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日経クロストレンド ダイバージェンス時代のDX戦略 第4回/企業にリストラされる人の特徴 日本の社会は新陳代謝が不可避

2021/09/28 メディア掲載実績 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

企業にリストラされる人の特徴 日本の社会は新陳代謝が不可避

ポストコロナを迎える今、各業界をリードするイノベーターたちはDX(デジタルトランスフォーメーション)をどう考えているのか。人工知能(AI)開発と実装を現場で見ているAIビジネスデザイナーの石角友愛氏がトップ経営者や専門家と、具体的かつグローバルな議論を展開する。冨山和彦氏が「半分入れ替えるべきだ」と指摘する中間管理職層は、今後どうすればいいのか。冨山和彦氏×石角友愛氏対談の後編。

<前編はこちら>

石角 冨山さんは、「エッセンシャルワーカーを中産階級雇用にすることを考えなければだめだ」とおっしゃっていましたが、実際にミドルマネジメント層は今後をどう考えていけばいいのでしょうか。

冨山 ミドルマネジメント層が生き残る方法は2つあると思います。1つは、どんな方法でもいいから会社にしがみついて、役立たずと言われようが、何が何だろうがしがみついてとにかく生き抜く。もし自分がデジタル化とグローバル化の時代にトランスフォーメーションする能力がない、あるいは才能もないと思うのであれば、とにかくあらゆる手段で、会社の中で自分の居場所を探すというのが1つの戦略です。

もう1つの戦略は、先ほど石角さんがおっしゃっていたように、自分自身のトランスフォーメーション、つまり学び直しを真剣にやることです。新たな能力を自分が身に付けられるのであれば、企業の中にも新たな居場所があるかもしれないし、おそらく世の中にいくらでも転職先があります。

石角 なるほど。40代、50代からでも遅くないということですね。

冨山 全然遅くないです。というのは、「今から一流のサッカー選手になろう!」と考えるからややこしくなるわけで。例えば地方の中小企業などに移る際に、そこで求められるのは自前のPythonでプログラミングをする能力ではありません。日本のローカルのサービス産業の生産性はまだ低く、世界と比べたらランキング外がほとんどです。

要するに、未開拓で、深化させられるところがまだいっぱいあるんです。そこでオペレーショナルエクセレンスを確立しようと思ったら、今あるツールを駆使していけば大企業で鍛えられた人はおそらく十分対応できるはずです。

産業構造が変わればジョブシフトが起こる

冨山 例えば、産業革命以前に一番従事者が多かった産業は農業でした。それが100年たった今ではどうなったかというと、農業は担い手が減っています。それと同じ。つまり、産業構造が変わる過程では必ずジョブシフトが起きます。1つのジョブがなくなり、新しいジョブが生まれてくるわけです。例えば、農村の仕事がなくなって、それが工場労働者に置き換わる。米国や英国は、そのときいわゆるエンクロージャー(地主による土地の囲い込み)が起きました。どこでも社会的なストレスというものが発生します。

つまり、そうなるという前提で、企業の形も社会の形も組み替えていかなければならない。それが日本経済団体連合会会長であった中西宏明さんがおっしゃっていた「Society 5.0(ソサエティー5.0)」の本質なんです。本気でやったら、今の日本企業は7~8割方が木っ端みじんになくなってしまうのだということを、実は経団連の企業の皆さんも分かっている。これはイデオロギーの選択じゃなく、産業構造の問題だと僕は思います。本気でやれば、第4次産業革命がそこに起こるはずです。AIなど新しいテクノロジーというのは、エッセンシャルワーカーが働いている領域の生産性を劇的に上げる可能性があるでしょうね。

石角 そうですね。

冨山 工業化社会のプロセスでは、生産性が劇的に上がったわけです。ジェームズ・ワットの蒸気機関から始まって、フォードの大量生産に至るプロセスの中で、ものすごい経済価値が生まれて、多くの人を中産階級まで押し上げることができた。もし、エッセンシャルワーカーの8割の人が働いているような領域の生産性を、AIなどの新しいテクノロジーで劇的に上げられるのであれば、それはまさに産業革命でしょう。

石角 DXやAI推進の中でも、エッセンシャルワーカーの効率化、省人化よりも、働き方改革に直結するエリアで投資をしたほうがいい、ということですか?

