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なぜ新しいDXツールに不満の声が出る? 食堂「ゑびや」の解決策

2023/02/21 メディア掲載実績, 日経クロストレンド 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

なぜ新しいDXツールに不満の声が出る? 食堂「ゑびや」の解決策 – 日経クロストレンド連載

ポストコロナを迎えようとしている今、各業界をリードするイノベーターたちはDX(デジタルトランスフォーメーション)をどう考えているのか。人工知能(AI)開発と実装を現場で見ているAIビジネスデザイナーの石角友愛氏がトップ経営者や専門家と、具体的かつグローバルな議論を展開する。観光客向けの食堂を経営するゑびや(三重県伊勢市)代表で、ITサービスのEBILAB(エビラボ、三重県伊勢市)社長の小田島春樹氏との対談後編。ITソリューションの内容とローカルビジネス成功のカギ、地方のDXなどについて議論した。(対談は2022年12月23日)

伊勢神宮の参道にある食堂「ゑびや」傘下のEBILABは、店舗内で利用するBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを開発している

▼前編はこちら
伊勢神宮の食堂「ゑびや」をデータで再建 素人がゼロからAI開発

伊勢神宮の参道からBIツールを全国へ

石角友愛氏(以下、石角) 小田島社長は自前で開発した来客予測AIなどを活用して奥様の実家が営む食堂「ゑびや」の売り上げを6倍、営業利益は80倍にまで伸ばしました。さらに、2018年にはEBILABを設立し、来客予測などを盛り込んだサービス業向けの店舗分析ツール「TOUCH POINT BI(タッチポイントBI、BIはビジネスインテリジェンス)」などのソリューションを提供されています。自社で活用していたシステムを外販されるようになった背景を教えてください。

ゑびや代表で、EBILABの社長も務める小田島春樹氏

小田島春樹氏(以下、小田島) 理由は大きく分けて2つあります。1つ目は、ゑびやが伊勢神宮の参道に立地していて、伊勢神宮に大きく依存したビジネスモデルであったという点です。伊勢神宮の参道を通る観光客は、訪日外国人が過去最高を更新した19年当時でもほとんどが日本人でした。日本の人口は今後減少していきます。そうなれば当然、伊勢神宮を訪れるお客様は減りますし、人材採用も難しくなるでしょう。この「必ず来る未来」に対して、大きな危機感を持っていたのです。そこで日本中どこからでも購入してもらえるようなビジネスをつくろうと思いました。

石角 伊勢神宮のそばにあるというのはメリットのように思えますが、場所に依存しすぎるのは危うい側面もありますね。

小田島 2つ目は、地方でも起業できることを世の中に示したかったという点です。今もそうですが、当時も起業といえば東京というイメージがありました。ですが私は北海道出身ということもあって、場所はあまり意識しなくてもいいと考えていました。そこで伊勢市で起業し、地方からでも成功できるのだと証明しようと思ったのです。

石角 米国の場合、政治はワシントンDC、金融はニューヨーク、ITはシリコンバレーなど各地に機能が分散していますが、日本は東京に一極集中ですからね。

小田島 そうなんです。ただ「東京一極集中」というのは、少し思い込みもあるのではないかとも考えています。確かに一部の最先端なものは東京に集まっていますが、マーケットは全国に散らばっているケースが珍しくありません。例えば車は東京で購入する人はごく一部で、ほとんどは、他の都市や地方の方が買っています。服も全国にあるユニクロやイオンで買っている人は多いでしょう。だから私は、物事は必ずしも中心地でしか進まないとは思っていません。

石角 サービスによっては、東京に事務所を構えていなくても十分成り立つものもありますからね。実際、新型コロナウイルス禍で東京を離れ、地方に拠点を移した企業も多く見られました。

小田島 業務によってはリモートワークでも問題ありませんし、必要なものはアマゾンで買えばいい。当社でも最近現地採用が増えたのですが、それでも半分はリモートです。また地方は賃料が安く、自治体などの政治との距離も近いなど、実は起業に際していろんなメリットがあります。

入力なしでも必要なデータを集計

石角 小田島さんが入社される前のゑびやは、そろばんで会計をするなど、かなりアナログだったそうですね。老舗企業ではIT化を進めようとしたところ社内から反発が起きたという話をよく聞くのですが、データ経営の導入は従業員にスムーズに受け入れられましたか。

