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倒産寸前からネット通販で離陸 ヤッホーブルーイング成功の原点 – 日経クロストレンド連載

2023/05/08 メディア掲載実績, 日経クロストレンド 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

倒産寸前からネット通販で離陸 ヤッホーブルーイング成功の原点 – 日経クロストレンド連載

ポストコロナを迎える今、各業界をリードするイノベーターたちはDX(デジタルトランスフォーメーション)をどう考えているのか。AI(人工知能)開発と実装を現場で見ているAIビジネスデザイナーの石角友愛氏がトップ経営者や専門家と、具体的かつグローバルな議論を展開する。今回はクラフトビールメーカーのヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)社長の井手直行氏を迎え、どん底から急成長した同社の歩み、データ分析に基づくマーケティングについて議論した。(対談は2023年2月7日)

ヤッホーブルーイング社長の井手直行氏と、パロアルトインサイトCEO(代表経営責任者)でAIビジネスデザイナーの石角友愛氏が対談した

パチプロからクラフトビールづくりへと異色のキャリアチェンジ

石角友愛氏(以下、石角) 御社が以前開催されたオンラインイベント「BAR 恥さらし」の記事を読みました。井手社長は昔パチンコで生計を立てていたと書いてあって、驚きました。しかもデータ分析をして戦略的に勝利していたそうですね。

井手直行氏(以下、井手) データ分析というのはちょっとこじつけかもしれませんが、そうなんです(笑)。当時、仕事を転々としていて、働いていない時期も長かった。そういうときは朝から晩まで、パチンコを打っていましたね。毎日12時間ほどパチンコ店にいたので、当たりが出る台やその時間などを細かく記録し、分析するようになりました。すると次第に大当たりが出る傾向が見えてきたんです。それを活用し、パチンコで黒字化できるようになりました。

井手 直行氏。ヤッホーブルーイング社長。1967年生まれ。福岡県出身。国立久留米高専電気工学科卒業後、大手電機メーカーにエンジニアとして入社。広告代理店などを経て、97年にヤッホーブルーイング創業時に営業担当として入社。2004年から楽天市場担当としてEC事業を推進。08年から現職

石角 勘ではなく、地道なリサーチと分析をしたことで、勝っていたのですね。

井手 実はこれには後日談があるんです。当時通っていたパチンコ店は閉店したのですが、当社がその跡地を借りて、本社機能のあるオフィスにしています。ですのでオフィスを訪問された方には「ここは昔、私が生計を立てていた場所です」と説明しています。

石角 そんなことがあるんですね。誰もが驚く鉄板エピソードですね。どういった経緯でヤッホーブルーイングに入社することになったのですか。

ヤッホーブルーイングの代表的なクラフトビール「よなよなエール」

井手 パチプロ生活を脱した後、軽井沢の小さな広告代理店で働いていました。そのときのクライアントが星野リゾート(長野県軽井沢町)だったんです。それで星野リゾートの星野佳路代表(注)に声をかけてもらって、1997年に転がり込むようにヤッホーブルーイングに入社しました。

(注)星野氏はヤッホーブルーイングの創業者でもある。2008年に井出氏が社長に就任するまでは、星野氏がヤッホーブルーイングの社長を務めていた。

石角 1997年というと、酒税法改正(94年4月)で始まった地ビールブームのまっただ中ですね。

井手 ええ、おかげでしばらくは好調でした。ところがブームはあっという間に終わりを迎えました。創業当時は常勤スタッフが7人いて、業績の良かったタイミングでさらに増やしていたのですが、売り上げが落ちるに連れてスタッフの間に不信感が生まれました。どんどん雰囲気が悪くなっていき、社員も半分になりました。

石角 地ビールをつくっていた会社では、倒産したところも多かったですね。

井手 当社も創業年から赤字が続き、倒産が現実味を帯びてきました。

どん底から脱するきっかけをくれた星野代表のひと言

石角 そのどん底から脱する転機となったのはどのような出来事でしょうか。

井手 きっかけは2つあります。1つは当時ヤッホーの社長でもあった星野代表の言葉、もう1つはネット通販への参入です。当時、厳しい状況が続いていて私は常に下を向いていました。何をやってもうまくいかず、「だめだけどなんとか踏みとどまろう」という程度の熱意だったと思います。それでも「とことんやろう! それでも駄目なら会社を畳んで一緒に釣りをしよう」と言ってくれたのです。

普段、釣りなんてしない人なので、きっと励まそうとしてくれたのだと思います。創業からずっと赤字なのに、それでもまだ信じている。その気持ちに触れて「下を向くのはやめて、前を向こう! 人生を懸けてやってみよう!」と決心しました。そこからは気合と根性で営業をかけていきましたね。

石角 「とことんやろう」っていい言葉ですね。まだやれることはあるはずだと。結果を出してきた星野さんの言葉だからこそ、重みがありますね。

井手 ただ、がむしゃらにやってはみたものの、なかなかうまくはいきませんでした。そこで2004年に最後の手段として挑戦したのがインターネット通販でした。これがブレークスルーになりました。

石角 当時、ネット通販は未参入だったのですか?

