エリート大学の卒業資格はかつて、就職活動において絶大な優位性を誇っていました。しかし最近の採用市場では、ハーバードやイェール、プリンストンといった名門校の学位が必ずしも歓迎されない状況も増えてきています。むしろ、それが採用の妨げになる場合すらあるのです。こうした変化の背景には、企業が候補者を評価する基準の変化や、社会におけるエリート大学に対する見方の変化があります。
エリート大学の卒業資格に対する批判の要因として、金融アドバイザー企業CG Financial GroupのCEO、チャーリー・ギップル氏は、「エリート大学出身者が理論的な知識には優れている一方で、実践的な問題解決能力に欠ける」と指摘しています。同氏は、エリート大学卒の社員が顧客の課題に「教科書的なアプローチ」で取り組む傾向があると述べているのです。また、名門校はしばしば「覚醒(woke)」やエリート主義と批判されることがあり、卒業生が自らの学歴を開示する際に否定的な反応を受けることも少なくありません。さらに、学内での言論の自由が損なわれているという懸念も広がり、名門校卒業資格の価値に影響を及ぼしています。
こうした背景の中で、多くの企業が採用基準を見直し、エリート大学以外の人材にも目を向けています。コンサルティング大手のマッキンゼーやベインでは、候補者の大学名を伏せた面接や、問題解決能力を測定するゲームなどを活用しています。この方法は、名門校卒の候補者だけでなく、隠れた才能を持つ人々を発見する目的があります。また多くの企業が、学歴以上に「実際のスキル」や「現場での実績」を重視するようになりました。例えば、地方の小規模な大学の卒業生や、学業成績ではなく実務経験に重きを置く採用基準が増えています。
それでもなお、エリート大学の卒業資格はそのネットワークやブランド力によって多くの分野で有用であり続けています。しかし、それが逆効果を生む場合も少なくありません。特に若い世代では、エリート大学の「特権性」や「現実離れ」への批判が強まっています。この風潮は、一部の業界でエリート大学出身者を敬遠する動きにつながっているのです。
エリート大学の卒業資格は、依然として強力な武器である一方で、その価値が問われる時代が到来しています。学歴を基準とした採用から実績やスキル重視の採用へのシフトは、企業にとっても求職者にとっても大きな変化をもたらしています。ビジネスリーダーや採用担当者にとって、今後は学歴だけでなく、実践的な能力や多様なバックグラウンドを評価する視点がますます重要になるでしょう。そして求職者にとっては、自らのスキルや経験を前面に出すことで、エリート大学出身者の壁を乗り越えるチャンスが広がるかもしれません。
参考:https://www.wsj.com/us-news/education/ivy-league-education-jobs-a897807d |