ポストコロナを迎える今、各業界をリードするイノベーターたちはDX(デジタルトランスフォーメーション)をどう考えているのか。AI(人工知能)開発と実装を現場で見ているAIビジネスデザイナーの石角友愛氏がトップ経営者や専門家と、具体的かつグローバルな議論を展開する。今回はクラフトビールメーカーのヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)社長の井手直行氏を迎え、どん底から急成長した同社の歩み、データ分析に基づくマーケティングについて議論した。(対談は2023年2月7日)
石角友愛氏(以下、石角) 御社が以前開催されたオンラインイベント「BAR 恥さらし」の記事を読みました。井手社長は昔パチンコで生計を立てていたと書いてあって、驚きました。しかもデータ分析をして戦略的に勝利していたそうですね。
井手直行氏(以下、井手) データ分析というのはちょっとこじつけかもしれませんが、そうなんです(笑)。当時、仕事を転々としていて、働いていない時期も長かった。そういうときは朝から晩まで、パチンコを打っていましたね。毎日12時間ほどパチンコ店にいたので、当たりが出る台やその時間などを細かく記録し、分析するようになりました。すると次第に大当たりが出る傾向が見えてきたんです。それを活用し、パチンコで黒字化できるようになりました。
石角 勘ではなく、地道なリサーチと分析をしたことで、勝っていたのですね。
井手 実はこれには後日談があるんです。当時通っていたパチンコ店は閉店したのですが、当社がその跡地を借りて、本社機能のあるオフィスにしています。ですのでオフィスを訪問された方には「ここは昔、私が生計を立てていた場所です」と説明しています。
石角 そんなことがあるんですね。誰もが驚く鉄板エピソードですね。どういった経緯でヤッホーブルーイングに入社することになったのですか。
井手 パチプロ生活を脱した後、軽井沢の小さな広告代理店で働いていました。そのときのクライアントが星野リゾート(長野県軽井沢町)だったんです。それで星野リゾートの星野佳路代表(注)に声をかけてもらって、1997年に転がり込むようにヤッホーブルーイングに入社しました。
石角 1997年というと、酒税法改正(94年4月)で始まった地ビールブームのまっただ中ですね。
井手 ええ、おかげでしばらくは好調でした。ところがブームはあっという間に終わりを迎えました。創業当時は常勤スタッフが7人いて、業績の良かったタイミングでさらに増やしていたのですが、売り上げが落ちるに連れてスタッフの間に不信感が生まれました。どんどん雰囲気が悪くなっていき、社員も半分になりました。
石角 地ビールをつくっていた会社では、倒産したところも多かったですね。
井手 当社も創業年から赤字が続き、倒産が現実味を帯びてきました。
AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。
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