井手 いえ、すでに「楽天市場」に出店していたんです。楽天市場が立ち上がったのは1997年の5月、出店したのはその翌月のことでした。星野リゾートがクラフトビール事業に参入するという記事を見て、楽天(現在は楽天グループ)の三木谷社長らから直々に出店の打診があり、星野代表も快諾しました。

でも最初の製品である「よなよなエール」は、1997年の7月に発売。つまりまだ売るものもないのに出店したのです。

石角 三木谷社長と星野さんは、互いのビジネスの大きな可能性に気づいていたのかもしれませんね。先見の明がありますね。

井手 ただ出店はしたものの、開店休業状態が続きました。私はずっと外回りの営業を担当していて、パソコンのキーボードは指1本で打っているようなレベルで、インターネットにも興味がありませんでした。だからやりたくなかったんです。

「素直さ」と「積極性」でプロのアドバイスを実行し、成果を上げる

井手 それでも重い腰を上げることができたのには、きっかけがありました。それが三木谷社長からの手紙です。会社のロッカーを掃除していたとき、偶然昔の手紙を見つけたのです。そこには手書きで「このたびは出店ありがとうございました。一緒にインターネットで世界を目指しましょう」と書いてありました。

石角 三木谷社長が直筆で出店者に手紙を送っていたとは……。まだ実績も知名度もない楽天市場に出店してくれた店への感謝の気持ちが見えますね。

井手 でもその手紙を読んで思ったのです。同じ年に事業をスタートしているのに、楽天市場はインターネットの可能性を信じて突き進み大成功。当社は信じられずに開店休業状態。私はクラフトビールの可能性すら疑うようになっていました。「7年でこんなに差がついてしまったのか」とがくぜんとしました。

この差を生んだのは信じられるかどうかです。「三木谷社長にできて、井手直行にできないことはない!」。そう自分に言い聞かせて、ネット通販に飛び込みました。

石角 パソコンは苦手、ネット通販もほぼ初めて。しかも失敗すれば倒産の可能性もあるとなると、不安も大きかったのではないでしょうか。

井手 もう不安でいっぱいでしたね。でもやると決めたからにはやる。だから「私はネット通販だけやります」と宣言し、営業はすべてほかのスタッフに任せました。

石角 まさに背水の陣ですね。実際始めてみて、何が大変でしたか。

井手 ネット通販の知識もビジネスの知識もほとんどなかったので、まず楽天市場の担当者からのアドバイスは全部信じて、その通りに実行していきました。また「楽天大学」という出店事業者向けの講座も受講。軽井沢から新幹線で通学し、サイトのトップページの作り方からクレーム対応、メルマガの書き方まで学びました。学んだことは即実行。帰りの新幹線の車内でパソコンを開き、帰宅後も自宅で深夜まで作業を続けました。すると比較的早く、結果が出始めました。

リスキリングを実践する上で「素直さと積極性」が必要であるとして、その面での井出氏の姿勢を称賛する石角氏

石角 スポンジのように知識を吸収し、ネット通販のプロである担当者や講師の言うことを実践していった。その素直さと積極性が素晴らしいですね。他人からのアドバイスって、受け入れなかったり、自己流にアレンジしてしまったりして、結局成果が出ないということは多いですからね。

井手 楽天市場の担当者も中途半端に知識があると、教えても徹底してやらず、結局うまくいかないケースが多いと言っていましたね。

社長自身もリスキル経験から得意を伸ばす戦略が奏功

石角 井手社長が楽天大学で学んだことは、まさにリスキリングですね。最近始める人も増えていますが、リスキリングを成功させるポイントがあれば教えてください。

井手 私は37歳で楽天大学に入ったのですが、やはり基礎をきちんと学ぶことは大事だと思いましたね。学生時代、ろくに勉強せず社会人になったため、私にはビジネスの知識が全然ありませんでした。ここで基礎固めができたことは、今考えても大きかったですね。

石角 会社で中堅どころになると、なかなか基礎から学ぶ機会はありませんからね。そこをやり直すために、リスキリングは最適ですね。

井手 あとは得意なことに注力するというのも大事だと思います。当時、私はパソコンの知識がなく、デザインソフトも使えなかったので、制作した販売ページの見た目がイマイチでした。楽天大学の講師の先生に相談したところ「井手さんの得意なことは何ですか?」と聞かれました。ビールの知識があり、営業をしていたので人と話をするのは得意だと答えると、「それでいきましょう!」と言われたんです。

「デザインがきれいというだけでものが売れる店はありません。ですが製品へのこだわりを伝えると売れるようになる店はたくさんあります。もっと製品の特徴やクラフトビールに懸ける思いを書いてみたらどうですか」と提案されました。

石角 確かに、サイト自体はシンプルでも、製品への熱い思いが書かれていたら思わず買ってしまうことはありますね。苦手なことを少し勉強したからといって、それが得意な人にはかないません。そうであれば得意を磨いてさらにとがらせていくというのは、リスキリングのひとつのやり方ですね。

井手 そこからはデザインは最低限のものにして、自分たちの思いが伝わるようなコンテンツを盛り込み、メルマガで直接思いを届けるなどしていきました。今思うと、初期の段階で取捨選択ができてよかったですね。

石角 サイトやメルマガで思いを伝えたことで、実際どのような効果があったのでしょうか。

井手 1瓶(750ミリリットル)で3000円という高級ビールがあったのですが、なかなか売れませんでした。ところがメルマガを初めてすぐ、このビールについて熱い思いをつづって配信したところ、大量に売れたのです。こんなに売れるようになるとは、びっくりしました。

当たり障りのないことを書いても反応はほとんどありません。ですが自分たちの言葉で魅力やこだわりを伝えると、一定の消費者には響くのだと実感しました。

(後編に続く)

(写真提供/ヤッホーブルーイング、パロアルトインサイト)

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00509/00033/

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

※石角友愛の著書一覧

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