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世界つなぐサンリオのメタバース戦略 社内に「Kawaii」あふれる – 日経クロストレンド連載

2023/06/09 メディア掲載実績, 日経クロストレンド 
by PALO ALTO INSIGHT, LLC. STAFF 

世界つなぐサンリオのメタバース戦略 社内に「Kawaii」あふれる – 日経クロストレンド連載

ネットやモバイルと同等、あるいはそれ以上の革新をもたらす技術として生成AI(人工知能)が広がりつつある。急激な変化の時代が続く中、トップ経営者や専門家は何を目指していくのか。AIビジネスデザイナーの石角友愛氏が、具体的かつグローバルな議論を展開する。サンリオエンターテイメント社長の小巻亜矢氏との対談後編は、大ヒットしたアバター作成ツールの裏側やメタバースの取り組みなど、同社のデジタル施策を議論した。(対談は2023年3月14日)

2023年1月に開催したメタバースイベント「SANRIO Virtual Festival 2023 in Sanrio Puroland」の様子(C)2023 SANRIO CO., LTD. TOKYO, JAPAN

▼前編はこちら
サンリオピューロランド再生の舞台裏 来場者を呼ぶ連係体制とは

アバター作成ツールが大ヒット。デジタルのパワーに鳥肌

石角友愛氏(以下、石角) サンリオピューロランドが2015年に公開したアバター作成ツール「ちゃんりおメーカー」は、爆発的な人気となりました(現在はサービス終了)。サンリオというと文房具やサンリオピューロランドといった実際の商品・場所のイメージが強かったので、デジタルコンテンツ、しかも当時まだあまり一般になじみのなかったアバターを打ち出してきたことに驚きましたね。

小巻亜矢氏(以下、小巻) ちゃんりおメーカーはピューロランドで夏のプロモーション企画の一つでした。それまでは主に割引券付きの紙のチラシを配ったり、テレビ広告を出したりして宣伝していたのですが、広告効果が数字として把握しづらいという課題がありました。

やり方が時代に合わなくなっていることは認識していたものの、漫然と同じ取り組みが続けられていました。そんなとき、ある広告代理店から「ちゃんりおメーカー」の提案があったんです。

石角 15年というと、日本でInstagram(インスタグラム)の利用者が急増したタイミングですね。無料でアバターがつくれるサービスというのはとても時代にマッチしていたと思います。

サンリオエンターテイメントの小巻亜矢氏(左)と米パロアルトインサイトCEO(最高経営責任者)でAIビジネスデザイナーの石角友愛氏(右)

小巻 当社にとってこれまでにない取り組みで、面白そうだと思いました。ただ、どの程度ピューロランドの集客につながるかは未知数でした。これまで通りチラシやテレビ広告で宣伝していれば、ある程度の集客は期待できる中、ちゃんりおメーカーに突き進んでいいのか、迷いました。でも時代は明らかにアナログからデジタルへと進んでいました。だからかけてみることにしたんです。

石角 大きな決断だったのですね。ですが結果的には大ヒットし、SNS(交流サイト)のタイムラインはちゃんりおメーカーでつくったアバターであふれました。

小巻 日々利用者数の桁が増えていって、そのスピードの速さに鳥肌が立ちました。国内だけでなく、海外にもあっという間に広まっていったんです。また従来のマーケティングと違って、アクセス数の推移がリアルタイムで追えました。デジタルの拡散力の強さ、スピード感、オンタイム性を体験した出来事でしたね。

従業員のデジタル意識に変化

石角 ちゃんりおメーカーをきっかけとして、ピューロランドに行ったり、サンリオグッズを買ったりした方も多かったのではないでしょうか。ビジネスとして大きな効果があったのではないですか。

小巻 それが、そうでもないんです。というのも予想外の反響をいただいたことでサーバーが落ちるなど、さまざまなトラブルが発生しました。それらの対処にお金がかかってしまい、むしろ収益としてはマイナスでした。

石角 そんなことが起きていたんですね……。ちゃんりおメーカーへの挑戦で、社内に何か変化はありましたか。

小巻 大きく分けて2つありました。1つはデジタルに対する意識の変化です。ちゃんりおメーカーの展開を通してデジタルのパワーを体感したことで、多くの従業員がデジタルに関心を持つようになりました。おかげでその後のデジタルコンテンツ開発やマーケティングオートメーション化は、スムーズに進みましたね。

もう1つはブランディングです。大きな話題になったことで知名度がアップしました。当時まだ利用者が少なかったアバターは画期的で、ピューロランドに対する世間のイメージも大きく変わりました。「次はどんなことをするのかな」と期待してもらえるようになった気がします。

石角 歴史ある企業の場合、こういったイノベーティブなことをすると既存事業を担当する部署から反発の声が上がることがあるとも聞きます。

小巻 私が知っている限り、当社ではそういったことはまったくありませんでしたね。逆に限られた予算の中で次はどういった施策を打てばいいのか、従業員それぞれがアイデアを出してくれるなど、とても協力的でした。

石角 従業員全員が「この会社をよくしたい」と同じ方向を向いていたのですね。会社愛の強さを感じます。

小巻 みんなサンリオが好きでここで働くことにプライドを持っています。苦しい時期が続いても辞めず、なんとか立て直そうと奮闘してくれました。だから会社にとってプラスになるのであれば、とデジタルの取り組みも頑張ってくれたんだと思います。

メタバースでリアルとデジタル両方の良さを生かす

石角 新型コロナウイルス禍の中で、多くのテーマパークが打撃を受けました。特にピューロランドの場合、換気が難しい屋内施設ということもあって、影響は大きかったのではないでしょうか。

