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「2025年の崖」とは何か?DXが実現できない日本企業の課題を解説
2022/07/21 ブログ 
by suzuki 

「2025年の崖」とは何か?

DX(デジタル・トランスフォーメーション)が実現できない日本企業の課題を解説

 


▼目次

「2025年の崖」とは何か?DX実現との関連性とは

なぜ日本企業は「2025年の崖」を超えられないのか、その課題とは

ーDX人材の不足

ー経営層がDXのビジョンを描ききれていない

ーレガシーシステムからの移行ができない

「2025年の崖」を回避するためには

ー既存のITシステムの把握・見える化

ーDX推進のゴールイメージの共有

ーDX人材の育成や、雇用を進める

ー補助金などの公的支援の活用

まとめ


「2025年の崖」は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を社内で議論する際に知っておくべき言葉です。DXを推進しようと思っても、各企業がこの指摘されている問題を改善できなかった場合、2025年以降に発生が懸念される巨大なリスクがあるとされています。
この「2025年の崖」という言葉の詳細や、崖を乗り越えた先にある具体的なDXの推進方法について、経済産業省が発表したレポートをもとに考えていきたいと思います。

■「2025年の崖」とは何か?DX実現との関連性とは

「2025年の崖」とは、2018年に経済産業省が「DXレポート」にて提示した、レガシーな日本企業の近い将来に対する警告を表すものとなっています。
発表されたDXレポートによると、多くの経営者が、自社の将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネス・モデルを創出・柔軟に改変するDX(デジタル・トランスフォーメーション)の必要性について理解しているとありますが、その一方で、以下のような大きな課題が残されています。

・既存システムの、複雑化・ブラックボックス化
・レガシーシステムの維持管理費が高額化
・保守運用の担い手不在で、サイバーセキュリティリスクの高まり

これらの課題を克服できなかった場合、2025年以降で最大年間12兆円の経済損失が生じる可能性があるとされています。これを2025年の崖と呼んでいます。
このレポートによると、2014年の段階でデータの損失や、システムダウンなどのシステム障害による損失が国内全体で約4.96兆円にのぼっていたとの調査結果を参考に、レガシーシステムに起因して発生するシステムトラブルがその全体の約8割であるとして、2018年当時の段階でさえも「4.96兆円×8割=約4兆円」の経済損失が発生すると推定されています。
参照:DXレポート~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~|経済産業省

この発表は、多くの企業に衝撃を与えました。しかし、2022年となった現在も多くの企業で課題が解決されていない実情があります。弊社のもとにも、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に取り組みたいという問い合わせをいただく機会は増えていますが、課題を聞くと、まだDXの前段階といえる局所的なデジタル化に関する問い合わせも多く、ビジネスを変革する本格的なDXを推進できている企業は少ないという実情があります。

この「2025年の崖」の提言により、DXの重要性が一気に広がったと感じると同時に、DXという単語が一人歩きしている感も否めません。これまでの日本では「共通認識としてのDX」がないままデジタル庁ができたり、行政のDX推進やDX人材の育成などが叫ばれてきました。DXの本質は、業務プロセスだけを変えるという局所的なものではなく、デジタル技術を使って企業活動の全体を変革することです。企業のあり方や、働き方そのものを変え、顧客に新しい価値を提供する大きな変革のことを指します。
DXについての詳細は「DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?」の記事を参考にしてください。

■なぜ日本企業は「2025年の崖」を超えられないのか、その課題とは

ーDX人材の不足

DXを推進するとなった際に、日本企業の多くは既存の人員では、スキルが足りないため進めたくても進められないということがほとんどです。日本企業は、諸外国と比較した際、ユーザー企業側にエンジニアなどのIT人材が不足しているため、多くの場合でベンダー企業の力に頼らざるを得ず、結果的に必要以上の経費がかかり、思うようなDXを推進できないということになってしまいます。

ー経営層がDXのビジョンを描ききれていない

上述した、DXレポートにもある通り、多くの経営者は、将来的な成長や競争力強化のためにDXが必須であることは認識しています。しかし、具体的にどのようにデジタル技術を通してビジネスを変革していくかについては模索しているが、明確な形になっていないことがほとんどです。結果、トップからトップダウンでの「AIを使って何かできないか?」や「社内のデータを活用したい」といった曖昧な指示が降りてくることによって、PoC(実証実験)が繰り返される状態が続く企業が増えているのです。

ーレガシーシステムからの移行ができない

一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会の企業IT動向調査報告書2022によると、基幹システムの半分以上がレガシーシステムである企業は約4割に及びます。レガシーシステム脱却の課題としては、複雑化したシステムを読み解くことや、業務プロセス改革の合意取り付けなど多くの関係者の理解が必要なことも阻害要因としてあげられています。
このように老朽化したITシステムが複雑化、ブラックボックス化していることがDX推進の足かせとなっていることも大きな課題です。レガシーシステムの多くはさまざまな問題を生み出しており、事業部単位で最適化を優先したことによる弊害で、社内にいくつものレガシーシステムが乱立しており、全社横断でのデータ活用が困難になるケースもよく耳にします。

