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日経クロストレンド 石角友愛×松尾豊東大教授対談連載 第8回「クリアすれば1000万円? ”起業クエスト”で本気の起業家を育成」

2020/09/10 メディア掲載実績 
by 関口 美和 

クリアすれば1000万円? 「起業クエスト」で本気の起業家を育成


米国でGAFAらビッグテック企業が脅威となる中で、どうすれば高い倫理規範や社会性を持った起業家を育成することができるか。松尾研究室で挑戦しているのが、新たな教育プログラムの作成だ。最初にAI(人工知能)を学び、リーダーシップや法律、会計なども身に付けられる「起業クエスト」で、次世代の起業家を育てる仕組みを作ろうとしている。パロアルトインサイトの石角友愛CEO(最高経営責任者)と、東京大学大学院工学系研究科・松尾豊教授の対談の後編。

前編はこちら

石角 フェイスブックをはじめとしたビッグテック企業は昔から脅威ではありました。ただ、公聴会に呼ばれるなど今回やり玉に挙がったのは、「大きくなりすぎた」という点でしょうか。要するに、(前編で取り上げた)「Mindf*ck」であるように、フェイスブックが社会のインフラと化し結果的に政治と密着し、ものすごく強い権力を持つようになってしまったということ。月間30億人という人々の全ての情報を集約するプラットフォームが一企業によりコントロールされていることに対する懸念というのは、ここ数年で強まってきているようです。

松尾 そうですね。

石角 特に「Mindf*ck」の件以降、プラットフォーマーだからといって、フェイスブックほどの規模になってしまうと、単純に「中立に徹して介入しない」とは言えないのではないか、という風潮になっています。例えば、ザッカーバーグ氏は、「われわれはファクトを消す側の立場の人間ではない」と言って、ヘイトスピーチにつながるようなトランプ大統領の発言をフェイスブック上でそのまま表示させておきました。この対応は物議を醸し、フェイスブックが言論の自由に対する理想論が根強いシリコンバレーに本社を置くといえども、広告主からのボイコットなどにつながる問題にまでなったのです。

松尾 フェイスブックが「大きくなりすぎた」という点は否めませんが、結局、ビッグテック企業の“脅威”を社会が監視しようと思って、公聴会に呼び出して話を聞くというのはあまり意味がないように感じます。

石角 確かに。公聴会に呼び出すのは、心理的なプレッシャーをかけるというパフォーマンスなのかもしれません。

松尾 パフォーマンスにとどまらず、本当はアルゴリズム的に問題がないかをチェックする仕組みが必要だと思います。アルゴリズム的な新しい監査制度というんですかね。あと、どこまでやってよくて、どこまでやってはいけないのか。きちんとした線引きをするのが大事です。

ある意味、「商品を買わせる」ための、よいマーケティングというのは、ほとんど洗脳に近いもの。昔から企業はあの手この手を使って躍起になっていることです。一方で、商業的なことと政治的なことは、やっぱりだいぶ異なる話だと思います。データや新しい技術を政治的な目的に使ってよいのか。どこまで使ってよいのか。それに対して有権者は知らされる権利があるのではないか。民主主義の根幹を成す部分との線引きはしっかりすべきだと思います。

石角 なるほど。公聴会に呼び出すのであればアルゴリズムのチェックが的確に行われているかなども追及していただきたいものですね。今回のように議会に呼び出す行為は、政治的な意味と社会的にはすごくインパクトは大きかったと考えます。

アルゴリズムのチェックというフレームワークで言うと、グーグルのリサーチチームが書いた論文“Model Cards for Model Reporting”に、「モデルカード」というのがありまして、とてもいいなと思っています。このモデルカードは、AIモデルを作る際に特定のアルゴリズムについての簡潔な情報を提供するフレームワークです。このドキュメントは、モデルのパフォーマンスや制約などを客観的に記載する重要性などについて書かれています。開発者はどのモデルをどういった目的で、どのように開発するのが責任あるやり方なのかなどについて、より的確な判断を下せるようになります。

松尾 モデルを使う人がこれを見てうまく判断できるようになるということですね。

石角 はい。モデルを開発する側も開発する前にモデルカードのフレームワークに沿って、モデルのデザインをすれば倫理的な問題も回避できるのではないかというのがあるようです。

松尾 なるほど。いいですね。

石角 そうです。どういうデータを使ってモデルのトレーニングや検証をしたかも分かります。フレームワーク化されたものに沿って取り組めばいいので、開発者側もやりやすいと思います。

松尾 分かりやすいです。昔から、例えば食品業界で「遺伝子組み換えでない」のような、メーカーと消費者の分かりやすい「約束」に当たるようなものが、AIでも必要だろうなとずっと思っていたのですが、それに近いですね。取り組んでいる内容が「モデルカードと違ったらおかしい」というチェックもできますね。

石角 はい。後からチェックができます。やはり、ケンブリッジ・アナリティカの問題が表に出た以降は、フェイスブックをはじめグーグルなども会社の中で、AIに関しての専門家委員会や第三者委員会のようなチェック機関を作るようになりました。社内の第三者組織などが独自に設ける基準やメトリックス、フレームワークに基づいて判断をする、仕組み作りが必要だと感じたのでしょう。「Mindf*ck」の著者であるクリス・ワイリーも言うように、IT業界もイノベーションを促進させながらも自分たちが取る行動や、自分たちが作るプロダクトに対しての責任感が、社会的な影響も含め、求められる時代になったのだと思います。

