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日経クロストレンド ダイバージェンス時代のDX戦略 第7回/消費者目線になれる「パーセプションフロー・モデル」を導入せよ

2021/10/27 メディア掲載実績 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

消費者目線になれる「パーセプションフロー・モデル」を導入せよ

P&Gをはじめ、ダノン、ユニリーバ、日産自動車、資生堂など大手各社のマーケティング部署を指揮してきたクー・マーケティング・カンパニー代表取締役の音部大輔氏が薦める、常に消費者目線で意思決定ができるツール「パーセプションフロー・モデル」とは何か。導入すれば、「欲しい」から「購入」までに、どういう知覚刺激(トリガー)を用意したのかなどの情報を部署間で共有しやすくなるという。音部氏と石角友愛氏が議論する後編。

〈中編はこちら〉

音部 「パーセプションフロー・モデル」は、慣れると便利です。また、常に消費者目線で意思決定ができるツールです。いろんなテクノロジーが出現するとついつい部分最適したくなりますが、新しいテクノロジーをどこに入れたらよいかというのは案外難しいのです。大事なのは消費者のパーセプションや、知覚されたベネフィットを考えたときに、消費者にとってどんなメリットがあるかということだと思います。パーセプションフロー・モデルを導入すると、常に消費者目線になります。例えば、米Amazon.comの共同創設者であるジェフ・ベゾス氏がミーティングを開催するときに空席を一つ用意するというのは、消費者を可視化するためのいいギミックだと思います。目の前に上司や役員しかいないといったミーティングでは、消費者のことを考える場合ではなくなってしまいますよね。

石角 そうですね。

音部氏が考案した「パーセプションフロー・モデル」

音部 パーセプションフロー・モデルは、消費者のパーセプションがどう変化するかをフローチャートにしているため、消費者から目をそらすことができなくなります。仕組みとしてコンシューマーセントリックになっていきます。その空席に実際に消費者が座っているわけでもなく、絵が描かれているわけでもないため、何に依存するかというと、データに依存するわけです。

このモデルは、(1)全体を俯瞰(ふかん)し、(2)消費者中心になり、(3)汎用性が非常に高いことが特徴です。洗剤や化粧品などのFMCG(Fast Moving Consumer Goods)や自動車・オートバイ、電力、放送、薬、塾、DtoCなど、全て試したわけではないですが、業界問わず転用されているため、汎用性が高いです。Amazonの自動発注などは例外ですが、人が意思決定するBtoBでも適用されています。複数ブランドを持っている企業はラーニングの共有がしやすくなります。

石角 面白いですね。消費者は同じですものね。

音部 そうなんです。例えば、1000億円の売り上げ規模がある会社が500億円規模のAブランド、300億円規模のBブランド、200億円規模のCブランドの3つで構成されているとします。この場合、横の知識連携がないと、この会社の知識規模はAブランドの500億円で止まってしまいます。せっかく1000億円の売り上げ規模があるのにもかかわらず、ラーニングの規模が500億円に減少してしまうともったいないですよね。横に連携することができると、一番売り上げが少ない200億円のCブランドも1000億円分のラーニングが得られるため、1年間で同じ規模のブランドと比較したときに単純計算で5倍のラーニングを得ることができます。そして、500億円のAブランドが経験したことを、200億円のCブランドと共有するためには共通言語が必要です。

共通言語の一つとして、「パーセプションフロー・モデル」を導入しておくと、「欲しい」から「購入」までに、どういう知覚刺激(トリガー)を用意したのかなどが共有しやすくなります。こうして、小さなブランドのアーセナル(武器庫)も大きくなります。

石角 まさしくDX(デジタルトランスフォーメーション)ですね。従来は、部署ごとに顧客データやオペレーションデータを縦割りで管理していて、横串でのシナジーがなかった。それに対して、データやパーセプションフローをデジタル化して一元化をする。その情報を横串で色々なブランドや部署の人たちが利用できれば、さらにシナジーを生むことができますよね。「縦割り構造をどうやって脱却するか」というフェーズにいる会社にとって、とてもいいツールだと思いました。

音部 縦割り構造には、既得権益があるのですぐに変革させることは難しい。この既得権益を超越して連携するためには、大義名分があると実現しやすいと思います。例えば「会社の利益」や「パーパス(目的)」などですね。そして「消費者」を大義として変革を行うのも一つやり方として挙げられると思います。