小巻 おっしゃる通りですね。ただデータ活用の面では、コロナ禍で大きく前進しました。今はお客さまへのサービス、従業員の働き方、経営戦略、コンテンツ、それぞれの面で積極的にデータを活用しています。よりインタラクティブにデータのやりとりができるようになったので、このデータを精緻な来場予測やアトラクション待ち時間の短縮、VR/AR(仮想現実/拡張現実)のコンテンツ開発などに生かし、顧客満足度アップにつなげていきたいと思っています。

石角 昨年、私の友人がピューロランドでライブショーとバーチャルを融合させた「Nakayoku Connect」を体験したそうですが、屋内だったことで没入感を強く感じて、とても楽しかったと言っていました。メタバースの活用も、コロナ禍から始めたのですか。

小巻 メタバースについてはコロナ前の17年ごろには構想していましたね。ただ実際にサービス化し、最初のメタバースイベント「SANRIO Virtual Fes in Sanrio Puroland」を開催したのは21年でした。

石角 もしかして小巻さんのZoomの背景画像は、そのときの映像ですか。

小巻 そうなんです! きれいですよね。メタバースイベントはこれまで2回開催したのですが、2回目は1回目に比べて画像などのクオリティーが格段にアップしていて、技術の進歩に驚きました。「バーチャルはリアルには勝てない」という方もいますが、バーチャルにはバーチャルの、リアルにはリアルの良さがあって、勝ち負けはないと思います。

ちゃんりおメーカーを展開したときも世界とのつながりを感じることができましたが、メタバースはまさにボーダーレスです。今後も力を入れていきたいですね。

キティちゃんは「仕事を選ばない」ではなく「全部やる」

石角 今度は自社IP(知的財産)の活用方法について聞かせてください。IPの有無は今後メタバースが普及していった際に、ビジネスの成否にも関係してくると思います。

一方で、Netflix(ネットフリックス)やAmazon Prime Video(アマゾン・プライム・ビデオ)ではオリジナルコンテンツの制作に力を入れています。サンリオさんは多数のIPを抱えていますが、今後こういったプラットフォーマーとはどのように付き合っていくつもりですか。

小巻 すでにNetflixでは「ぐでたま」「アグレッシブ烈子」とコンテンツを配信していて、競合するとは考えていません。むしろグローバルな他社のプラットフォームと、メタバースイベントなど自社コンテンツを組み合わせることで、相乗効果が生まれると思っています。TikTokでもさまざまな動画を配信しています。

石角 他社サービスと争うのではなく、一緒に成長していくことを考えるというのは、昔からいろんなブランドとコラボしてきたサンリオならではですね。

小巻 よく「キティちゃんは仕事を選ばない」と言われます。でもそれって逆に「やりたいことは全部やっている」ということだと思うんです。

何事もやってみなければ分かりません。当社はエンターテインメント企業ですので、遊び心を持って、楽しんでいろんなことに挑戦していきたい。それが結果的に世界平和や社会課題の解決につながれば、よりハッピーだと思っています。

石角 老舗企業は変化に対して慎重になりがちですが、DX(デジタルトランスフォーメーションやメタバースなど、新しいことにも積極的に取り組んでいるのは「楽しもう」「やってみよう」という気持ちがあるからなのですね。とても魅力的なカルチャーだと感じます。

小巻氏が率いるサンリオエンターテイメントには、メタバースなど新しい取り組みを楽しむという魅力的なカルチャーがあると指摘する石角氏

「かわいい」「仲良く」+「成長」でDX推進

石角 PwCコンサルティング(東京・千代田)と共同で21年に実施した「Kawaii」についての共同研究では、サンリオエンターテイメント従業員の「Kawaii感情」が高く、幸福度は全国平均よりも4ポイント以上高いという結果となりました。とてもサンリオらしいなと感じました。きっと従業員のDNAには「かわいい」が組み込まれているのでしょうね。

小巻 当社にはもともとかわいいもの好きが集まっているんです。社内を歩いているとよくキャラクターとすれ違いますし、イントラやステーショナリーにサンリオのキャラクターが使われていて、身の回りにかわいいがあふれています。「かわいい」という言葉は男性従業員も当たり前に使いますし、社内の報告書にもよく出てくるんですよ。

石角 社内文書に「かわいい」が頻出するというのは面白いですね。「かわいい」は見た目のかわいさ以外にインクルーシブネス(受容性)や多様性、安心感といった今の時代に求められているさまざまな要素が含まれる多義的な言葉です。それをいろいろな形で事業を通して社会に伝えているのですね。

小巻 はい。ただ20年12月のピューロランド30周年の際は、コロナ禍だったこともあり、打ち出すメッセージにはかなり悩みました。ですがたどり着いたのは、やはり「かわいい」でした。分断が進み、社会全体がぎすぎすしているときだからこそ、「かわいい」や「仲良く」を大事にして、来園者を優しい気持ちにしたりホッとさせたりしたい。私たちはそのためにピューロランドをやっているのだと、再認識した気がします。

石角 そのピューロランドを守り続けるためには、ますますのDX推進や従業員のリスキルが欠かせません。最後に従業員の育成について考えをお聞かせください。

小巻 当社では「かわいい」や「仲良く」と同じくらい、「成長」という言葉を大事にしています。日々の業務の中で少しでも成長を実感できるように従業員とは1対1の面談を行い、やりたいこと、身につけたいスキルなどをヒアリングして一人ひとりに合った目標を設定しています。研修や情報共有も積極的に行って、今後もできるだけ多くの学びの機会を提供していくつもりです。

石角 自然に成長志向が生まれる社内文化を醸成されているのですね。とても参考になりました。本日はありがとうございました。

(写真提供/サンリオエンターテイメント、パロアルトインサイト)

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00509/00038/

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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