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書評:Cal Newportの「Deep Work」
2020/07/09 ブログ 
by 長谷川貴久 

Cal NewportのDeep Workという本を読みました。この本の主題は、「深い仕事」をできる人間がより高付加価値を生み出すようになり、どうすれば深さを持った仕事ができるようになるかという内容です。この本の中で深い仕事としているのは、100%の集中力を長時間持続して初めて可能となる創作物というような定義となっています。本や論文を執筆する、大規模なビジネスの企画を作り上げる、刀鍛冶をする、新しいスキルを身につけることなどのことが深い仕事の例として挙げられています。

私もパロアルトインサイトの仕事の中で、文章を書いたり、プログラムを書いたりすることが本業なので、深さについては良く考えます。特にAI診断などをするときは、どっぷりとお客様のビジネスやデータに浸かりながら、最も価値を最大化するためのAIとは何かを考えなければいけないので、気が散った状態ではとても書き上げることができません。本書で面白かったのは、深い仕事の仕方として4つのタイプを紹介していることです。

  1. Monastic:このタイプはスタンフォードの名誉教授であるDonald Knuth氏が実践する方法で、修行僧のように全ての神経を深い仕事に注力する環境を整備し、それにつながらないことは徹底的に排除するというやり方です。彼が有名なのはEメールを一切しないということです。彼の書籍に対して質問やフィードバックがあれば、手段はたった一つ、郵便で手紙を郵送して、それをアシスタントが取り集めて3ヶ月に一度バッチ処理をするとのことです。他にもこのタイプでメールを毛嫌いする小説家なども紹介していました。ただしこれらの手段は一握りの人間が実践できるものであって、普通の人が「明日からメールはやらない!」と宣言したら仕事がなくなってしまうので、この方法は一般人にはおすすめできないと書いていました。ただし、ここで一つ重要な示唆は、いかにこういう人たちがメールや会議などの行為を毛嫌いするかという点にあります。それらの行為自体も時間を取るし、メールを見るとどんな些細な内容でも脳の中の一部をメールが支配することになるので、いざ100%の集中力を発揮したいと思う時もその集中力を発揮できないことが問題であるとしています。
  2. Bimodal:哲学者のユングなどはこの方法をとっています。一年のうち、大半は社会的な関わりを持ちながら授業を教えたり何かしらのコミュニティ活動をするが、夏などの間の短期間で自らが設計した石の塔に閉じこもり、一切の外界との繋がりを断ち深い仕事を成し遂げるという方法です。似たような事例でビルゲイツも年に1週間は「Think Week」といって、普段の仕事とは違った本を読んだり考えたりするためのまとまった時間をとって深い仕事をするということを実践しています。
  3. Rythmic:これはコメディアンのSeinfeldが実践している方法です。「良いコメディアンになるには良いジョークを創作する必要がある。良いジョークを作るためには、とにかく毎日ジョークを書き続けることだ。仕事場のよく目に着くところにカレンダーをおいて、ジョークが書けた日には大きくバツ印を付けるといい。そのバツが連鎖になれば、後はその連鎖を続けて、リズム良く続けることだ。」これは例えばGithubでプログラムを保管する時も見られるやり方で、プログラミングをした日はカレンダーに色がつくようになっています。その色がずうっとつながっていくと、その連鎖を続けていくことが楽しくなるので、しめたものです。
  4. Journalist:これは筆者自身がやっているやり方らしいです。トップジャーナリストの多くは、「深さ」に到達するための助走期間をあまり必要としないことが多く、例えば家族とリラックスしていたかと思うと、30分だけ仕事してくると言って10枚くらいの原稿用紙を一気に30分で書き上げて帰ってくるという芸当ができるらしいです。ただしこの境地に達するためには、やはり「書くこと」を相当練習した状態だからこそできることであって、いきなりこれの真似をしようとしても、中々高い集中力を持続することができないだろうとしています。

本書のもう一つの特徴は、どれだけメールやSNSなどの技術が深い仕事の邪魔をするかについて、単に時間のロスの観点ではなく、脳科学の観点からアプローチしていることです。特に面白かったのが、「ちょっとメールチェック」の癖を治せという内容でした。店で並んでいる時や、ふとした待ち時間の時にメールチェックは私もよくやっていましたが、本書を読んでからなるべくその衝動を抑えて、待ち時間はあえてボーッとするということを実践しています。脳科学の観点から、このボーッとするという行為が非常に脳の中のシナップスを起こすために重要で、その代わりにメールなどの浅い行為をしてしまうと、脳が深い仕事をするための能力が損なわれてしまうらしいです。深い仕事をするための筋肉みたいなものが脳の中にあって、「ちょっとメールチェック」や「ちょっとフィードチェック」といった行為がこの筋肉を退化させていくということでした。

他にも実践しやすそうな工夫や、面白い事例などがたくさんあったのでおすすめです。

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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