ジェネレーティブAI(Gen AI)は、メールの下書きやレビュー作成など、日々の業務を迅速かつ高品質に仕上げる力を持っています。ハーバードビジネスレビューによる最新の研究では、この技術を活用することで作業効率が大幅に向上し、より洗練された成果物が得られることが示されました。しかしその一方で、AIの支援を受けた後に非支援タスクに戻ると、従業員のモチベーションが低下し、退屈感が増すという心理的な代償が明らかになっています。
研究によれば、AI支援後の非AIタスクにおいて、内発的動機は平均11%低下し、退屈感は20%上昇しました。これは、AIが作業の認知的負荷を軽減する一方で、「自分の仕事を自分でコントロールしている」という実感を弱めてしまうためです。人間は主体的に考え、創造することに充実感を見出す傾向があり、それをAIが代替してしまうと、仕事そのものの意味ややりがいが薄れてしまいます。
ただし、この影響はすべての人や職種に一様に表れるわけではありません。例えばプログラマーにとっては、AIがコードの基礎部分を代行してくれることで、より複雑な設計や創造的な作業に集中でき、むしろやりがいを感じることもあります。また、営業職では、事務的な作業をAIが担うことで、人間らしい関係構築に時間を割けるようになり、満足感が高まるケースもあります。
こうした違いは、業務の性質や個人の価値観によって左右されます。AIを単なる効率化ツールとして導入するのではなく、従業員のモチベーションや仕事への充実感を維持するための「共創パートナー」として活用する設計が求められます。AIの力を活かしつつ、人間らしさを失わない業務デザインこそが、これからの働き方の鍵となるでしょう。
記事元:https://hbr.org/2025/05/research-gen-ai-makes-people-more-productive-and-less-motivated
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