす技術として生成AI(人工知能)が広がりつつある。急激な変化の時代が続く中、トップ経営者や専門家は何を目指していくのか。旭鉄工(愛知県碧南市)代表取締役社長の木村哲也氏との対談後編はデータの見える化によるCO2(二酸化炭素)削減の手法、人材育成の考え方などを聞いた。(対談は2023年4月21日)

旭鉄工が設立したシステム会社i Smart Technologies(愛知県碧南市)のIoTシステム「iXacs」で2022年に13年比26%の電力消費量削減に成功したという

▼前編はこちら
老舗車部品メーカーが挑むIoTのDX トヨタ式で年間4億円を削減

1カ月半でCO2排出量の95%が見える化

石角友愛氏(以下、石角) トヨタ自動車は「環境チャレンジ2050」の中で、2030年までに工場からのCO2排出量を13年比で35%減らすという目標を掲げています。旭鉄工を含めた1次サプライヤーも削減を求められていますが、どのような対策をされていますか。

木村哲也氏(以下、木村) すでに26%の電力使用量の削減を実現しています。これには我々が開発したIoT(モノのインターネット)システム「iXacs(アイザックス、前回記事を参照)」を活用しています。iXacsはもともと設備の稼働状況をモニタリングするシステムだったのですが、21年9月ごろ、私が急に「電力とガスの使用状況を見える化したい」と言い出したところ、エンジニアがすぐにその要望に応えてくれました。1カ月半ほどでシステムが完成し、自社のCO2排出量の95%を占めている電力とガスの使用量を見える化することに成功しました。

石角 CO2の見える化を1カ月半で実現するとは、優秀なソフトウエアエンジニアがたくさんいらっしゃるのですね。

木村 いえ、ソフトウエアエンジニアは1人です。通常、システム関連の細かい部分は外注しているのですが、CO2の見える化は、iXacsのシステムを流用することで、外注しなくても比較的簡単に構築できました。

石角 みんなが使えるシステムにするためにはデータを集めて集計するだけでなく、見やすいグラフにするなどの作業も必要ですよね。そこまでエンジニア1人でできるものなのでしょうか。

木村 既存のシステムで稼働データは取っていたので、新たに電力やガスの消費量を計測する機能を追加しました。そこから算出した電力とガスの使用量をCO2排出量に変換すれば、リアルタイムで変動が分かります。グラフなどシステムのUI(ユーザーインターフェース)の部分は、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のBI(ビジネスインテリジェンス)ツール「Amazon QuickSight(アマゾンクイックサイト)」を使っています。

旭鉄工社長の木村哲也氏(上)と米パロアルトインサイトCEO(最高経営責任者)の石角友愛氏(下)が対談した

石角 なるほど。コアの部分は社内でつくり、UIは外部サービスを活用することで、エンジニア1人でも対応できたのですね。IoTの取り組みを聞いていて、多数のエンジニアを抱えていらっしゃるのだと思い込んでいました。ですがエンジニアの平均給与はどんどん上がっていて、1人増やせばコストも跳ね上がる。その観点からも上手なやり方だなと思います。

木村 システム単体ではなく、それをどう活用するかというコンサルティングのほうに強みを持っています。ですのでそちらによりコストをかけたいという思いもありますね。

待機電力削減で1.5億円分節電

石角 ただ電力やガス使用量の見える化サービスは、すでにさまざまな事業者が提供しています。iXacsはそれらとどう違うのでしょうか。

木村 一般的な見える化サービスは、自分たちでデータを入力しなければならないうえに、それだけでは電力消費量の低減にはつながりにくいんです。一方、資金力のある企業はすべての設備に電力計を付けて消費量を実測していますが、数値を取っただけではどこにどんな問題があるのか分かりません。

石角 確かに、ただ電力消費量が表示されるだけではそれが良いのか悪いのか判断できないし、改善方法もつかめませんね。

木村 その通りです。見える化すべきは数値ではなく問題なんです。それを可能にしたのがiXacsです。やり方としては、まず持ち運び可能な電力計を使って、工場で1日分だけ電力を実測します。それを用いて稼働のリアルタイムデータから電力消費量を計算するモデルをつくります。あとは日々センサーで取得される設備の稼働データをそのモデルに入れることで、電力計がなくてもリアルタイムで電力消費量が算出できます。実測との誤差は1%程度です。