石角 消費者を中心に置くのはいいですね。消費者を中心に持ってきて、内容精査をしてパーセプションフロー・モデルをデータ化・共有するという手法は、マーケティングのDXだけではなく、商品開発や営業にも通用しますよね。

消費者目線で意思決定ができる「パーセプションフロー・モデル」を薦める音部氏

音部 「カスタマージャーニーマップ」にもそういった側面もありますが、パーセプションフロー・モデルは、通常のメディアプランとは違い、いろんな部門に関与しているため、ほぼ全域で利用することができます。マーケティングの他、研究開発・営業・広報・物流・財務などにも生かすことができます。

石角 物流もとても大切ですね。すごいものを考案されましたね。お話を聞いていてDXそのものだと思いました。

音部 DX推進プロジェクトなどの進行表と併せて利用すると利便性が高いと思います。石角さんの本にも「課題を明確化してからDXを」という言葉がありましたが、パーセプションフロー・モデルを導入する際にも、課題の明確化が不可欠です。

企業のダイナミズムに飲まれない唯一の方法

石角 日経クロストレンドの読者やDXに悩む経営者にアドバイスはありますか?

音部 かつて「AI騒動」があったように、マーケティング部署が各企業で新規事業として立ち上がったときも「マーケティング騒動」がありました。冒頭にもお話しましたが、当時マーケティング部署がほとんどなかった時代、いろんな企業が「あの会社もこっちの会社もマーケティング部署を立ち上げたそうだ!」と沸き立っていました。「消費者調査なんてやったら俺たちの仕事がなくなってしまう!」など、いつの時代でも、新しい部署を立ち上げる度に非難されることはよくあります。

社長や偉い人が「我が社でもマーケティング部署を立ち上げよう」と言って始めたものの、周囲の人たちには「あの新規部署は一体何をしているのだろう」と思われている。当事者からしてみれば「こんなはずじゃなかったのに」と思っている。ちょっと前までの「デジタルマーケティング推進室」もそうです。「デジマ」と呼ばれ、期待されているのか、されていないのか。リーディングエッジなのか、島流しなのかもよく分からない。それで心が折れそうになるのも非常によく分かります。私も同じ経験をしています。そんなときは誇りや信念を強く持ってください。

「デジタルマーケティング推進室」のような「DX推進部」は、「組織構造的に独立させなくてはいけない」という議論や、「全社で推進しているはずなのに、出っ張った横付け組織ではよくない」など、きっと色々意見があると思います。平常運転では、そんな出っ張った状態でいるべきではないと思いますが、最初のうちは出ていていいと思います。

音部氏によると、過去には「マーケティング騒動」があったという

石角 多くの会社が出っ張った状態でいる中、DXの先やビジョンが描けずにいると思います。最初は出ていていいというのは救われる言葉ですが、なぜ出ていてもよいのでしょうか?

音部 私が化粧品会社を出たときにはEC部門は突出させておきました。なぜ突出させておいたかというと、「知識をためていく段階は、独立させておく」ほうがいいと思ったからです。そうでないと、せっかくの経験や知識が散逸してしまいます。そして、知識がなぜ大切かというと、「昨日できなかったことが明日できる」というのが成長に大きく寄与するからです。ちなみに、成長の理由は次の2つに大別されます。

(1) 武器や道具などのツールが手に入り、できるようになる。
(2) 昨日は分からなかったけれども、今日やり方が分かるようになり、明日できるようになる。

この(2)は知識なんです。知識がたまると、できることが増えて成長につながります。

DXにしてもデジタルマーケティングにしても、ブランドマネジメントを始めるにしても、外付けの組織が一つあると、ここに知識がたまります。経験を知識に変え、普遍的に運用できるような仕組みを構築できたら事業部に合流する。新規部署を立ち上げるときに事業部にバラバラに張りつけられてしまうと、事業部のダイナミズムに確実に飲まれてしまいます。

出っ張った部署にいる方々は寂しいと思っているかもしれませんが、“知識の構造化”ができるように意識されると、重要な役割を果たしやすいのではないかなと思います。

石角 素晴らしいアドバイスです。知識の他に成功事例も大切ですね。あまり大人数でやらないことも重要だと思っています。我々はAIの導入支援だけでなく定着支援も行う中で、どういう人をグループに巻き込むかなども重要だと考えています。最初から横串で通してしまっても混沌としてしまうので、音部さんのおっしゃる「段階的に」というのはとても大切だと思いました。今日はどうもありがとうございました。

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