近年、AI技術は研究者や専門家の手を離れ、一般の学習者や教育現場にも急速に浸透しています。特に高等教育の分野では、AIが単なる補助的ツールにとどまらず、学生たちの「日常的な学習パートナー」として機能し始めています。Anthropicが公開した最新の「Education Report」は、こうした現象に対して初めて本格的な実証データを用いた大規模調査を行いました。
調査によると、AIツール「Claude」の利用はSTEM(科学・技術・工学・数学)分野の学生によって主に先導されています。特に顕著なのがコンピュータサイエンスの学生で、米国における学位授与数のわずか5.4%を占めるに過ぎないにもかかわらず、Claudeを使った会話の36.8%を占めていました。これは、プログラミング支援やコードのバグ修正など、Claudeの得意とする技術領域との親和性の高さが影響していると考えられます。
一方、ビジネス・医療・人文学といった非STEM系分野の学生たちは、相対的にAIツールの導入が遅れていることが判明しました。例えばビジネス分野では、学位授与数の18.6%を占めているにも関わらず、Claudeに関する会話はわずか8.9%にとどまっています。このギャップは、AIリテラシーや認知度、あるいは課題の性質によってAIツールの有用性が異なることを示しているかもしれません。
そしてClaudeの利用目的を分析すると、最も多かったのは「創造的アウトプットの生成」(39.3%)でした。これは、エッセイの編集、学術的な要約、練習問題の作成といった活動を含みます。次いで「技術的な説明や問題解決」(33.5%)が多く、数学やプログラミングの課題解決に活用されていました。
しかし同時に、AIへの依存が学生の思考力や問題解決能力の発達を阻害する懸念や、不正利用といった倫理的問題も無視できません。教育機関としては、単にツールの利用を制限するのではなく、AIとの健全な協働関係を築くための教育的アプローチが必要になるでしょう。学習とは何か、評価とはどうあるべきか、そしてAI時代における「本物の知性」とは何か。こうした問いへの答えを模索することこそが、次世代の教育設計にとって最も重要な課題となるかもしれません。
記事元:https://www.anthropic.com/news/anthropic-education-report-how-university-students-use-claude
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