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DXで世界一のコーヒーマーケットをつくるTYPICAの挑戦 – 日経クロストレンド連載

2022/09/13 メディア掲載実績, 日経クロストレンド 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

DXで世界一のコーヒーマーケットをつくる「TYPICA」の挑戦

ポストコロナを迎える今、各業界をリードするイノベーターたちはDX(デジタルトランスフォーメーション)をどう考えているのか。人工知能(AI)開発と実装を現場で見ているAIビジネスデザイナーの石角友愛氏がトップ経営者や専門家と、具体的かつグローバルな議論を展開する。今回はコーヒー生豆のオンラインプラットフォーム「TYPICA(ティピカ)」を展開するTYPICA(大阪市)代表・共同創業者の後藤将氏を迎え、同社が取り組むコーヒー業界のDXについて議論した。(対談は2022年7月21日)

世の中をよくするための経営を実践していれば会社は自然と発展すると語る後藤氏(左)

石角友愛氏(以下、石角) 私の両親は以前にカフェを経営していて、コーヒー豆にはこだわりを持っていました。私自身もコーヒー好きなので今回の対談を楽しみにしていました。後藤さんは19歳のときに初めて起業をされたそうですが、最初からコーヒー関連の仕事をされていたのですか。

後藤将氏(以下、後藤) いえ、当初はコーヒーとは全く関係のない分野で起業しました。

石角 そうだったのですね。TYPICAは2019年に創業されていますが、どういった経緯があってコーヒービジネスに取り組むことになったのでしょうか。

後藤 ひとことで言うと「起業家としての志」と「縁」が重なったからですね。今に至るまでの約20年間、複数の会社を経営してきました。経営者となった最初のころは、とにかく会社を継続させる、自社を成長させることばかり考えていました。主語が常に「自社」だったんです。

ですがさまざまな出来事があって、会社経営とは「社会をよくしていくための手段」ということに気づいたんです。世の中をよくするための経営を実践していれば、無理に会社を発展させようとしなくても自然と発展していくものなのだと。

石角 会社経営は社会をよくするためのものという考えは、同じ経営者としてとてもよく分かります。それに気が付かれたのは、いつごろのことですか。

後藤 会社経営を始めて15年目のときでした。そこで「今後15年かけて世界の何をよくしていくのか、自分は何を主題にしたいのか」と考えていたときに、偶然、コーヒーとの「縁」が生まれました。

私はもともとコーヒーが大好きなのですが、TYPICAで取り扱っているような、いわゆるスペシャルティコーヒーを知ったのは、サンフランシスコに滞在していたときでした。当時はちょうどブルーボトルコーヒーがサンフランシスコで新規出店を増やしていたタイミングで、たまたまブルーボトルコーヒーの創業者と話をする機会があったんです。その時に同席していたジャーナリストから「日本に帰るのであれば、おすすめのロースターがあるので、ぜひ行ってみてください」と紹介されたのが、TYPICAの共同創業者である山田彩音が立ち上げたロースターでした。ロースターとは、焙煎(ばいせん)や淹(い)れ方にこだわった「スペシャルティコーヒー」が楽しめるカフェなどを指します。

TYPICAの共同創業者である山田彩音氏

山田はもともとスターバックスで働いていて、店舗のマネジメントなどを担当した後、日本にコーヒーのサードウエーブが到来し始めたときに関西最大級のロースターを立ち上げました。彼女は私と同い年。ずっと会社経営をしてきて世界を変えるテーマを探していた私と、ずっとコーヒーを追求してきた山田との「縁」がそこでつながったのです。

石角 まさかブルーボトルコーヒーの創業者によって縁がつながったとは、驚きですね。山田さんと出会ってすぐにTYPICAを創業されたのですか。

後藤 いえ、最初は米国西海岸のロースターが焙煎したコーヒーを日本で提供する事業や、日本初のパブリックなシェアロースター事業を始めました。それに5年ほど取り組んだ後、19年にTYPICAを創業しました。

2030年までに世界一のダイレクトコーヒーマーケットを構築

石角 「コーヒー豆流通のDX」というのは、それまでなかったコンセプトだと思います。創業当時から考えていたのですか。

後藤 当初からビジネスモデルは決めていましたね。ただすぐに現在の事業をスタートしたわけではありません。最初の1年は検証フェーズと位置づけて、このビジネスモデルがコーヒー豆の生産者やロースターから求められているものなのか、世界で通用するものなのかを、アナログで運用して確認していきました。そして1年後にデジタル化し、正式にローンチしました。

