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ネスレ「社内アワード」の意外な受賞者 高級キットカットも発掘

2023/02/02 メディア掲載実績, 日経クロストレンド 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

ネスレ「社内アワード」の意外な受賞者 高級キットカットも発掘 – 日経クロストレンド連載

AI(人工知能)開発と実装を現場で見ているAIビジネスデザイナーの石角友愛氏がトップ経営者や専門家と、具体的かつグローバルな議論を展開する。元ネスレ日本代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)の高岡浩三氏との対談の後編は、ネスレ日本で実施した「イノベーションアワード」、現在取り組むDX(デジタルトランスフォーメーション)アドバイス事業などについて議論した。(対談は2022年11月24日)

元ネスレ日本の社長兼CEOで、現在はケイアンドカンパニー(兵庫県西宮市)社長の高岡浩三氏とAIビジネスデザイナーの石角友愛氏が対談した

▼前編はこちら
高岡氏はどうやってネスレを「マーケティングの会社」へ変えたか

テスト費用を全額支援するアイデアコンテスト

石角友愛氏(以下、石角) ネスレ日本の社長として、資料作成などの作業を減らして考える時間を持てるように改革を進めたというお話を伺いました。そこから組織としてイノベーションを起こすために、どんな仕組みづくりをされたのですか。

高岡浩三氏(以下、高岡) 代表的なものが「イノベーションアワード」ですね。イノベーションを起こすためには、顧客が「諦めている問題」を発見することが必要です。顧客というと、取引先や消費者をイメージしがちですが、経理などの間接部門にも社員という顧客がいます。そこで社内の全部門、およそ3000人を対象に社内コンテストとして「イノベーションアワード」を開催しました。それぞれの顧客が諦めている問題は何かを考え、仮説を立て、ソリューションを考えてもらうのですが、それだけではアイデアコンテストで終わってしまうため、自ら事業化に向けた小規模なテスト(リサーチや検証)をしたうえで応募してもらいました。

DXには「FOMOの壁」「POCの壁」「イントレプレナーの壁」と3つの課題があると話すAIビジネスデザイナーの石角友愛氏

石角 アイデアコンテストはよくありますが、実際にテストまでさせるというのは珍しいですね。

高岡 テストの費用には上限を設けず、すべて会社が支出しました。その費用1億円を捻出するために、当時実施していた社内研修はすべてやめました。イノベーションアワードの方が社員研修より役に立ちますからね。

石角 社内研修の廃止とは、思い切ったことをされたのですね。でもまず自分でスモールテストをしてみるというのは、DXを進めるうえでも非常に大事な部分だと思います。

私はDXには、何をしたらいいのか分からず焦るだけの「FOMO(フィアー・オブ・ミッシング・アウト、乗り遅れる恐怖)の壁」、実証実験を繰り返すだけで事業化に至らない「POC(プルーフ・オブ・コンセプト)の壁」、やりたいことはあるものの社内リソースが集まらない「イントレプレナー(社内起業家)の壁」の3つの壁があると考えています。

よくDXに関して「上司からOKがもらえないので進められない」という相談をいただくのですが、論より証拠、50ページのプレゼン資料をつくるよりも、サンプルをつくってデータを集めてうまくいくことを立証する方がいいと思っています。イノベーションアワードは、まさしくそれを実行されているのですね。

高岡 私自身、営業担当をしていたときには、よく自分の責任範囲でテストをしていました。それでトップセールスマンになることができた。まずテストをするというのは起業家も同じです。投資家から資金を集めようとしたら、プレゼンテーションだけではなく、サンプルをつくり、テストして、その結果を示す。その方が説得力は高まり、賛同してもらいやすい。私が運営している「高岡イノベーション道場」でも、上司に提案しても「これでいくらもうかるんだと返される」という相談を受けますが、やってないのだから分かるわけがない。まずはスモールテストをすべきです。

ハイパフォーマーの受賞は10%未満、優秀な人材は社内に埋もれている

石角 そもそもイノベーションアワードは、どのようにして思いついたのですか。

高岡 きっかけとなったのは、あるハーバードビジネスレビューの記事です。世界で成功している4000人以上の起業家と、1800人のビジネスリーダーの心理テスト結果を比較したところ、起業家にはビジネスリーダーにはない3つの特徴があったという内容でした。

特徴の1つ目は「不確実な状況下でも成功する能力」です。誰もやったことがないことを、失敗しても諦めず、修正しながら小さな成功にたどり着く力です。 2つ目は「自らプロジェクトを企画・制作する熱意」。他人のアイデアでは本気になりにくいため、自分のアイデアを持つことが大事です。3つ目は「説得力」です。1人ですべてやりきるのは難しい。周囲を巻き込み、チームとしていくことが必要です。イノベーションアワードには、これらを詰め込みました。

石角 興味深い内容ですね。初回はどれくらい応募があったのですか。

高岡 それが対象者3000人のうち、79人からしか応募がなかったのです。開催を周知していたはずなのに、です。そのため人事考課の20%にイノベーションアワードを反映するように、人事制度を変えました。

石角 よく思うのですが、イノベーションは人事改革と表裏一体です。誰しもリスクは取りたくないもの。ですが、それでは進まないため制度から見直す必要がある。もっと人事改革がイノベーションの文脈で議論されるべきだと考えています。

高岡 おっしゃるとおりだと思いますね。とはいえ人事部長がそれを決定・実行するのは難しい。やはり人事改革は社長の仕事です。

石角 アワードの受賞者は皆さん、「やっぱり」と思うような社内評価の高い方だったのですか。

高岡 それがそうでもなかったのです。もともとハイパフォーマーではない人物が入賞するだろうとは思っていたのですが、蓋を開けてみると受賞者のうちハイパフォーマーは10%にも満たなかった。ここまでとは思っていませんでしたね。

