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日経クロストレンド ダイバージェンス時代のDX戦略 第2回/デジタル庁平井卓也大臣が語る、格差を作らない“デジ道精神”

2021/09/03 メディア掲載実績 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

デジタル庁平井卓也大臣が語る、格差を作らない“デジ道精神”

AIビジネスデザイナーの石角友愛氏がトップ経営者や専門家と、具体的かつグローバルな議論を展開する連載の第2回目。9月1日に発足したデジタル庁の平井卓也大臣が語る、日本の価値基準におけるデジタル化の進め方を指すコンセプト「デジ道(どう)」とは何か。平井大臣×石角友愛氏の対談の後編。

<前編はこちら>

誰一人取り残さない“デジ道”の精神

石角 私が、シリコンバレーの最先端のAI技術やDXの考え方を、日本企業の、特にCTOがいないような中小企業に導入しようとすると「日本の今後はどうなるんだ」などと聞かれます。大臣は、デジタル化の後進国だからこそ、そのアドバンテージを使って前進しようということをよく話されていますが、“日本のアドバンテージ”というのは、どのように考えていけばいいのでしょうか?

平井大臣 日本の“出遅れ”のアドバンテージを最大化するために何が必要かということを考えたときに、米国や欧州、中国のデジタル化を単にまねしてはいけないと思っています。日本のデジタル化というのは一体何なのかと突き詰めていったところで思い付いた言葉が「デジ道」(でじどう)です。

石角 デジ道、面白いですね。具体的に何を指しているのでしょうか?

平井大臣 デジ道は、いわゆる「武士道」になぞらえたもので、日本の価値基準におけるデジタル化の進め方を指すコンセプトです。慶応義塾大学の村井純先生と度々議論を重ねているのですが、例えば「No one left behind」(誰一人取り残さない)、つまり格差を作らないという前提のもと、誰にでもアクセシビリティーがある状態を目指しています。

これは一見、きれいごとに聞こえてしまうかもしれません。海外のデジタル化では、そこから置いていかれる人たちが一定数存在します。米国では、GAFAを中心にシリコンバレーの優れた企業間だけの繁栄モデルであったり、中国にしても国家の監視下によるモデルであったり。実はデジタル化の恩恵を享受してない人たちは農村部などにたくさんいるのです。

石角 確かに、インターネットを使わない、あるいは使えない人がいます。

平井大臣 日本のデジタル化は、誰一人取り残さない形を本気で進めていこうとしています。困っている人がいたら助けることとセットでデジタル化を整備していきます。米国型や中国型とは全く違います。お年寄りから、地方に住んでいる人まで、全ての国民にメリットが行き届くようにするというのが我々の目指すデジタル化なのです。

石角 素晴らしいビジョンですね。

平井大臣 ただ、実際に国民全員がデジタルを使いこなすことは難しい。例えばスマートフォンを国民全員が持つということは、無理な話です。

石角 確かに、私の両親もまだ使いこなせていません。

平井大臣 だとしたら、ご両親がやりたいことを、スマートフォンをお持ちの方が助ける必要があるわけです。つまり、誰一人取り残さないデジタル化というのは、デジタルの空間だけでは完結しません。困っている人と信頼関係を築いた上でフォローをするといった、いわゆるハイタッチなサポートとのセットで、日本のデジタル化をやっていきます。

石角 すごく大事なポイントだと思います。AIを日本企業に導入する際は、AIを開発する側が常に歩み寄らないといけないと私も考えています。より高度な技術だけを作っていればユーザーがついてくるというのはシリコンバレーの考え方ですが、そうではなくて、やはりAIを作っている側が分からない側に歩み寄る姿勢が大事です。そのためには「AIビジネスデザイナー」という職種が必要だと感じるのです。AIやDXの技術論で話をするのではなく、なぜそれがあなたにとって大事なのかという、“ユーザーの私事”に落とし込むための語り口で話をすることが重要だと思います。

平井大臣 おっしゃる通りです。結局、AIのテクノロジーを全ての人が理解できるわけではありません。重要なことは、ユーザーが困っていることや、やりたいことを実現するために、AIがどう貢献するかです。AIを理解していない人にも、AIによってもたらされる幸せな空間やサービスを提供できたなら、それはものすごく素晴らしいことです。

石角 台湾の“天才デジタル担当大臣”ことオードリー・タン(唐鳳)政務委員も、「AIというのはアーティフィシャル・インテリジェンス(人工知能)ではなくて、アシスティブ・インテリジェンス(補助的知能)であるべきだ」と著書で語っています。少子高齢化が進む台湾では、スタートアップの若者(青)と年配者(銀)がコラボレーションしてイノベーションを行っていく「青銀共創」という取り組みが盛んです。

平井大臣 オードリー・タンさんがおっしゃっていることがまさに我々が目指すところです。アナログ空間を無視していては、デジタル化は成り立ちません。

失敗から学ぶことを知る

石角 本来デジタル化というのは、人間に寄り添わなければなりません。そこで思うのが、スタートアップの若者と地方の高齢者の方、あるいはスマートフォンを使えない方、FAXでやり取りしている方たちとつなげられないかなと。こうした歩み寄りのチャンネルを作るといった政策など具体的に考えていらっしゃいますか?