冨山 誰かがそういう投資をして、それを中小企業がうまく使えばいい。皆さん、自前で投資するのがいいと思いがちですが、今はレイヤー構造でナレッジの時代だから、お金はいりません。

石角 そのレイヤーの頂点に立ちたがっているような企業、特に大企業は多いと思いますが。例えば、冨山さんの著書でもリクルートやキーエンスなどがすごくいいと書いてありました。

冨山 そうですね。日本の大企業の中にもトランスフォーメーションを本気でやれるだけの収益の源と、本気になれる経営陣を持っている企業にはチャンスがあると思います。企業が本気でトップを取りに行くためには自前でやらないといけません。買収などはお金が必要になります。

さらに“戦い方”が重要。例えば、宿泊業はエクスペディアやカヤックなどのサービスを使って世界中から集客ができるようになりました。昔は絶対不可能だったことが、プラットフォームビジネスの発展で実現できたのです。そしてそれが、サイト側と宿泊業側の相互依存で成り立っています。これからはそういう戦い方をすればいい。

ニューノーマル生活で通勤の無駄に気づく

冨山 スタンフォード大学関係者から聞いた話では、最近では優秀な人の就職のファーストチョイスはベンチャーや創業系の企業がほとんどで、米グーグルや米マイクロソフト、米アップルなどの大手IT企業を選ぶ人は少数派だそうです。それを聞いてはっとしました。GAFAは、今や伝統的な大企業と見なされているのだと。

石角 シリコンバレーでは、創業して20年もたてば、昔の米IBMのような立ち位置になってもおかしくありませんね。

冨山 米国では既にそうなっているし、日本でもこれまでの企業の在り方は音を立てて崩れつつあるわけです。これは、おそらくこのコロナ禍でさらに加速します。サラリーマンとして出世するために往復3時間かけて通勤していたことが、冷静に考えてみたら無意味だと気づいたわけです。その3時間は何も生産していなかったわけだから。

石角 本当にそうですよね。

冨山 そういった意味で、これから変化が加速していきます。地方にいても東京の仕事ができるようになってきましたし、その逆もしかり。そういう時代に変わってきたからこそ、中間管理職層や中堅サラリーマンの生き方の選択肢もすごく広がっています。だから、会社にしがみつくことだけが答えじゃないし、しがみつくとおそらく不幸になる人がこれから激増する時代になるはずです。これはイデオロギーの問題ではなく産業構造の問題です。農業から工業、工業から情報型、情報型からさらにはナレッジに。人間社会の付加価値の源泉のシフトの問題だと考えています。

一番大事なことは、そこに関わっている人間自身がそういった時代の変化に対応し 、人々がどこにお金を出すか、価値を見いだしているのかを見抜くことです。例えば、最近では皆4KのテレビよりもNetflixやAmazonプライムのサブスクリプションサービスにお金を払う方向にシフトしています。ディスプレーも安いものを買うようになっています。

石角 安いものは、質が悪いということはないですか?

冨山 確かに質は良くないかもしれません。でも、その小さな差に価値を求めていないので問題ないのです。だから、生産者としては価値がないものを一生懸命作っても意味がない。私の著書にも書きましたが、時代の変わり目だからこそ、仕事や事業の“原点”というものを一人ひとりが見つめ直さないといけないと考えます。

結局、ビジネスであれ、商売であれ、なぜ成り立っているかというと、世のため、人のために役に立って、そういう「お役立ち」をしていることに対して、「助かったな」と思う人がお金を払ってくれるから成り立っているのです。生まれながらにお金持ちの人は別として、みんなそれぞれ苦労してお金を稼いでいるわけでしょう。苦労して稼いだ大事なお金をわざわざ払ってくれるわけですよ。製品やサービス、エネルギーに対してね。それも原価以上のものを払ってくれるわけでしょう。

写真/Shutterstock

それはすごいことなんですよ。そこに仕事の尊さ、本当の価値があるわけですよね。これこそが、全ての事業と仕事の原点だと思います。こういう時代だからこそ、「自分がやっていることは仕事として成り立っているのか」「自分の使った1時間、1週間、1年という時間が、仕事として、事業として成り立っているのか」ということを見つめ直すべき時期にきていると感じます。

石角 非常に根源的なお話ですね。それは、中間管理職の世代だけではなく、20代の新卒の人にも大事な考え方ですよね。

冨山 そうです。大企業に勤めているからたくさん給料がもらえるという話じゃありませんから。もし、自分のやっている仕事の価値というものを、ちゃんと客観的に判断する能力があったら、真剣に勉強するはずです。

