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観光庁が取り組む「観光DX」の正体とは? – 日経クロストレンド連載

2022/05/30 メディア掲載実績, 日経クロストレンド 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

ポストコロナを迎える今、各業界をリードするイノベーターたちはDX(デジタルトランスフォーメーション)をどう考えているのか。人工知能(AI)開発と実装を現場で見ているAIビジネスデザイナーの石角友愛氏がトップ経営者や専門家と、具体的かつグローバルな議論を展開する。今回は、観光庁観光地域振興部観光資源課の星明彦課長を迎え、同庁が取り組むDX推進とコロナ禍によって大きく変わった観光の需要について議論した。(対談は2021年12月7日に実施)

石角友愛氏(以下、石角)  行政では、DXと言えばデジタル庁のイメージがありますが、地域の目指す姿を実現するために、観光庁ではどのようにDXを推進してきたのでしょうか。

星明彦氏(以下、星) 観光地の魅力を顕在化させることはもちろん、最近では新型コロナウイルス禍が明けてから「訪問したい!」と感じてもらえるような潜在的意欲を刺激するような事業にトライしてきました。

石角 具体的にはどのような事業や取り組みをしてこられたのでしょうか?

 例えば、観光客にとって旅先の食事を楽しみにしている人は多いことでしょう。

ただ、「食」というのはオンライン体験が難しい領域で、最終的に食べなければおいしさや匂いは分かりません。その中で、おいしさを伝えることはもちろん、オンライン体験を経た人たちが観光地に行きたいと感じてもらう必要があります。

石角 視覚という点で、インスタグラムをはじめとする写真や動画コンテンツを利用してオンライン体験をつくっていくことは現代において基本的なことですよね。

「観光地に行きたい!」と思わせるには、例えば食材がつくられる環境や背景も伝えることが大事と語る星明彦氏

 その通りです。ただ、写真だけでは「観光地に行きたい!」という潜在意欲をかき立てるには不十分で、ただ単に「おいしそう」で終わってしまいます。潜在意欲を刺激するためには、食に携わる生産者や料理人、さらには食材が作られる環境といった背景まで伝えることが重要です。

石角 ミレニアム世代はモノよりコト、食でいえば「郷土料理を味わえるレストラン」「地産地消」といった意味を大事にする傾向にありますよね。

 そうした背景を伝えるためには、オンラインの方が向いていると思います。そもそも観光庁は、地域を盛り上げるためだけではなく、「観光」というツールを使って、地域の生産性や雇用を向上させることも目的としています。そのため、実際に現地に旅行することだけではなく、オンライン体験を通じて、地域に対して興味関心を持っていただき、オンラインでの物販と連携した個人消費や、そこに携わる人やモノのストーリーから「ファン作り」をすることも重要だと考えています。

石角 観光庁は、観光地をPRするのではなく、地域経済のために玄関口のような役割を果たしているんですね。

 おっしゃる通りです。こうしたオンラインでの情報発信以外にも、顔認証で様々な決済をシームレスな形でつなげ、地域の方はもちろん、訪問した方も快適に滞在できる環境作りをすることも事業の一環です。このような取り組みは、コロナ禍にかかわらず今後も一つの流れとなっていくと思います。

観光庁として現在注力している、地域のCRMとは

石角 観光庁としては、地域のCRM(顧客関係管理)という取り組みをされていると伺いました。具体的にどんな取り組みでしょうか。また、問題視している点などがあれば教えてください。

 地域のCRMとは、地域を訪れるお客さんの年齢、性別、職業、さらには、趣味思考、特徴、関心、行動等を把握し、お客さんに適した情報やホスピタリティーあふれるサービスなどの提供をすることを指します。また、問題点としては、売り手側(観光地側)において、基本的なマーケティングの考え方ができていない人が多いことが挙げられます。

デジタル化が進んだことにより、現在では様々なWebサービスが提供されていて、ジャンル一つとっても事業者数・地域数が大幅に増加している状況です。

こうした状況下であるため、単に「デジタル化すればいい」と、安易に考えてしまっている人が非常に多く見受けられます。

石角 利用するコンテンツの特徴への理解や、お客さんのセグメント化ができてないということでしょうか?

