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シリコンバレー発イノベーションラボの成功条件 – ビジネスインサイダー寄稿

2018/06/01 メディア掲載実績, ビジネスインサイダー 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

「丸投げオープンイノベーション」では世界は変えられない —— シリコンバレー発イノベーションラボの成功条件

shutterstock

パロアルトインサイトCEOの石角友愛です。ここ数年の日本企業で多く見られるようになったのが、オープンイノベーションを扱う新しい組織です。企業により名称こそ違いますが、基本的にはその位置付けは「トップダウンで会社全体のイノベーションを担う組織」です。先日大手日本企業のオープンイノベーションセンターを訪問してきたのですが、トップのリーダーが自ら指揮を取り「自社の課題をオープンにしていく時代だ」と言っていました。

社内外の人材が交流するこうした施設は、数年前に一気にもてはやされました。形ばかりの施設運営というケースもありますが、一方で最近のトレンドとして見受けられるのは、事業会社が自社の中に存在するビジネスの課題を抽出して、その答えをオープンイノベーションセンターで扱うスタイルです。重要なのは、課題に対する答えを外部連携に丸投げで求めるのではなく、

(1)答えを出すまでのアプローチを細分化(課題のモジュール化)して

(2)各スタートアップや教育機関などの異なるコミュニティーと連携して解決する

という設計にあります。今回はオープンイノベーションの本質とその成功条件について、シリコンバレーの目線でお話したいと思います。

成功条件(A)課題のモジュール化と、オープンイノベーションに求めることを明確にする

国内でもオープンイノベーションラボと名付けた施設を設置する例は近年増えている。写真は「31VENTURES KOIL(柏の葉オープンイノベーションラボ)」の一角(編集部)。

アメリカで見られるオープンイノベーションラボの成功事例は、事業会社が主体で運営しているものも、センター主体のものもあります。共通しているのは具体的な経営課題を解決するためにある、ということです。

例えば米大手化粧品小売業のセフォラ社は、化粧品業界には珍しくサンフランシスコに本社を置き、セフォラオープンイノベーションラボを2015年に開設しました。ラボの位置付けは、「化粧品の情報を消費者にいかに的確に届けるか」という課題を解決する技術を集める場所、と非常に明確です。長年課題だった化粧品を試せないという課題に対して、VRベンチャーModifaceと連携して、バーチャルアーティストというVRアプリをオープンイノベーションラボ発で開発しました。

これは私もユーザーの一人ですが、とてもVRの性能が高く、色々なタイプのメイクアップがVRで試せて(例えばまつげ一つとっても長さがそれぞれ違い、私が瞬きをするとちゃんとまつげも一緒に画面上で動く)セフォラのデジタルイノベーション戦略の重要な存在です。


バーチャルアーティストアプリ画面。下の色々な化粧タイプを選ぶとその瞬間に自分の顔にその化粧が施される。気に入った商品は画面上で購入できる。全く化粧をしていなくてもVR技術で写真のようになる。

成功条件(B)データサイエンティストコミュニティーを活用する

日本国内でもデータを豊富に持つ企業からデータサイエンスを得意とする「Kaggle人材」獲得戦がはじまっている。写真は4月にSansan本社で開催された勉強会「Kagglerが伝える、Kaggleの楽しみ方」。
写真:伊藤有

企業が自社の課題を解決するために外部連携を求める場所は実際のイノベーションラボのような物理的な場所である必要はありません。

最近日本でも注目されはじめた「Kaggle」(カグル)は、世界中の優秀なデータサイエンティストと課題をデータで解決したい企業が集まるバーチャルコンペサイトです。

例えば、メルカリもKaggleでコンペに参加しています。その依頼内容は「メルカリプラットフォーム上に出品される商品の買値を予測するモデルを開発してほしい」というもので、実際に過去の商品の売値と買値のデータをKaggle上で公開しています。

メルカリのKaggleコンペの内容。

コンペに参加したデータサイエンティストの中で、一番精度が高いモデルを作ったチームが優勝、賞金やその他特典を手にすることになります。一方、メルカリ側には、その精度の高いモデルを手にすることができます(メルカリの場合、賞金総額が10万ドル、同時にメルカリ社からの就職面接にご招待、という特典付きでした)。

Zillowのコンペ。賞金総額は日本円にして1億円以上。

不動産売買を促すマッチングプラットフォームZillowも同様に、家の売値と買値を予測するアルゴリズムをコンペに出しており、その賞金額はなんと120万ドル(約1億3050万円)。会社の競争力に直結する非常に大事なタスクを、オープンイノベーションで作っている好例です。

こうした形でより良いモデルを求めていることは、会社のブランディングにもなる側面があります。例えば私の知り合いのデータサイエンティストは、

「Kaggleでコンペを出している会社Aと、コンペを出していない会社Bがあれば、会社Aの方がイメージランクは高くなる」

と言っていました。それは、自社内のデータサイエンス能力の有無とは一切関係なく、その企業が何をやっているかの透明性が得られ、データサイエンスで問題解決をしようとしていることが分かるからだ、と言います。

成功条件(C)研究結果は積極的に公開する

https://www.paloaltoinsight.com/membership-checkout/?level=4
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パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

※石角友愛の著書一覧

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