“人の役に立つ”からこそもうかる

石角 自分が責任を持って行うのだ、というオーナーシップの意識が大事ですよね。

冨山 ベンチャーをやると、いきなりそれを思い知ります。他人様のお金を預かって、その中で必死になって自分の作ったサービスを売り歩くわけです。そこで、自分がすごくいいなと思っても、それがいかに売れないものかということをいやというほど味わう。そして、人のために役に立ってお金をいただくことがいかに難しいかを身をもって知るわけです。一方で、いきなり大企業に入ってしまうと、大きな仕組みの中でお金がもらえてしまうから、漫然とやっていても給料が払われるのが当たり前だという感覚になってしまう。

石角 そうですね。

冨山 おそらく「日本がNo.1」の時代に一番失ったものはそれなんです。若い人も中堅も経営者も、「会社がもうかって、未来永劫(えいごう)存在し続けるのは当たり前」と思ってしまったのです。与えられた仕事を一生懸命やって、いいものをたくさん作れば絶対もうかるはず、報われるはずだと本気で考えていた。だけど、そんなことはないのです。それを認めるかどうかはお客さんが決めることだから。つまり、品質をとにかく高めればいいという話でもなく、100万分の1から1000万分の1まで不良率を下げることによって使ったコストやエネルギーに対して、それを上回る対価をお客さんが払ってくれるかどうかを検証することが重要。しかし、最近の日本の企業ではそれをしなくなっていると感じます。

石角 イノベーションのジレンマでしょうね。

冨山 そうです。変化の時代だからこそ、これまでの基準で対価を払ってくれなくなっているわけです。そうすると、何に対してお金を払ってくれるのかということを、極めて素朴に、原点に返って、すべての働く人たちそれぞれが見つめ直すということを真剣にやるべきだ。そうしたら、人のために役立てる場所というのは必ず見つかる。自分の会社に限っているから狭く見えてしまうだけなんです。

実は、企業にリストラされる人というのは、今の事業構造に適さない人たちであって、その会社に居ては幸福になれない人たち。そういった人たちには、次の道を見つけて、もともと持っている素質や能力というものを生かして活躍してほしい。だからこそ、経営側も真剣にリストラをやるわけです。世界は広くて、まさにダイバーシティーに満ちている。いろいろなお役立ちの仕方を見つけられるはずです。要するに、今の日本の社会や経済システムにとって、あらゆる意味で新陳代謝が不可避なんです。新陳代謝を前提としたインクルーシブな社会システムが必要です。

石角 つまり、その新陳代謝のためにダイバーシティー&インクルージョンが大事ということでしょうか?

冨山 そうです。まさに企業経営者は真剣にそれに向き合わなきゃいけないし、個人は仕事や事業という原点に立ち戻って、自分自身を見つめ直すということが大事です。本気で仕事や事業と向き合ったときに必ず道はあります。これは100%断言できます。

石角 確かに、今ではリモートで何でもできますし、情報の格差や非対称性がなくなってきていますものね。

冨山 その通りです。デジタルの最先端のツールなども、極めて安く、どこでも誰でもクラウド上のアプリで使えるようになっています。今までは、そういう物を作った人のところに富が集中するプロセスでしたが、次のフェーズではエッセンシャルワーカーのような人達の現場がいよいよデジタルテクノロジーの恩恵を享受して新しい中産階級になっていくのだと考えます。

石角 とてもいいお話ですね。米国でもまさしく同様のことが議論となっているところです。ビッグテック企業に富が集中してしまったり、米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾスが税金を払っていなかったりしたことが明るみに出たことで、結局、巨大IT企業への規制強化に動いてしまっています。でも、それだけではない解決策が実はある。それは、エッセンシャルワーカーの層に何かしらの形で富を共有すること、あるいは、その人たちがデジタルの恩恵を受けることだといわれています。

冨山 エッセンシャルワーカーの生産性が上がったら、その生産性の向上分をフェアに分配することが最も大切です。搾取してはいけません。それこそがキャピタリズムの持続性を高めるには不可欠です。

石角 同感です。本日は本当に素晴らしいお話をありがとうございました。ミドルマネジメント層がいなくなる、というお話だけでなく具体的な生き残策や成長アドバイスも頂けて大変勉強になりました。

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