AI開発の最前線をめぐる競争が激化する中、Meta(旧Facebook)はAI分野での巻き返しを図るべく、データ処理とAI学習基盤の先端を担うスタートアップ「Scale AI」に対し143億ドルを投資すると発表しました。この出資はMetaにとって、WhatsAppの買収に次ぐ歴史的な大型ディールになります。
Metaが今回立ち上げる新たな組織「Superintelligence Lab」は、研究開発拠点を超え、未来の超知能(superintelligence)を見据えた戦略的拠点になることを目指します。これにより「OpenAI」や「Google DeepMind」「Anthropic」といったAI分野の先行企業に対抗する姿勢を見せるでしょう。
この新部門を率いるのは、Scale AIの共同創業者でありCEOであった28歳のアレクサンドル・ワン氏です。彼はAI業界内外で「ビジョナリー」として注目される人物であり、Meta内でもすでにそのリーダーシップが高く評価されています。ワン氏は一部のScale AIの社員と共にMetaに加わり、同社のAI能力を根本から再構築する役割を担う予定です。
Scale AIは、高精度なAIモデルを訓練するための大量かつ質の高いデータ整備に特化した企業であり、OpenAIをはじめ多くの企業のAI訓練に携わってきました。Metaがこの企業に着目したのは、自社のAIモデル「Llama 4」が競合製品に比べて技術面で劣後しているという危機感からでしょう。「人工汎用知能(AGI)」の実現に近づきつつある現代において、精緻なデータとそれを活用するモデルトレーニング能力は、今後のAI技術進化にとって決定的な要素となります。
Metaの今回の投資は、単なる資本提携にとどまらず、AI競争の新たな局面を象徴する出来事です。AIを次の経済成長のエンジンと見なす企業が多い中、Metaは自らの技術的遅れを認識し、より強固で柔軟なパートナーシップ戦略に舵を切った形です。これにより、AI開発の未来像、特に「超知能」という究極の目標に向けた技術アプローチが一段と多様化することが予想されるでしょう。
記事元:https://www.nytimes.com/2025/06/12/technology/meta-scale-ai.html?searchResultPosition=2
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