■「2025年の崖」を回避するためには

ー既存のITシステムの把握・見える化

2025年の崖は、レガシーシステムが残っていることが全ての問題の引き金となります。まずは、既存ITシステムの再構築が必要です。まずは、現在の企業内にあるITシステムの把握から始める必要があります。システムを把握することで、同じ機能を持ったシステムを統合することも可能になり、保守運用コストの減少につながります。新しいシステムは、クラウドの活用を中心に考え、不要な機能の削除も検討して、システムの見える化を計ります。

ーDX推進のゴールイメージの共有

DX推進を成功させるためには、経営者が明確なビジョンを従業員へ共有する必要があります。本当の課題抽出をして目的を定める前に、とりあえずDX推進室を作ってしまう企業の話もよく聞きます。これでは組織ができても選ばれたメンバーがやることがわからないため、社内のヒアリングに終始してしまったり、情報システム部のお手伝いをするだけで終わってしまう可能性が高いです。
まずは、慌てて体制を整えるのではなく、まずは目的意識をもう一回見直すということが大事です。ビジョンが明確でないまま「とりあえずAI導入して」といったような、従業員の理解を得られないままのDX推進は失敗するだけなので気をつけましょう。

ーDX人材の育成や、雇用を進める

「DX人材」は、デジタル技術に関する知見だけでなく、異なる領域の知識をかけあわせて相乗効果を生み出す力や、創造的な力が必要になります。その時の基盤になるのが、既に持つ具体的な領域の知識やスキルセットです。また、自社で内製化しようと企業内で育てるためには、必要となる知識やスキルに加え、自社の業務や問題点に対する意識の高さ、探求心、柔軟な発想力を持っている者であることが育成対象の条件となります。組織としてDX推進するためには責任も負う立場になるためリーダーシップやコミュニケーション能力も必須となるでしょう。
また、ITの領域だけでなく社内から幅広く人材を集めることも重要です。それぞれの異なる経験・知見を持つ人材がDXに取り組むことで、新たなビジネスモデルの創出や課題解決につながることでしょう。

ー補助金などの公的支援の活用

2025年の崖は日本の経済を活性化させるためには越えなければならない必須の問題です。そのため、国から多くのDX推進の際に活用できる補助金や、税制優遇措置制度も導入されています。
デジタル化を考えた際にまずは、コストの問題をクリアしなければなりませんので、コストを抑えながら推進するためにも、制度は積極的に活用しましょう。ITツールの導入時に費用を補填する「IT導入補助金」などがあります。2021年には税制改正によって制定された「DX投資促進税制」なども加えられましたので積極的に活用すると良いでしょう。

■まとめ

今回は、経済産業省のレポートをもとに、注目のキーワード「2025年の崖」の意味や、なぜ日本企業で課題になっているのか、それを回避するために重要となるDX推進について紹介しました。日本全体で、年間12兆円もの経済損失を生む可能性があるだけでなく、DXが推進できないことによる世界各国とのデジタル化の遅れは、日本経済において大きな問題となります。
指摘された「2025年の崖」を現実にしないためには、あらゆる業種の企業が、自社の課題を理解し、ニーズにあったDX戦略を推進していく必要があります。経営者のみならず全ての方がDXの重要性について理解を深め、社会全体で推し進めることが重要となるでしょう。

パロアルトインサイトについて

AIの活用提案から、ビジネスモデルの構築、AI開発と導入まで一貫した支援を日本企業へ提供する、石角友愛氏(CEO)が2017年に創業したシリコンバレー発のAI企業。

社名 :パロアルトインサイトLLC
設立 :2017年
所在 :米国カリフォルニア州 (シリコンバレー)
メンバー数:17名(2021年9月現在)

パロアルトインサイトHP:www.paloaltoinsight.com
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

石角友愛
<CEO 石角友愛(いしずみともえ)>

2010年にハーバードビジネススクールでMBAを取得したのち、シリコンバレーのグーグル本社で多数のAI関連プロジェクトをシニアストラテジストとしてリード。その後HRテック・流通系AIベンチャーを経てパロアルトインサイトをシリコンバレーで起業。データサイエンティストのネットワークを構築し、日本企業に対して最新のAI戦略提案からAI開発まで一貫したAI支援を提供。東急ホテルズ&リゾーツ株式会社が擁する3名のDXアドバイザーの一員として中長期DX戦略について助言を行う。

AI人材育成のためのコンテンツ開発なども手掛け、順天堂大学大学院医学研究科データサイエンス学科客員教授(AI企業戦略)及び東京大学工学部アドバイザリー・ボードをはじめとして、京都府アート&テクノロジー・ヴィレッジ事業クリエイターを務めるなど幅広く活動している。

毎日新聞、日経xTREND、ITmediaなど大手メディアでの連載を持ち、 DXの重要性を伝える毎週配信ポッドキャスト「Level 5」のMCや、NHKラジオ第1「マイあさ!」内「マイ!Biz」コーナーにレギュラー出演中。「報道ステーション」「NHKクローズアップ現代+」などTV出演も多数。

著書に『AI時代を生き抜くということ ChatGPTとリスキリング』(日経BP)『いまこそ知りたいDX戦略』『いまこそ知りたいAIビジネス』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『経験ゼロから始めるAI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)、『才能の見つけ方 天才の育て方』(文藝春秋)など多数。

実践型教育AIプログラム「AIと私」:https://www.aitowatashi.com/
お問い合わせ、ご質問などはこちらまで:info@paloaltoinsight.com

 

※石角友愛の著書一覧

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