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ITmedia ビジネスオンライン寄稿記事 掲載/石角友愛とめぐる、米国リテール最前線:ユニファイドコマースで結局何ができるのか? 成功企業に学ぶ“顧客体験の劇的な改善”

2021/10/11 メディア掲載実績 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

ユニファイドコマースで結局何ができるのか? 成功企業に学ぶ“顧客体験の劇的な改善”

あらゆる業界でEC化が進んでいます。

前回の記事でハイブランドファッションの今後の課題として、ECと店舗の在庫情報を一元化させ、顧客体験をシームレスにすることの必要性を述べました。リテーラーのこうした課題を解決する戦略として、注目されているものの一つが「ユニファイドコマース」です。

ユニファイドコマースとは、顧客や商品について収集したデータを単一のプラットフォームに集約することで、売り上げや顧客体験の向上に利用する戦略のことです。このプラットフォームは、EC、モバイルコマース、カスタマーリレーションシップマネジメントなどのシステムを相互に接続し、企業の経営やマーケティングに重要な示唆を与えます。

本記事では、ユニファイドコマースを利用した米国企業の具体的な成功事例を挙げ、ユニファイドコマースの利点とは結局どういったものなのかを解説します。

ユニファイドコマース2つの成功例

まず、ユニファイドコマースを実現するためのECサービス提供者として有名なShopifyを導入した会社の事例を紹介します。

tokyobike(画像は公式サイトより)

ニューヨークと東京に店舗を持つ自転車ショップのtokyobikeは、コロナ禍で自転車需要が増える中、世界中から入る発注に対して情報の一元化ができていないという課題を抱えていました。

tokyobikeの顧客は、小売店舗で自転車を試乗してから、自転車の仕様およびクレジットカード情報の入力用紙を持ち帰り、自宅で購入を検討するというフローをたどることが一般的でした。この既存フローにおいて、同社は顧客を最終的な購入まで結び付けるのに苦労をしていたといいます。

なぜなら、tokyobikeで売られている単価が800ドルもするような自転車は、ほとんどの人にとって店舗で衝動買いできるような商品ではありません。さらに店舗と顧客の自宅との距離が離れていることから、多くの顧客にとっては購入に至るまでのハードルが高かったためです。

そこで、tokyobikeはShopifyでオンラインストアを立ち上げ、店舗上のPOSシステムもShopify POSに切り替えました。これにより、1つのバックエンドを使用して全ての店舗を管理しながら、顧客に柔軟なオムニチャネルでの購入選択肢を提供できるようになったといいます。

また、オンラインストアと小売店舗の情報が効果的に同期されるようになり、例えば、顧客が自転車の試乗のために来店して、店舗では購入せずに帰ったとしても、来店客のオンラインアカウントやショッピングカート情報が自動的にメールで送信され、来店客が帰宅後にメールをチェックすると店舗で選んだ商品がオンラインショッピングカートにきちんと入っている状態になるのです。

これにより、店舗で商品を見た顧客は、購入準備ができたらすぐにオンラインで購入手続きできます。結果として、Shopify POS導入後最初の半年間での売り上げは、前年比で100%アップしたということです。

大手のECサイトではなく、tokyobikeのような中小企業がユニファイドコマースを導入して世界中から顧客を獲得しているという事例は、いかにユニファイドコマースの浸透が進んでいるかを表しています。

もう一つ、店舗でマットレスを販売するAmerican Freightという1968年創業の老舗メーカーもユニファイドコマースを導入した事例として興味深いので紹介します。

American Freight社は、コロナ禍で急速な成長を遂げたため、最終的には165以上の店舗で30以上のPOSシステムと33の金融システムを使用する事態に陥っていました。店舗ごとに異なるPOSシステムを導入した結果、以下のような問題を抱える状況に陥りました。

・在庫の数や詳細などの情報が一元化されておらず、顧客体験が損なわれる。
・店舗ネットワーク全体の在庫を活用して販売を促進するといった効果的な戦略を実現することが困難である。
・手順が標準化されておらず、テクノロジーも古いため、店員のトレーニングに何週間もかかる。
・結果的に、会計処理に必要以上の時間を要し、顧客体験が損なわれる。

そこで同社は、これらの問題を解決するために、エンビスタ社のユニファイドコマースシステムを導入しました。

このシステムにはPOS(販売時点情報管理:Point of Sale)、OMS(注文管理システム:Order Management System)、PIM(商品情報管理:Product Information Management)が組み込まれています。これにより全ての店舗の在庫の可視化、販売注文プロセスの標準化と最適化を可能にしました。結果として、会計にかかる時間が3分以内に短縮され、顧客体験を劇的に改善できたといいます。

ユニファイドコマースの利点は結局何なのか?