石角 TYPICAのホールディングスとしての拠点は大阪にありますが、創業の地はオランダですよね。日本でも米国でもなく、オランダというのは意外です。

アクセスのよさやビザの取りやすさなどから、オランダを創業の地に選んだという

後藤 オランダを選んだ理由は主に3つあります。1つは、欧州が世界のコーヒー消費量の40%を占めているという点です。私たちは最初から「コーヒーで世界一のビジネスをつくる」「コーヒー産業を大きく進化させる」ことを目標にしていたので、自然とヨーロッパが候補になりました。

2つめは生産地へのアクセスのよさです。世界のコーヒー豆のメインの生産地は、アフリカと中南米です。オランダの「アムステルダム・スキポール空港」はヨーロッパのハブ空港の1つであり、日本と比べてこれらの地域へのアクセスがいい。ロッテルダム港もヨーロッパの主要な貿易港です。

3つめはビザの取りやすさです。私たちは「2030年までに世界一高品質なダイレクトトレードコーヒーマーケットをつくる」という目標を掲げています。世界一の事業をつくる中心地になると考えると、ビザが取りやすいかどうかは非常に重要。あとは、私自身が日本で会社を長く経営していたため、いったん日本のマインドセットを外したかったという側面もありますね。

石角 なるほど、世界でのビジネス展開を視野に入れて戦略的にオランダを選んだのですね。TYPICAのWebサイトは日本語、英語、韓国語、台湾語、中国語と多言語に対応していて、世界を意識していることがよく分かります。

生産者とロースターが本業に集中できる体制に

各地のコーヒーを見極める「キュレーター」が各国にいるという

石角 生産地はアフリカや中南米が多いということですが、取引をする国や生産者はどのように選んでいるのですか。

後藤 私たちのやり方は、まずは目標ありきです。そこから逆算して事業を進めています。生産国については、30年までに現在コーヒーを生産している約80の国・地域すべての豆を流通させることを目指していて、この目標からブレイクダウンして、オファーする国数を毎年決定しています。今期は32の国・地域に到達する予定です。生産国の選定については、山田を中心に各国のクオリティーコントロールのチームが担当します。国ごとの豆の品質や土壌の特徴に詳しいので、ロースターのニーズを加味して選んでもらっています。

生産者については、国ごとに「キュレーター」と呼ぶ生産者代表を置いて、その方々に動いてもらっています。キュレーターは主にコーヒー豆の生産者か精製所の経営者が務めていて、地域のコーヒー豆農家からサンプルを受け取り、クオリティーをチェック。品質が高い豆だけをキュレーターが預かり、ダイレクトに世界に流通させます。

石角 現地の事情に詳しく、地域で信頼を得ている人に任せるというのは理にかなっていますね。

後藤 精製所をつくるにはそれなりのコストがかかります。そのため生産国でも精製所の数は多くありません。その中からクオリティーの高い豆を扱うところを探し、パートナーシップを組んでいます。TYPICAではシステムはゼロから開発していますが、それ以外はもともとあった人やシステムをつなぎ合わせて、プラットフォームをつくりあげています。

石角 既存の人や仕組みを活用するというのは、発想としてとてもサステナブルですね。御社のビジネスモデルはどのようなものでしょうか。

後藤 TYPICAの仕組みはシンプルです。コーヒー生産者がつくったコーヒーの新豆を世界中のロースターがTYPICAが運営するマッチングサイト上で予約。予約された豆をコンテナに入れて輸出し、いったん日本やオランダなどの倉庫に入れた後、各国に配送します。その際に私たちはロースターから手数料を受け取っています。

石角 配送はキュレーターが手配するのですか。

後藤 いえ、配送から倉庫の手配、通関などすべてTYPICAがディレクションをしています。物流まで含めた輸出入全般を担っているという点は、よく投資家にも驚かれますね。

生産者が生産に集中できるように、ロースターが世界の多種多様なコーヒーを買い付けできるようにするために、周辺業務はすべて私たちがサポートしています。とはいえ、自社で倉庫を持っているわけでも配送事業をやっているわけでもありません。すべて既存の業者、サービスを利用しています。

石角 プラットフォーマーでありながら物流まで差配されているとは、びっくりしました。確かにロジスティクスは一番大変な部分ですので、そこを手助けしてもらえるのであれば、生産者も事業に前向きになってくれそうですね。

(後編につづく)

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00509/00021/

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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