松尾 そうですね。やはり、モデルを開発する側もチェックする側も責任感を持って取り組むことです。そこを追求しながら議論すべきだと考えます。

社会性と倫理を理解した“マーク・ザッカーバーグ”の誕生を期待

石角 日本の場合は、まだまだ起業家の数も少ないですし、先ほどの“責任感”を議論する前にどんどんトライしてもらいたいですね。とはいっても、米中間のデジタルウォール問題をはじめ、米国政府によるビッグテック企業への規制強化はますます進むことでしょう。そんな環境下で、日本では起業家が面白いことをやりたいと思っても、母集団も少ないまま規制ばかりが強化されてしまう懸念がありますね。日本の起業家を松尾先生のゼミでもたくさん育成されているということですが、このような懸念される環境下でどのように生徒さんに教えていらっしゃるんですか?

松尾 最近は、起業家を育成するための教育プログラム「起業クエスト」というものを作ろうとしています。起業家になるためには、どういう要素を身に付けたらいいかというのを設計して、それをゲームのようにクリアしていくとステージが上がるといった内容のものです。例えば、第1ステージをクリアしたら第2ステージに。第2ステージをクリアしたら第3ステージにと。それぞれステージに上がるためには、こういうノルマを達成しないと先に進めない。そういったストーリー的なカリキュラムを作っています。

石角 RPGのようなものですか?

松尾 まさにそうですね。だから、インセンティブの設計も大事です。ここまで進んだらご褒美をあげるからといった内容。理想的には、ここまで行ったら、無条件で1000万円くらい投資を受けられる権利をもらえるという仕組みとつなげたいです。

石角 面白いです!

松尾 このところ、今の時代に身に付けるべき必要なスキルというのは何かとずっと考えているのですが……。もちろんAIのスキルも必要ですし、Web的なものや、どういうサービスを作ればいいのかと考えるスキルも必要。この他、世の中全体の仕組みや交渉術、リーダーシップ、法律、会計に関することなども身に付けるべきです。全て複合的に身に付けられるに越したことはないのですが、座学だけで身に付くものでもありません。どういう経験をし、何を学べば起業家になれるのか。これから学生には指針のようなものを提示していきたいと考えています。

石角 とても実践的な方法でビジネススクールの教育に近いと感じます。だからこそ、先生のところに起業したい人たちがたくさん集まってくるのですね。起業家志望の生徒さんたちに初めてお会いした際、最初に尋ねる質問は何でしょうか?

松尾 「何がしたいの?」と聞きますね。まずは目標や方向性を聞かないと前には進めません。いずれにしても、最初のステップとしてAIの勉強をしてもらいます。

石角 AIの技術的な勉強をするのですか?

松尾 そうです。技術的な勉強をして、まずはプログラムを書けるようになってもらいます。次に、企業との共同研究、共同開発のプロジェクトに入って、そこで修業を積みなさいと。リーダーができるようになるまで頑張りなさいというのがここでの目標です。プロジェクトリーダーができるようになると、企業やメンバーへの対応など、いろいろなことが分かってきますから。そこで、自分で営業して案件を取って来られるようになると、一通りチームを回せるようになります。さらに、どういう方向に行くかという自分なりの会社としての戦略や事業計画のようなことを考えられれば、おおむね起業できる状態になっていきます。そこからどうプロダクト化していくか、どういう方向に伸ばしていくかというのをやっていきます。このようなステップを踏んでいくのです。

石角 起業できる状態になるまで、どれくらいのスパンがかかるんでしょうか?

松尾 今のところは2~3年ほどです。もう少し短縮できると思っています。ただ、今活躍している起業家の人たちが、だいたい先ほどのステップを経て成長していますから。そこのステップ、パスの設計というのももっとクリアにして、自分がどこの状態にいるのか、何を次に学べばいいかというのを分かるようにするといいと考えています。そうすれば、優秀な学生はたくさんいますし、短期間で駆け抜ける学生が出てくることを期待しています。中には、大学1年生でも「会社作りました」という子も出てくるかもしれませんね。

石角 いいですね。東大で松尾先生のゼミから社会性と倫理を理解したマーク・ザッカーバーグみたいな、天才的なハッカー、起業家が出るといいですね。

松尾 僕も社会性や倫理ともに大事だと思います。

石角 とうとう、そういう時代に立ったということですね。やはり、やりたい、あるいは技術的に可能だから単純にトライするのではなくて、私たちが問題解決のためにやるべきだからやるというミッションステートメントが今求められていると感じます。だから、ジュラシックパークに出てくる数学者のイアン・マルコム博士が言うように、「何ができるかに夢中になるのではなく、それをすべきかどうかを考えないといけない」ということ。まさしくそのフェーズに私たちは今います。すごく期待しており、楽しみです。

 

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。また、毎日新聞「石角友愛のシリコンバレー通信」、ITメディア「石角友愛とめぐる、米国リテール最前線」など大手メディアでの寄稿連載を多く持ち、最新のIT業界に関する情報を発信している。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com
※石角友愛の著書一覧

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