石角 電力を測るのが1日だけで済むなら導入しやすいですね。しかも精度も高い。

木村 ここまで精度が高いとは、私たちも驚きました。ただ精度よりも大事なのは、設備の稼働状況と電力消費量のデータを組み合わせることで、稼働していないときにどのくらい電力が消費されているか、つまり待機電力が分かるという点です。最初にデータを取ったとき、全体の消費電力の3分の1を待機電力が占めていると判明しました。

石角 3分の1ですか? それはかなりの割合ですね。

木村 調べてみると「1日の終わりや昼休みなど、製造ラインの稼働が終わって再度稼働が始まるまで、機械の電源を入れっぱなしにしていたために無駄な電力を消費していた」といった事例がたくさん見つかりました。そこでアナログですが電源ボックスに「作業終了時は電源OFF」という掲示をするなど、現場主導でこまめな節電を徹底していきました。

ある製造ラインでは生産終了後も機械の電源を付けっぱなしにしていたのですが、節電を徹底した結果、2カ月後には電力消費量を6割削減できました。会社全体としては、22年は13年比で26%の電力消費量削減に成功。これは今の電気代で計算すると約1.5億円分です。

金メダリストではなく市民ランナーを育て

石角 ここまで無駄を削減するためには、従業員の協力は不可欠だったと思います。節電ができたらインセンティブを与える、逆に電源を切り忘れたらペナルティーを科すなどの対策はされたのですか。

木村 いえ、そういったことはしていません。ただ節電を頑張れば、その結果がデータへ如実に反映されるので、だんだん面白くなってくるようです。成果が出ればそれをカイゼン報告に盛り込むことができるので、私もたくさん褒めるようにしています。ここはちょっとしたインセンティブになっているかもしれませんね。

石角 見える化によって、従業員の節電意識にも変化が表れているのですね。カイゼン報告会の内容は社内のSlack(スラック、ビジネスチャットツール)で共有されているというお話でしたが、節電方法も共有されているのですか。

木村 はい、節電をはじめとしたカイゼン事例はリスト化して共有しています。特定の場所のカイゼンを進める場合には、リストにやるべきことが網羅されているので、これを活用すれば抜けもれなくカイゼンができるはずです。

石角 新しく入った方も、これを見ればやるべきことが分かりますね。ノウハウをそれぞれの現場が抱え込むのではなく、共有するカルチャーが素晴らしいと思います。

ノウハウを共有し、一般の社員に理念を広く伝える旭鉄工の取り組みを評価する石角氏

木村 私がトヨタ時代に3年ほど働いた生産調査部は、トヨタ生産方式をマスターした、いわば“金メダリスト”を育てる部署でした。ですが業務のカバー範囲が広く、育成には手間も時間もかかり、ノウハウもそれぞれの頭の中にあってあまり共有されていませんでした。

社内では事例を積極的に共有し、カイゼンの際はまずこれをチェックするように徹底しています。取り組む範囲も「サイクルタイムを1秒短くする」など、できるだけ狭く設定します。すると普通の従業員でも達成できるんです。そうやってカイゼンの“市民ランナー”を育てています。

石角 たった1人の金メダリストではなく、たくさんの市民ランナーを育てるという考え方は、多くの企業経営者の参考になると思います。では最後に、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進め方が分からず悩んでいる中小製造業の方々にアドバイスをお願いします。

木村 中小企業は費用や人材も限られているため、「できない」と思って諦めていることはたくさんあると思います。ですが、最初から大きな成果を求めず、まずはやってみることが大事です。そうしなければ何も見えてきません。挑戦をする中小企業が増えてくるといいなと思っています。

石角 やる前に「失敗したらどうしよう」「ちゃんと結果が出せるのか」と成果を考えてしまいがちですが、そこは考えすぎずにやってみる。ものづくり企業ながらIoT、システム外販と挑戦してきた旭鉄工だからこそのアドバイスですね。本日は幅広いお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

(写真提供/旭鉄工、パロアルトインサイト)

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00509/00040/

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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