米国最大の民間雇用主であるWalmartが、多様性・公平性・包括性(Diversity, Equity, Inclusion, 以下DEI)プログラムの一部を縮小する決定を下しました。この動きは、右派の圧力に応じた企業の対応として注目されており、企業社会全体に広がる影響が予測されます。今回の決定は、人種的公平性に関する社員向けトレーニングの廃止や、供給業者の多様性向上プログラムの評価見直しが主な内容です。この決定の背景と影響について詳しく見ていきましょう。
2023年12月の発表にて、Walmartは主に4つのプログラムを見直しました。1つは「社員トレーニングの停止」です。これは人種的公平性を重視した社員トレーニングとなっており、企業内の人種間格差を埋めるための取り組みの一環でした。そのほかにも「供給業者多様性プログラムの見直し」や「イベントやマーケットプレイスの変更」「人種的公平性センターの継続停止」など、格差やトランスジェンダーに関する取り組みに制限がかかった内容となっています。
Walmartの今回の決定は、他の企業にも波及効果を及ぼす可能性があります。すでにHarley-DavidsonやJohn Deereなどの企業が同様の動きを見せており、DEIに関連する取り組みを見直す動きが加速しています。その一例が「DEI投資の減少」です。2020年のジョージ・フロイド事件を契機に、多くの企業がDEIプログラムに約75億ドルを投資しましたが、政治的・法的圧力を受け、DEIに対する関心は低下傾向にあります。例えば、Bud Lightはトランスジェンダーインフルエンサーとの提携後にボイコットを受け、大きな売上減少を経験しました。
一方で、多様性の欠如がビジネスパフォーマンスに与える悪影響は、数多くの研究で示されていることでもあります。企業が本当に成功を目指すのであれば、短期的な圧力に屈するのではなく、持続可能で包括的なアプローチを採用する必要があります。社会の価値観が進化する中で、企業はどのようにして全てのステークホルダーを満足させるか、慎重に検討していくべきでしょう。
参考:https://edition.cnn.com/2024/11/25/business/walmart-dei-rollback/index.html |