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味の素が目指す社会変革 「食のDX」で細分化するニーズに対応 – 日経クロストレンド連載

2023/08/18 メディア掲載実績, 日経クロストレンド 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

味の素が目指す社会変革 「食のDX」で細分化するニーズに対応 – 日経クロストレンド連載

ネットやモバイルと同等、あるいはそれ以上の革新をもたらす技術として生成AI(人工知能)が広がりつつある。急激な変化の時代が続く中、トップ経営者や専門家は何を目指していくのか。AIビジネスデザイナーの石角友愛氏がトップ経営者や専門家と、具体的かつグローバルな議論を展開する。味の素副社長の白神浩氏との対談後編は、同社が進める食のDXなどについて議論した。(対談は2023年5月17日)

味の素副社長の白神浩氏(上)と、米パロアルトインサイトCEO(最高経営責任者)でAIビジネスデザイナーの石角友愛氏が対談した

▼前編はこちら
味の素の「うま味」から絶縁材へ プロセスイノベーションに活路

4つのステージで進める味の素のDX

石角友愛氏(以下、石角) 味の素は経済産業省と東京証券取引所が選定する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2022」に選定されました。具体的にどのようなプランの基にDXを進めているのか、教えてください。

白神浩氏(以下、白神) 当社ではDXをまず4段階に分けました。DX1.0は「全社オペレーション変革」で、企業価値を向上させるためのさまざまな取り組みを行い、DX2.0の「エコシステム変革」では、各事業を成長させていくためのエコシステム構築や社内マネジメント変革を進めます。DX3.0は「事業モデル変革」です。

2030年のゴールとして、DX4.0「社会変革」を掲げています。私たちはDXを「社会のデジタル変容」と捉えており、デジタルを活用して企業と社会を変革することを目指しています。これは経営の基本方針であるASV(Ajinomoto Group Creating Shared Value)をベースとしています。

石角 ちょうど今、DX3.0「事業モデル変革」を始められた段階だと思います。事業モデル変革はCIO(Chief Innovation Officer、チーフ・イノベーション・オフィサー)である白神さんの担当領域ですが、どういったことを進めるのですか。

白神 DX3.0では、アミノサイエンス部門で10年から進めてきたコモディティー化した事業を高付加価値事業へと転換する事業モデル変革の例を「型化」し、食品など含めた全社の事業に展開していくつもりです。

石角 食品の分野では、あまりDXが進んでいないイメージがあります。

白神 モダニティー(近代性)のスピードという点では食品はややスローで、デジタル変容はまだまだこれからだと感じます。食品は当社の中核事業ですので、こちらについても事業モデル変革は必須です。そのために検討を進めているところです。

2030年にありたい姿からのバックキャスト(逆算)

石角 アミノサイエンスで培った事業モデル変革のノウハウを食品事業に生かすために、ナレッジ(知識)共有など両事業が連携しやすくなるような仕組みはありますか。

白神 当社では縦軸、横軸からなるDX推進体制をつくっています。縦軸では各事業部がそれぞれの強みを徹底的に高め、横軸では各事業が参加する委員会などで事業部連携を図り、事業成長や新規事業の創出につなげます。

私は「事業モデル変革タスクフォース」を担当しており、CDO(最高デジタル責任者)がリードする「全社オペレーション変革タスクフォース」、そして「DX推進委員会」とともに、事業を横串でつなげることに取り組んでいます。

石角 両タスクフォースやDX推進委員会とは、どのように連携をしているのですか。

白神 定期的にミーティングするなどして、戦略のすりあわせをしています。味の素グループが一丸となって取り組んでいくためには、軸となるものが必要です。そこで3つの「持続的成長戦略」を策定しました。1つ目は、食品やアミノサイエンスなど重点6事業の確実な成長。2つ目は、食品とアミノサイエンスの融合や事業モデル変革により成長をドライブしていくこと。3つ目は、30年以降も成長し続けていくために、次世代事業の創出など先を見据えた布石を打っておくことです。

石角 今、目の前にあることだけでなく、DXのゴールである30年以降のことも考えて施策を進めているのですね。

白神 そうですね。DX3.0では現在の事業モデルを変えていくことに加えて、30年以降どんな会社になっていきたいのか、ありたい姿からバックキャスティング(逆算)して、それを実現するために取り組むことも大事だと考えています。

石角 どういった“未来の味の素”の姿を描いておられるのか、気になります。

白神 それを検討するため、2年ほど前に「未来創造プロジェクト」を立ち上げました。このプロジェクトには若手から管理職まで、さまざまな事業のメンバーが参加し、30年の味の素の姿について議論しました。

プロジェクトからたくさんの素晴らしいアイデアが生まれたため、まずそれらを「地球環境」「社会システム」「人・生活者」「イノベーション」に分類。当社が独自の価値を創出できそうな領域を探しました。その結果、「ヘルスケア」「フード&ウェルネス」「ICT(情報通信技術)」「グリーン」の4つを味の素グループの「成長領域」と位置づけました。

石角 どれも今後の世界を考えたうえで非常に重要な領域だと思います。4つの中でも「フード&ウェルネス」と「グリーン」など、相互にリンクする領域もありそうですね。

「食のDX」で細分化する食のニーズに対応

石角 最近、欧米ではプラントベースフードが話題を集めていますが、プラントベースミートを提供する米ビヨンドミートの株価が下落するなど、トレンドの変化も激しいと感じます。培養肉は普通の肉に比べて価格が高いこともあり、個人的には30年に培養肉や培養魚が当たり前になっているかというと疑問です。白神さんは30年に、世界の食はどういった状況になっているとお考えですか。