小田島 私もそういう話は聞きますが、そもそも反発が起きるようなものを導入することが間違っていると思っています。新しいシステムを導入したときに不満の声があがるのは、大体の場合、利用者が新たに入力などの作業をしなければいけなくなるからです。だったら利用者が何もしなくてもいいシステムにしてしまえばいいのです。

「TOUCH POINT BI」では、データはシステム側が自動で収集・分析し、パソコンを開けばログインなしでデータが確認できます。さらにプッシュ通知で情報が届き、スマートフォンでも内容をチェックできます。つまずいた従業員がいた場合には、使える従業員とペアにしてフォローし合えば解決できます。こういう仕組みにしてしまえば、反発は起きないと思います。

石角 目からうろこですね。システムを使えるように人を教育するのではなく、人が変わらなくてもいいように、ユーザー体験を最適化するということですね。

小田島 その通りです。私たちは人を変えることはできないという前提でシステムを開発しています。ゑびやでは提供するメニューや数量など、必要な情報はすべて会社が決めて「TOUCH POINT BI」を使って店に情報を送っています。従業員はその通りにつくればいいため、基本的に意思決定は不要です。厨房とホールスタッフが使うスペースに設置した巨大モニターにこれらの情報や売り上げを映し出していて、店舗のスタッフはアルバイトを含めて全員がこれを確認して行動します。

石角 アルバイトも情報が確認できるというのは透明性も高いですね。「TOUCH POINT BI」はやはり飲食店での導入が多いのですか?

小田島 POS(販売時点情報管理)を使っているのであれば、飲食店に限らずどこでも導入可能です。最近はデベロッパーや商業施設管理会社での利用も多いですね。

コロナ禍で飲食業界は大打撃を受け、ゑびやも新規で設備投資をする資金余力はありませんでした。このまま飲食店のお客様を中心にしていくのは難しいと考え、今はターゲットを行政や教育系にシフトし、「TOUCH POINT BI」だけでなく、コンサルや教育現場での授業などに力を入れています。

石角 飲食業界以外に対しては、具体的にどのようなことをされているのですか。

小田島 例えば調剤薬局向けのBIツールの開発です。首都圏を中心に調剤薬局を展開する雄飛堂(東京・渋谷)と協力して、需要予測による薬の仕入れの最適化、患者さんを待たせないオペレーション構築などを進めています。

調剤薬局のビジネスモデルは少し特殊で、処方箋が多ければ多いほど売り上げが上がるというわけではありません。特定の医療機関からの処方箋が一定数を超えてしまうと、調剤基本料は引き下げられてしまうのです。そのため調剤薬局は処方箋の集中率がベストな値になるように、ある程度患者さんの分散化を目指さなければいけません。今は病院からの距離などさまざまなデータを分析して、分散化につながる要素を探しているところです。

石角 興味深いですね。調剤薬局は病院の中やすぐそばにあり、経営に改善できる点はほとんどないという印象がありました。ですがデータをもとにオペレーションを見直せば、ビジネスモデルそのものを変えられるかもしれない。それに調剤薬局は各地にあるので、うまくいけば全国に展開するサービスが開発できるかもしれません。

小田島 薬価は毎年改定されていて引き下げとなる品目は多く、ドラッグストアとの争いも激化しています。今後、薬局は今までとは違う方法で収益性アップに取り組まなければいけなくなる。そこに役立てるかもしれないと考えると、やはりデータ分析は面白いですね。

ローカルビジネスの生き残りに必要な「多角化」

1店舗当たりの売り上げに限りがあるローカルビジネスの拡大は、米国でも課題が多いと指摘するAIビジネスデザイナーの石角友愛氏

石角 飲食店や調剤薬局など、御社がサポートされているのはローカルビジネスが多いのですね。一般的にローカルビジネスは1店舗当たりの売り上げに限りがあるため営業効率が悪く、スケール(拡大)させにくいといわれています。米国でも地域のお店やサービスのレビューサイトを運営する「Yelp(イェルプ)」が、10年以上前にIPO(新規株式公開)をしたものの、なかなか成長企業としては注目されるまでに至っていません。ローカルビジネスをスケールさせるためにどのような手を打てばいいとお考えですか。

