こんにちは。パロアルトインサイトCEOの石角友愛です。テック企業だけではなくディズニーも7000人の人員削減を発表しました。通常、人員削減には、レイオフ(一時解雇)という解雇の手続きが取られることが一般的ですが、実はアメリカでは、新たな解雇の手法として、「Quiet Firing(静かなるクビ)」という手段が取られ始めていることをご存知でしょうか。
まずは、アメリカでレイオフの際にどのようなコストが発生するのか、その手続きの複雑さを理解することで静かなるクビの背景を紐解いてみましょう。
アメリカ合衆国労働統計局によると、従業員のレイオフに伴うコストは、失業保険税法や失業保険の受給資格に関する規定など、州ごとのさまざまな要件によって異なります。
例えば、カリフォルニア州では、雇用主は、各従業員に支払われる暦年の賃金のうち、7000ドルまでに対し、UI税(Unemployment Insurance taxes:失業保険税)として一定の割合を支払います。
新規雇用主の場合、最初の2~3年間の税率は 3.4%に固定されますが、その後は毎年 12 月に雇用促進局(EDD)が翌年の税率を雇用主に通知します。この税負担は、従業員1人あたり年間で最大434ドルとなります(最高のUI税率6.2%×課税上限7000ドル)。
そして、従業員を解雇すると、翌年に従業員一人当たり156ドルの追加UI税を支払うことになり、これは解雇された失業保険受給者に支払われる給付金の約27%を占めることになります。
連邦法上、雇用主は解雇された従業員に退職金を支給する義務はありませんが、退職金制度により、元従業員から訴訟を起こされる可能性を低くすることができると言われています。そのため、レイオフを実施する企業の中には退職金パッケージを用意するケースも珍しくありません。
レイオフに伴うコストは税金や退職金手当などの金銭的なものや訴訟リスクなどの法的なものだけではありません。テック企業のように1万人規模で大規模レイオフを実施する場合、人事部と経営陣で多くのことを決定し、瞬時に行動に移す必要が出てきます。
その場合、「どの部署をレイオフ」するか、「パフォーマンスが低い人のみをレイオフ」するか「給料が高い人をレイオフ」するか、またはその組み合わせか、などレイオフに伴う細かいルールを決定するためにも手間が発生します。また、公平性を保つためのガイドラインの策定なども必要になると想定されます。
レイオフされる従業員への通達、その後の書類対応などのコストも全て、会社にとっては負担となります。そのような中、従業員を強制的に解雇することによるさまざまなコストを避けるために、解雇ではなく従業員が自ら辞めるように仕向けるQuiet Firing(静かなるクビ、閑職用意)を選ぶこともある ——というわけです。
静かなるクビとは、通常は、経営者が業績の悪い従業員を辞めさせるために、理想的でない労働条件を作り出すことなどを指します。
具体的には、1対1の会話を避ける、フィードバックを拒否する、情報共有を怠る、従業員の職務外の仕事を割り当てるといったさまざまな手段があるとされます。
日本企業で従来から行われてきた「窓際族」とも類似するものがあります。
しかし、最近の「静かなるクビ」は、業績の悪い社員をやめさせることが目的ではなく、人員削減のレイオフの一環として選択されているということが特徴的です。
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
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