米アップルは新製品発表イベントで、これまでのiPhoneとは異なるコンセプトを持つ「iPhone Air」を発表しました。最大の特徴は従来よりも大幅に薄型化したデザインで、従来モデルより3分の1も薄く、素材には高級感のあるチタンが採用されています。一方でカメラはシングル仕様、バッテリー容量も小さくなるなど、スペック面では機能が削ぎ落とされました。しかし価格は999ドルと高額に設定されており、Appleが「機能」よりも「所有欲」を刺激する方向に舵を切ったことがうかがえます。
同時に発表されたiPhone 17シリーズでは、カメラやバッテリーの改善が行われ、Proモデルには新デザインが採用されましたが、大幅な革新には至りませんでした。むしろ注目すべきは、AppleがProモデルの素材をチタンからアルミニウムに変更しつつ、価格を引き上げた点です。これは販売台数が頭打ちの中で収益を維持するための戦略的判断といえるでしょう。高価格化に対して消費者が買い替えを控える傾向が強まるなか、Appleがいかに新たな購買動機を創出するかが焦点となります。
さらにApple Watch Ultraの新モデルやAirPods Proのアップデートも発表されました。特にAirPods Proは、リアルタイム翻訳機能や心拍センサーを搭載することで、単なるオーディオ機器からウェアラブル翻訳・健康デバイスへと進化を遂げています。Apple Watchも衛星通信や睡眠スコア機能を搭載し、日常生活や健康管理に直結する新しい付加価値を提案しました。これらの機能拡張は、スマートフォン市場が成熟するなかでAppleがAIやヘルスケア領域へ軸足を広げていることを示しています。
今回の発表を総括すると、Appleは「ハードの限界」と「ブランド力の維持」の狭間で戦略を模索していることが明らかになりました。iPhone Airのような所有欲を刺激する製品は短期的に注目を集める一方、長期的にはAIやヘルスケアといった実用性の高い分野での革新が不可欠です。消費者にとっては、単なる買い替えではなく「ライフスタイルを変える価値」を見出せるかどうかが今後のポイントとなるでしょう。
記事元:https://www.nytimes.com/2025/09/09/technology/apple-iphone-17-air-airpods.html
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