画像はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

次にユニファイドコマースの利点がどこにあるのかという点について、前述のtokyobikeやAmerican Freightの事例を参考に考察したいと思います。

(1) 店舗とオンラインの在庫データの統合による顧客満足度向上

「オンラインで目星を付けた商品を探しに来店したものの、その商品が店舗にない」といった状況は、顧客体験を大きく損なうと同時に企業にとっても重大な機会損失となってしまいます。

しかし、全てのチャネルで在庫情報を共有していれば、顧客も店舗スタッフも商品の在庫の有無を完全に把握でき、需要に応じて在庫を発注・移動するといった対応ができます。

実際、64%の消費者は、明確で分かりやすい商品情報があるかどうかで店を選んでいるそうです。このように、正確な在庫情報の管理は、顧客と企業の双方に利益をもたらし、顧客満足度の向上にも大きく寄与すると考えられます。

(2) オムニチャネルで顧客追跡をし、パーソナライズした提案が可能になる

データを統合的に把握することで、企業は顧客とのあらゆる接点において顧客の行動を追跡できるようになります。これが何を意味するかというと、その接点全てが、顧客の再エンゲージメントや企業と顧客の関係性を深めるチャンスとなるということです。

例えば、顧客がまずGoogleの広告をクリックして商品ページを訪れ、そこから企業のアカウントを作成し、商品をカートに入れて、いったんPCの前から離れるとします。

その後企業側が、カートに入れた商品について、地域の店舗の情報も含めたパーソナライズしたDMを送ることで、顧客の購入を促せるでしょう。

顧客の行動履歴に合わせてDM送付などができる(提供:ゲッティイメージズ)

私が経営するパロアルトインサイトにもオンラインと実店舗でのデータ統合、とりわけ顧客に関するデータを統合してより顧客の好みやニーズに寄り添ったマーケティング施策を打ち出したい、という依頼が増えています。オムニチャネルでの顧客データ統合がビジネスにおいて大きな価値を持つことを意味していると言えます。

また、ユニファイドコマースが導入されていない場合、商品を購入した店舗でしか返品・交換できない、オンラインで購入した商品はオンラインサイトが指定する場所へ郵送返却しなければいけない、という不便な状況が多々あります。それに対し、ユニファイドコマースを導入することで、オンラインで購入した商品を自宅近くの店舗で受け取ることや、反対にさまざまな場所の店舗での返却も可能になるでしょう。

このように、顧客の購入と返却における選択肢が広がることは、企業が顧客体験の向上を目指す上で大きな意味を持つと言えます。

(3) 店員の研修の簡素化、人的エラーの削減

組織内のシステムがプラットフォームにより統一されていれば、新しいスタッフの受け入れやトレーニングが容易になります。仮に、業務のために利用するシステムが複数ある場合、従業員はいくつものログイン名やインタフェース、機能を覚えなければならず、習得に時間を要し、手順が多いことでミスも多くなるでしょう。

一方、1つのプラットフォームで全てを管理すれば、従業員は直感的に技術を学ぶことができますし、手順が簡素化されることで失敗も発生しづらくなり、従業員の満足度も向上させることができます。これは、従業員の離職率が高い企業にとっては特に重要なことです。

ちなみに、前述のAmerican Freightのケースでは、過去には2週間かけていた店員の研修がマニュアルなしで数時間で済むようになったそうです。

また、在庫の更新や顧客情報の追跡が自動化されているため、従業員が管理するデータの入力量が減り、入力ミスのリスクも軽減されます。American Freightでは統一システムの導入で使いやすさが向上したことで、一人あたりの顧客の会計にかかる時間も大幅に短縮されたといいます。

このように、ユニファイドコマースを成功させるためには、店舗上のPOSシステムや自動発注システム、在庫管理システム、顧客管理システム、そしてオンラインストアのバックエンドなどを全て関連づける必要がありますが、最近ではそれをパッケージで提供する企業も増えています。そのため、導入する際の比較対象も多く、取り入れやすくなっています。

また、顧客体験をオンライン(ECサイト)とオフライン(実店舗)問わずにシームレスに設計することは、会社の規模や展開する店舗数が多いほど複雑化することが予想されるため、早めに取り組むことが特に大事だとも言えるでしょう。

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