平井大臣 デジタル化自体が目的化してしまっている状況の中では、両者の歩み寄りのチャンネルを作ることは難しいと考えます。まず、日本のデジタル化の弱点は、データが色々なところで分断され、つながっていないということ。つまり、end to endのものは色々とあっても、データの連携がされていないために最大のパフォーマンスを発揮できないのです。

それは政府が20年に打ち出した特別定額給付金(新型コロナウイルス感染症緊急経済対策関連)の支給事務でも言えることで。国民1人に10万円を配るだけのことであんなに右往左往するのは恥ずかしい。いかにスピード良く給付金を配るかを考えてデジタル化を進めていたら、10分の1くらいのコストで、3日もあれば全ての世帯の口座に振り込むことができたはずです。結局、デジタル化自体が目的化してしまい、何がしたいかという部分が抜けてしまっていた状態だったのです。そんな状況下では、エンジニア側とユーザー側の歩み寄りを目指すと言ったところで無理やり感が否めません。何かしたい人と、AI技術をつなげる試みには、やはり石角さんやAIビジネスデザイナーのような方が必要です。

石角 AI技術とAIリテラシーの乏しい人をつなげる役割はすごく大事だと思います。個人的に、AIやDXに関してコンプレックスがある方が多いという印象を持 っています。だからこそ、その人たちを主語にした話もすべきで、その人たちとのつながりを実現することも重要です。ただ、実際のところ、スタートアップの若いエンジニアを中小企業に送り込むのは非常に難しいという問題があります。

平井大臣 その要因は失敗を容認しない風土の存在が大きいですね。みんなでトライして駄目だったら、小さく素早く方向転換したらいいですよね。失敗しても駄目と決めつけてはいけない。なぜうまくいかなかったかというフィードバックから、すごい情報が得られた、学べたとなることが重要です。イノベーションはそういったところから起こるのです。

石角 本当にその通りだと思います。例えば米国のNetflixの場合、いる社員全員が常にプロジェクトに取り組んでおり、失敗が大半を占めているそうです。その失敗を社内で情報共有することによって、失敗することは当たり前なのだという意識醸成につながっているといいます。

平井大臣 Netflixは、今や、2億人超のユーザーを抱える動画配信サービスを展開しています。ビデオレンタル事業という常識を覆し、サブスクリプションやストリーミングといったサービスを思い付いたわけですよね。

石角 そうですね。やはり、現状を当たり前と思わなかったNetflixの共同創業者、CEOのリード・ヘイスティングスの想像力があったからでしょう。そもそもレンタルビデオビジネスというのは、遅延料でもうかっていました。だからこそ、「期日までに返せない私が悪かった」とユーザーに思わせてしまうビジネスモデルでは、顧客ロイヤルティーが生まれないと、彼は気付いたといわれていますね。最後に大臣からDX推進に対してのアドバイスはありますか。

平井大臣 DXは、いきなりやろうと思ってもうまくいきません。まず今までや ってきたことを見直して、どこを変えたらいいかを考えて、そのツールとしてデジタルを使えるかどうかを総点検するところから始めるべきです。同時に、会社が変わり続けなければならないという意識で臨むことも重要です。

石角 DXとは、意識醸成の変革によって生まれる組織の変革やビジネスモデルの変革、そしてそれが恒常的に続くという状態そのものを指すわけですからね。

平井大臣 まさにその通りだと思います。ただ、今は新型コロナウイルス感染が広がり、100年に1度のパンデミックだといわれる中、世界でデジタル化が急速に進んでいます。そうなるとDXも何か慌てて進めないといけないような雰囲気になっていますが、そんな必要はありません。冷静に考えて、10年後、20年後、30年後に自分たちの会社がどうなっていくのか、どうなりたいのかのビジョンや目標を明確にした上で、その目標から逆算して今すべきことをじっくりと進めていくべきだと考えます。

今は世界の変化のスピードに圧倒されているかもしれませんが、決して出遅れを恥ずかしいと思わずに、じっくりとビジョンを考えることから始めていただきたいと思っています。皆さんのポテンシャルをぜひ引き出してください。

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