人工知能の分野で最も注目されている企業の一つであるOpenAIが、経営構造に関する重大な方針転換を発表しました。当初予定していた営利企業への全面移行を見送り、非営利組織が引き続き経営の中核を担う形を維持するというのです。この動きは、OpenAIの創業理念やAIの公共的価値に関する議論を呼び起こしており、技術と倫理のバランスを問う重要な局面となっています。
今回の発表によれば、OpenAIの非営利母体は今後も営利部門(PBC)の株式を保有しつつ、意思決定権を握り続けることになります。この新体制では、引き続きMicrosoftを含む既存投資家との関係は維持される一方で、新たな資金調達の仕組みも導入される予定です。営利部門の構造変更は継続され、利益上限の撤廃などによって、今後もAI分野での競争力を維持するための資金を確保する狙いがあります。
また特筆すべきは、日本のソフトバンク・グループが3月に発表した最大400億ドルの資金調達ラウンドが、OpenAIの営利化を条件としていた点です。この条件が変わったにもかかわらず、アルトマン氏は「資金調達には影響がない」と述べており、OpenAIのブランド力や技術力の強さが伺えます。
とはいえ、この新体制については依然として不透明な点が多く、批判の声も根強く残っています。OpenAIの元倫理アドバイザーであり、市民団体「Not For Private Gain」の主導者であるペイジ・ヘドリー氏は、「新体制で非営利の使命が法的に優先されるのかは不明確であり、営利化によって技術の所有権や利益配分が曖昧になる」と警告しています。
今回の決定によって、OpenAIは投資家からの信頼を維持しつつ、公共の利益を掲げた元々の使命に立ち返ることになります。ただし、このバランスは常に揺れ動くものであり、外部からの監視や内部統治の透明性が不可欠です。今後のAI業界全体においても、技術が誰のために、どのように使われるべきかという問いに真摯に向き合う必要があることを示しているでしょう。
記事元:https://www.reuters.com/business/openai-remain-under-non-profit-control-change-restructuring-plans-2025-05-05/
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