 まさに、その通りです。Webコンテンツの利用自体が悪いというわけではなく、売り手側がお客さんのことを知らず、年齢、性別、職業をはじめとする顧客群に対する理解が乏しいことも問題だと捉えています。このように、セグメント化できていないということで、結果として画一的なマーケティングしかできなくなってしまい、薄利多売を促進してしまっているのです。

石角 つまり、ユーザーニーズを捉え切れていないために、万人受けする商品やサービスの提供に終始してしまい「どれも一緒」という状態になってしまっているんですね。食や宿といった、観光の要になるような分野に対して数多くの媒体があり、みんなが広告を掲載しているから、自分も参加しないとまずい……といった危機感や焦りなどもあるのでしょうか。

 それもあると思います。ただ、そういった意識の下で、あれもこれもと複数利用して、仲介手数料を支払うことが必要経費として定着化してしまっているように感じられます。

地方部の観察から全体像を把握できる

石角 このような状況を脱するためには、どのようなことが必要だと考えられますか。

 システムの全体像を把握することが必要だと思います。頭では分かっていても、実際にできている人は少ないです。これは、観光地だけに限らず、企業も同じことが言え、部や課、係などに細分化されていることから全体像が見えず、ただ言われた仕事を処理することを目的としてしまっている人が多いことからも分かるかと思います。

石角 日常生活でも同じことが言えそうですね。

 例えば、スーパーで買い物をするにしても、ただ食材を買うことだけを目的としていて、それらがどこから来て、どのように流れているのかといったことを意識していない人が多いと思います。このように、仕組みに関心を持たずに過ごしていると、社会の中でも経済の中でも、全体のシステムデザインが見えない人になってしまいます。全体像を見る機会がない方が特に都心部には増えており、そういった方は本来持っている潜在的な成長力などを発揮できない状態にあるのではないかと考えています。

石角 全体像を見られるようになるためにはどうしたらよいと考えていますか。

その地域の海や山など、名産品の背景や環境を伝えることも大切(写真/Shutterstock)

 観光の視点から言わせてもらえば、そういう方は地方部に行くことがお勧めです。地方部へ行くと、環境の連鎖を体感することができ、結果として全体のシステムが見えるようになります。また、地方部にはそこにしかない数百年続いてきた生き方やなりわい、ものづくりもたくさんあるので、そうしたものに触れると「持続可能なものづくりなんだ」「100年後も間違いなく人が必要とするものなんだ」といったこと感じる機会にもなるので、地方への訪問は人としての大きな成長の原資になり得るのです。

先日、仙台に行った際には、三陸のウニの養殖業者の方にも食の背景を伺うことができました。三陸のウニやカキなどの養殖業というのは、海を牧場として捉えていて、それを肥やして、タイミングに応じてどの海域を使うかなどを考えて育てているのですが、海の水質や養分などを蓄えるために植林のようなことが当たり前のように行われています。このように、山と海と空がつながってるということは現場では当たり前のことで、そうやってなりわいをつないできているんです。

ただ、こうした背景を意識していない人が多いのが現状です。なので、こうした環境循環の結果としておいしいものができていることを知っていただくと「自分もこうした循環に貢献しているんだ」という気持ちと共に、地域のことや食の背景を知りたいという気持ちが芽生え、来訪する方も増えて、合わせて商品も増えていくことを目指すというのが、今の取り組みの基本的な方向性です。

石角 環境循環と連動した経済循環が脈々と長く引き継がれてきていて、世界が今目指そうとしているESG(環境・社会・企業統治)やSDGs(持続可能な開発目標)の世界というのは、実は昔から経済に実装されているわけなんですね。人の心やお金がどのようにして動いていくのか、CRMを回す際に全体のシステムが見えていると予測モデルもつくりやすくなりますね。

 そうですね。予測モデルがつくれると投資しやすいですね。どこに投資すると全体のシステムが動き、どのくらいの年数で、いくらの収益率で投資回収ができるというのが読めるようになります。このような力を身につけることで事業がやりやすくなり、また投資が活性化する好循環が生まれます。

石角 観光地が提供するサービスやPRに対する投資は、こうした全体像を把握したうえで行うべきだということですね。

 その通りです。デジタル化すること自体が悪いというわけではなく、そこに投資することの意味やお客さんのニーズをきちんと把握しないで行うことが問題なのです。お客さんが見えないマスマーケットの中で、右に倣えの形で画一的なアプローチを繰り返していては、より売りやすいものを供給側が求められてしまうため、どうしても、より安く、より良いものを売るといった薄利多売の方式から脱却することができなくなってしまいます。

〈後編に続く〉

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00509/00017/

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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