小田島 目的次第だと思いますね。ある程度の黒字が確保できているのであれば、すでに成功しているとも捉えられます。それに日本のマーケット規模を考えると、事業を大きくするといっても限界がある。その前提で考えると1つのビジネスを大きくするのではなく、ある程度収益が見込めるビジネスを複数立ち上げて多角化するのが、地方におけるローカルビジネスの1つのあり方なのではないかと思います。

石角 多角化するとなると、各分野を担う人材も必要になります。採用の壁も出てきそうですが、どのように対応されていますか。

小田島 当社では1人の従業員がさまざまな分野の業務を担当することで、人を増やさずに売り上げと利益を上げています。だから利益率も高いのです。

私が入社した12年当時、ゑびやは飲食業だけを営んでおり、売上高は約1億円、従業員数は42人でした。1人当たりの売り上げで考えると392万円です。そこから事業を拡大し、22年は飲食に加えて小売り、ITも展開。売上高は6倍の約6億円に達しました。一方で従業員数は52人と、わずか10人増えただけ。そのため、1人当たりの売り上げは1153万円にもなりました。

スタートアップの多くは社員を増やして売り上げをアップする手法をとっていますが、今の日本の経済状況では採用はリスクを伴います。それにそもそも地方は労働市場が小さく、人を増やして事業を拡大していくというビジネスモデル自体が成り立ちません。

「1対1」のビジネスの場合、事業を拡大するためにはある程度の人数が必要です。だから地方においては、少ない人数でもスケールできるような「1対N」のビジネスを選ぶことも大事だと考えています。

石角 ビジネス選定の時点で、地方に合ったものを選ぶことも重要なポイントなのですね。

DXは必要がなければやらなくてもいい

石角 先ほど1人が複数の業務を担うと説明されていましたが、一人ひとりのスキルセットを高めるために、何か特別な研修をされているのですか。

小田島 従業員教育についてはよく質問をいただくのですが、大したことはしていないんですよ。ただ、変化に対する許容性が養われるような社内環境は整えています。例えば当社の中で突然、水耕栽培キットを開発しよう、という話が浮上してきたとします。その場合、「せっかくつくるのであれば見栄えのいいイチゴにしよう」「糖度は8%以上を目指そう」と決めたら「水耕栽培で糖度8%以上を実現するためにはどうすればいいか」を考えます。みんな知識がない分野のことでも、調べてやっていけばいいのです。

石角 変化に対応できる耐性をつけるような企業風土があるから、イノベーションが生まれているのですね。では最後に、DXに取り組みたい地方の企業に向けてアドバイスをお願いします。

小田島 そもそも論になってしまいますが、私は必要がないのであれば、DXはやらなくてもいいと考えています。デジタルを使えばすべての問題が解決できると思っている方もいるかもしれませんが、それは勘違いです。日本企業の一番の弱点は、時代の変化に対して行動変容ができていないこと。DXは変わるための1つのきっかけに過ぎません。それなのに行動変容をするという目的が抜け落ちた状態で、DXの手法にばかりこだわってしまうケースが多い。そこが大きな問題だと思っています。

石角 同意見ですね。まず考えなければいけないのはDXの「X(変革)」に当たる部分なのに、多くの企業は「D(デジタル)」を目的にしてしまっている。目的なしのDXはうまくいかないと感じます。

小田島 変われるのであれば、その手段はデジタル化でなくてもいいはずです。だからいろんなことを試してみたらいいと思います。逆に変わる気がないのであれば、そもそもデジタル化は必要ありません。ただ特に中小企業においては、データを活用することで経営の確度はかなり上がります。経営者自身の心の余裕にもつながるので、データに投資する価値は十分にあると思います。

石角 私もデータ活用は今後ますます重要になってくると思います。勉強になるお話をたくさんいただきました。本日はありがとうございました。

(写真提供/ゑびや、パロアルトインサイト)

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00509/00032/

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。東急ホテルズ&リゾーツのDXアドバイザーとして中長期DX戦略への助言を行うなど、多くの日本企業に対して最新のDX戦略提案からAI開発まで一貫したAI・DX支援を提供する。2024年より一般社団法人人工知能学会理事に就任。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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