白神 まずプラントベースプロテインなどのブームは、ファッション的な要素が強く、一時的な現象だと捉えています。ですが、30年には、おいしさや健康・栄養価値はもちろん、加えて、精密発酵生産やカルチャーミート(培養肉)などのイノベーションも進みます。地球との共生、食文化の継承、一人ひとりの嗜好や価値観の尊重といった価値も加えた、新しい食のスタンダードが生まれていると思います。

石角 完全栄養食や中食など、食に関してはここ数年で大きな変化が起きました。30年には白神さんがおっしゃったような、個人の食のニーズに対応することが当たり前になっているかもしれませんね。そういった未来を見据えて、食の分野でどのようなDXを進めているのでしょうか。

白神 デジタル化が進んだことで、生活者の食の嗜好や健康に関する情報が集めやすくなりました。そこで各種アプリやWebサービスから得られたデータを当社の「食のDX」エンジンに集め、独自のアルゴリズムのもとにそれらを解析。新しい価値の提供につなげていくというプラットフォームの構築を目指しています。

石角 「食のDX」プラットフォームとは、興味深いですね。アウトプットとしてはBtoB(企業向け)、BtoC(個人向け)、どちらを考えているのですか。

白神 BtoC、BtoBtoC(企業間取引の先に消費者をつなぐ事業)、あるいはD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)向けですね。当社ではこれまでラージマス(大きな市場)向けの調味料や食品を提供してきましたが、今後はよりセグメント分けされたソリューションも提供していきたいと思っています。例えば、食の嗜好や個人の持つ課題に合わせたミールキットの開発です。

石角 ビーガンやナッツアレルギー、ダイエット中など、制約条件やこだわりを入力することで、それぞれに合ったおすすめのミールキットが提案されるといったイメージでしょうか。

白神 おっしゃる通りです。協業しているスタートアップが、健康状態や体調などに合わせておすすめのレシピを紹介するアプリを開発しています。それをミールキットなどと組み合わせることができればと思っています。

石角 面白いですね。中食や外食の企業との提携など、今後広がりが出てきそうですね。

米国は多民族国家で、宗教やバックグラウンドが違うため、食にも制約条件を持っている人が多くいます。食のサービスはそれを前提に構築されているため、ビーガンの人向け、筋肉を増やしたい人向けなど、メニューやサービスが細分化されています。でも日本はまだそこまで対応できていません。例えば、ビーガンの人は基本的に魚を使った料理は食べないため、かつお節や煮干しでとっただしはNGです。でも動物性のだしを使わない日本食はかなり限られていますよね。

日本でも今後米国のように多様化が進み、食のニーズが細分化していく可能性があります。それを考慮した製品づくり、サービス設計が必要になると考えています。

日本でも米国と同様の食の多様化やニーズの細分化が進む可能性があると指摘する石角氏

白神 そうですね。ただ個人的にはプラントベースプロテインなどは、もっとおいしくできると思います。「味の素」はうま味をプラスしつつ、減塩にもつながります。味や香りなどおいしさの感覚を統合的に分析する「おいしさ設計技術」など、培ってきたアミノサイエンスの技術を活用することで、食の細分化が進んでいく中でも、健康や栄養などの面でもっと貢献できると思っています。

社員の8割がDX学習

石角 では最後に、DX人材の育成やリスキルに関する取り組みについて教えてください。

白神 DX人材育成については、全社員を対象とした「ビジネスDX人財育成コース」をつくりました。初級・中級・上級の3段階があり、社員が自己の希望によって受講しています。取り組みを始めて4年で、約8割の社員が受講しました。

石角 8割はすごいですね。受講に対して何かインセンティブ(報酬などの動機付け)があるのでしょうか。

白神 いえ、まったくありません。もともと当社では人材育成を重要視していて、社員が自ら今後のキャリアを描き、それを目指して自発的に行動していけるように、会社として積極的に支援しています。

石角 なるほど、社員の自発性を促す人事システムがあったことで、DXについてもそれぞれが自分のキャリアを考え、受講を選択したのですね。

白神 これまで事業モデル変革を進めてきた中で、「自分にはデジタルの素養が必要だ」と感じた社員も多かったのだと思います。

石角 最近リスキルが注目されていますが、社員側からは「ただでさえ忙しいのに、今リスキルをする意味が分からない」という声をよく耳にします。会社から勉強しろと強制されると、気が進まない気持ちもよく分かります。一方で大企業の担当者からは「一定のインセンティブを示さなければ、社員に新しいことを学んでもらえない」という嘆きが聞こえてきます。

強制せず、インセンティブもないのに、社員が自発的に勉強をされている。それは素晴らしいと思います。

白神 当社ではマネジメントと社員の対話を積極的に進めていて、私も年間50回以上、若手社員と対話しています。マネジメント側も社員側も、忙しい中でも自己実現やより大きな理念を創出するために「やること」「やめること」をきちんと決めて取り組んでくれています。

石角 お話を聞いていて、社内でもプロセスイノベーションを起こされているのだと感じました。本日はありがとうございました。

(写真提供/味の素、パロアルトインサイト)

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00509/00042/

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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