石角 私も驚きました。どうしてこのような結果になったのでしょうか。

高岡 結局、ネスレのような大企業であっても、ハイパフォーマーとされるのは、上司の指示をそつなくこなすタイプの人なのです。イノベーションにつながるアイデアは10人中9人が反対するような内容がほとんどですから、ハイパフォーマーとは認識されていなかった人が受賞したのでしょう。最年少は高卒で工場勤務の28歳でした。社内に優秀な人材が埋もれているのだと気づけたことは、イノベーションアワードの大きな成果でした。

石角 DXにおいても進めたいが任せられる人材がいないという声をよく聞きますが、どの企業でも埋もれているだけで優秀な人材はいるのでしょうね。

諦めていた問題から生まれた高級キットカット

石角 イノベーションアワード受賞者の方は、その後社内でご活躍されているのですか。

高岡 はい。受賞プロジェクトは応募前のテストでうまくいく見通しが立っていたので、翌年の会社の戦略の1つに据え、受賞者は社長直属のプロジェクトリーダーにしました。工場勤務だった社員はその後課長になりましたし、最年少で執行役員になった社員もいます。本人たちにとっては仕事へのモチベーションは上がり、その様子を見ていたほかの社員も「チャンスをきちんとつかめば、自分もこんなふうになれるんだ」と感じてくれているでしょう。

石角 年齢も学歴も職種も関係なく、アウトプットで評価されて役員になれる可能性もある。イノベーションに向けた社員の本気度が高まり、仕事へのモチベーションもアップしたとなると、実施の意義は大きいですね。

高岡 ネスレ日本社長としての実績のうち、一番誇りに思っているのはこのイノベーションアワードを始めたことです。これこそが今の日本企業に必要なことだと思います。

石角 ヒット商品である「キットカット ショコラトリー」はイノベーションアワード発だそうですね。

高岡 はい。消費者の多くはキットカットのようなナショナルブランドのお菓子は工場で大量生産してコストダウンしていることを知っています。だから高級ブランドのチョコレートに5000円払うことはあっても、普通のキットカットに5000円払うことは、まずありません。まして有名パティシエがキットカットをつくることはない。これが諦めていた問題でした。ここにある社員が着目したのです。

イノベーションアワードが生み出した「キットカット ショコラトリー」

「ル パティシエ タカギ」オーナーシェフの高木康政さんに頼み込んで、全面監修してもらい「キットカット ショコラトリー」を開発しました。希少価値がついたことで、高い値段でも行列ができました。

石角 非常に大きな話題になりましたね。キットカットはスーパーで手軽に買えるものというイメージを覆しました。

高岡 当初はスイス本社も懐疑的だったのですが、グローバルのCMO(最高マーケティング責任者)が日本を訪問した際、店舗にお連れしたところ、納得してくれました。

石角 目の前で商品が飛ぶように売れていくのに「ダメだ」なんて言えませんね。まさに論より証拠です。

新しい現実を見据える「経営者のリーダーシップ」

石角 今度は高岡社長の現在の活動について教えてください。ネスレ日本の社長を退任され、ケイアンドカンパニーにおいてマーケティングやイノベーション、DXのアドバイザーをされています。老舗芸能事務所テアトルアカデミー(東京・新宿)のDXもサポートされていると聞いています。

高岡 大学時代の友人の紹介で、マーケティングのサポートに入りました。当時のテアトルアカデミーは、大都市の会場に全国から受験者を集めてオーディションを実施するという、20世紀型のやり方を続けていました。ただ、それでは受験する子どもや親の負担が大きく効率も良くない。すでにZoomが普及していたことからリモートでのオーディション実施を提案したのですが、現場の人間に大反対されてなかなか導入に至りませんでした。

石角 今ではオンラインオーディションは当たり前になりましたが、これもここ数年の変化ですね。やはり新型コロナウイルス感染症流行の影響が大きかったのでしょうか。

高岡 そうですね。私が退任する直前に新型コロナが流行し始めました。テアトルアカデミーは子どもたちのレッスン料が収益源だったため、コロナ禍でみんなレッスンに来なくなり、一気に会社が傾きました。そこでようやく社内がDXに前向きになり、オンラインオーディションが実現したのです。新型コロナが「新しい現実」を見つめ、考えるきっかけになったのだと思います。

石角 私もそう思います。コロナ禍で多くの日本企業がそれまで目を背けてきた問題に向き合い、AI導入率も一気に5倍となりました。高岡社長はこれまでの知見を生かして「高岡イノベーション道場」も展開されています。こちらはやはりスタートアップの方の参加が多いのですか。

高岡 スタートアップの方もいらっしゃいますが、大企業の新規事業の責任者も多いですね。駆け込み寺と認識されているのかもしれませんね。月に1回、1対1でセッションを行い、アドバイスから小さなテストの実行までサポートしています。私自身、対応にはかなりエネルギーを使うため、お受けするのは20人ほどが限界なのですが、2年目に入ってすでに40人ほどが卒業しました。

石角 卒業生の中からイノベーションを起こす方も出てくるでしょうね。楽しみです。では最後にDXを進めたい、イノベーションを起こしたいと考えている経営者に向けて、アドバイスをお願いします。

高岡 DXやイノベーションを起こせるかどうかは、経営者のリーダーシップにかかっています。ぜひ新しい現実から生じる、顧客が「諦めている問題」を見つける仕組みづくりから始めていただければと思っています。

石角 やはり経営者が本気を見せられるかどうかが、大きな鍵になるのですね。参考になりました。本日はありがとうございました。

(写真提供/ネスレ日本、パロアルトインサイト)

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00509/00030/

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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